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http://markets.nikkei.co.jp/column/fxwatch/index.cfm
(2007/11/20)
2007年に入ってから米ドルがほとんどの通貨に対して下落する展開が続いている。例えば対ユーロでは米ドルの史上最安値を更新し続けており、他の主要国に対しても記録的なドル安が進行している。米国の世界における相対的な地位低下が米ドル離れを起こしている大きな要因であるが、それに加え、今年に入って米国の景気が減速してきたことで、ドルの下落にさらに拍車がかかっている。米ドル安傾向は主要国通貨だけではなく、新興国通貨に対しても広がってきているが、こうした世界的なドル安の影響が、現在いろいろなところに波及し始めている。今回はその典型的な例を1つ紹介したい。
現在、中東諸国の多くは米ドルへのペッグ制という制度を採用している。ペッグ制というのは、ある通貨と自国通貨の為替レートを一定の範囲に収めるという、広義の意味での固定相場制度のことである。つまり、米ドルとのペッグ制ということは米ドルと自国通貨の交換レート(為替レート)を一定の範囲の中で管理するという制度ということになる。ところが、このペッグ制の維持が困難な状況に陥っているのである。
ここのところの米ドル安の影響で、米ドルへのペッグ制を採用している中東諸国の通貨も他の国の通貨に対して価値が低下している。自国通貨が弱くなるということは購買力が落ちるということを意味する。また、原油価格は米ドル建てであるため、原油の代金を米ドルで受け取ると、そのドルの価値が下がっていることで原油収入が実質的に目減りしてしまうという面もある。
こうした事態を憂慮して、クウェートは07年5月に自国通貨ディナールと米ドルのペッグ制を廃止した。その他、アラブ首長国連邦(UAE)やカタールなども近い将来に米ドルペッグ制を廃止するのではないかという観測がでている。
また、ベネズエラやイランなどは原油取引を別の通貨建てとすることで、原油収入を増やすことを狙っている。中東をはじめとする各国での米ドル離れが鮮明になってきている良い例である。
アジアで米ドルへのペッグ制を採用しているのは香港である。しかし、香港も中国が急成長する中でペッグ制を採用し続ける意味が徐々に薄れてきている。アジア通貨全体が米ドルに対して上昇している中、近い将来香港も米ドルへのペッグ制を廃止する可能性も否定できない。対円では米ドルはそれほど大幅には減価していないので、我々日本人には危機感はないが、実は世界中ではドル離れが確実に進行している。日本人投資家もこうした世界各国のパワーバランスの変化を敏感に感じて、どの国の通貨が魅力的かを判別していく必要がある。
米ドル至上主義からの脱却が私たちにも求められているのである。