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【米経済コラム】わたしにシティCEOの資質がある理由−M・ルイス
11月15日(ブルームバーグ):あなたはどう思うか分からないが、わたしは金融市場の最近の混乱に少しがっかりさせられている。
金融業界が資産担保証券(ABS)で被った450億ドルの損失はその1つ。ただこの損失には納得がいく(いずれにしろ、そのほとんどは他人のカネだ)。一方で許し難いのは、個人の野心の弱さだ。かつて大手金融機関には、上司の弱みにつけ込む方法を知っている銀行員やトレーダーがいた。ウォール街の最高経営責任者(CEO)の首が飛んだ次の瞬間には、空席の椅子を狙って大勢部下が列を作ったものだ。
そんな時代は終わった。大手金融機関2社のCEOは更迭された。3人目のCEOはサブプライム関連の巨額の評価損で苦境にある。4人目は自身の後継者探しに奔走している。にもかかわらず、後継者に適した人物はほとんど見当たらない。
状況は、暫定CEOをあわてて探さなければならないほど、ひっ迫している。シティグループが打診した人物は、知名度が低く、CEO職にさほど意欲がなく、就任に際して妻の許しを得なければならなかったウィン・ビショフ氏(66)だった。
実際、状況はもっと悲惨だ。CNBCテレビのニュースアンカー、マリア・バルティローモ氏との個人的な旅行が問題視され、シティグループを追われたトッド・トムソン氏に至っては、同氏を解雇したチャールズ・プリンスCEO更迭のニュースを失地回復の機会として活用するどころか、新聞のインタビューで処遇が悪かったことを批判する言葉を並べる体たらくだ。
まさにがっかりだ。ウォール街の惨状はわたしを憂うつにさせた。
そこでわたしは思いついた。批判家には誰でもなれる。わたしはパソコンの前に座って、世界に何が欠けているのかを批判することができる。しかしわたしの言葉だけでは不十分だ。効果を上げるには、行動しなければならない。そこでまた別の事に気づいた。シティグループのCEO、もっと言えばベアー・スターンズのCEOのオファーを責任を持って受諾する前に答えなければならない質問だ。わたしに本当にCEO就任の資格はあるのか?
後任探しが難しい理由
この質問に答えるため、しばらくの間、厳しい質問を自分に問い掛けてみた。その結果、わたしが行き着いたのは「資格あり!」という答えと、「ウォール街のCEOの資質とはいったい何か?」という新たな問いだった。CEOを採用する立場の取締役会がこの質問に答えられないのは明らかだろう。CEOを解雇せざるを得ない状況に追い込まれてばかりいるのだから。
CEOの資質は、現役のCEOたちから推察しなければならない。以下に挙げる例を見れば、後任探しが難しい理由が分かるはずだ。
◎ウォール街のCEOには、冷静さを失わずに毎年巨額の報酬を受け取る特殊な能力が備わっていなければならない。
言葉で言うほど簡単なことではない。会社が数十億ドルの損失を出しているとすればなおさらだ。例えば取締役会があなたに4000万ドル(約44億円)の報酬(手当は別)と、9けたの退職パッケージを付与したとしよう。あなたが普通の神経の持ち主なら、カーテンをいっぱいに開けた台所を裸で踊り回るに違いない。あなたを育ててくれた人たちがその事実を新聞で知り、あなたに何を言うかに気付くまでは。
するとあなたは、取締役会に対し、ほかの従業員や株主にとって不公平なため、報酬をより妥当な額にしてほしいと言うだろう。ここまで考えれば、大半の人がウォール街のCEOに不向きであることが分かるはずだ。大半の人は古くからある「道徳心」に背を向ける心の準備ができていないのだ。それではCEOは務まらない。私利私欲をむき出しにしなければ、あなたの権限は損なわれてしまう。一般社員との関係は特にそうだ。言い換えれば、自分の報酬すら最大化できなければ、一般社員の報酬など決して最大化することはできないのだ。
◎ウォール街のCEOは、自分や野心的な部下の関心事と、株主の関心事との違いを素早く見極め、そして巧妙なかじ取りをしなければならない。まず自分の関心事、次に野心的な部下(自分にとって危険な部下)の関心事を、株主に気付かれずに最大限に実現することだ。
ギャンブルして勝つ
現在のところこれは、株主の資本でギャンブルをして、大もうけすることを意味する。ギャンブルに勝てば、CEOと部下は年末に巨額のボーナスを受け取ることになる。ギャンブルに負けても、9けたの退職金を手にするだけだ。社有機だって5年間乗り放題だ。
さらに部下は社内で昇格するか、配置換えになるか、退職してほかの会社に就職するかだ。その会社のCEOがこのゲームに通じた人なら、新たなギャンブルが始まり、遅かれ早かれ大金が懐に転がり込んで来る。
楽勝だと思ったら、試してみるといい。あなたがCEOに不向きな大半の人と同じなら、ギャンブルに失敗した時に株主がどう感じるかを心配して夜も眠れないことだろう。罪悪感にさいなまれ、非生産的な精神状態に追い込まれる。会社の赤字幅が過去最高に達していればなおさらだろう。
メリット
◎ウォール街のCEOは、自分の退職時に後継者の資格が誰にも備わっていないような状況を作るため、部下を徹底的に管理する必要がある。
大勢の野心的な従業員を管理するのは難しいが、もしうまくいけば、いくつかの問題を一気に解決することができる。1つ目のメリットは、あなたにとって不都合な情報がメディアに流出するリスクを最小限に抑えられる。あなたの代わりにCEOになれると思う部下が誰もいなければ、そのためにあなたのマイナス情報を流す部下は現れない。2つ目は、会社の資本を使った大規模なギャンブルがやりやすくなることだ。取締役会は、あなたの経営方針に口を挟む能力を持つ従業員を思いつくことすらできないだろう。
そして最後に、社内にCEO候補がいなければ、取締役会はあなたを引き留めるために、報酬を上積みせざるを得ないと考えるかもしれない。
8歳の娘が所属するソフトボール・チームより大きな組織を指揮した経験のないわたしは、機会に恵まれない限り、CEOの資格があることを証明できない。ただこれだけは約束できる。シティグループにしろベアー・スターンズにしろ、あなたの会社のCEOに就任した暁には、行動力と自主性のある部下を全力で応援し、退職してヘッジファンドを立ち上げるよう勧める。わたしはそんなタイプのリーダーなのだ。(マイケル・ルイス)
(マイケル・ルイス氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラムニストです。このコラムの内容は、同氏自身の見解です)
原題:Why I'm Ready to Be New Citigroup CEO: Michael Lewis (Correct)
(抜粋) {NXTW NSN JRJWDH1A1I4I -- Editor: Schenker (jmg/scc)
更新日時 : 2007/11/16 14:32 JST