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モルガンのサブプライム投資、ヘッジ手段から一転して損失要因に(日本経済新聞)
ニューヨーク(ウォール・ストリート・ジャーナル)
有望と予想していたものがそうではなくなることが時々ある。
2月にサブプライムローン(信用度の低い借り手への住宅融資)市場が混乱し始める前、モルガン・スタンレー(NYSE:MS)などウォール街の賢明な企業は、同市場が悪化すると予想し、その予想は正しかった。
モルガン幹部は昨年12月、サブプライムローンを手掛けるサクソン・キャピタルを買収して同市場に参入した。モルガンは同市場について弱気の予想をしていたため、12−2月期(2007年11月期の第1四半期)の利益は70%増の26億7000万ドルとなった。
それから8カ月が経過した。サブプライムローン市場の悪化は続いているが、同じような弱気予想に基づく投資が今度はモルガンにとって37億ドル(税引き後で25億ドル)の費用を発生させ、9−11月期(第4四半期)に得られたであろう利益をほとんど帳消しにしてしまった。
何が悪かったのだろうか。モルガンが受けた打撃は、メリルリンチ(NYSE:MER)が79億ドルの評価損を計上したことと共通点が多い。両社とも、債務担保証券(CDO)の構成要素のうち高格付けのスーパーシニア債のポジションが大きく膨らんでいた。
ただ、比較的安全な投資手段と見なされていたスーパーシニアCDOを保有していた理由は両社で異なっていた。メリルのCDO保有残高は6月29日時点で321億ドル相当だった。これは、CDO引受業務を最も多く手掛けている同社の副産物だった。モルガンは、同社幹部によると年初時点で130億ドル相当のCDOを保有しており、これはサブプライムローン市場の悪化に備えたヘッジや資金調達のためだった。
ウォール街のアナリストやモルガン幹部によると、両社に共通していたのは、CDOによる金利収入が資金調達費用を上回っていたことだ。このことは、CDOの投資成績が8月と9月の緩やかな悪化を経て10月に大幅に悪化するまで、両社に魅力的な利益をもたらしていた。
モルガンのサブプライム投資が悪い結果を招いたのは、ある面で、定量的モデルを利用しているヘッジファンドの予想が今夏、投資成績の悪化を招いたことと似ている。ヘッジファンドは、株式相場の下落局面では、株価格付けの低い銘柄はバリュー株(割安株)より悪いパフォーマンスを示すと予想したが、実際は株価格付けの高い銘柄が打撃を被った。
モルガンのコルム・ケレハー最高財務責任者(CFO)は7日夕方のアナリスト向け電話説明会で「自己勘定取引のトレーダーは昨年12月、サブプライム市場の悪化を予想した投資姿勢を取り始めた」と語った。同月には、モルガンがサクソンを7億0600万ドルで買収している。
この買収と投資戦略は、モルガンのジョン・マック最高経営責任者(CEO)が2005年秋に表明した「自己勘定取引でより高いリスクを取る」との決意に沿ったものだ。この目標はメリルのCEOを10月に辞任したスタンレー・オニール氏と同じだった。
業界紙「インサイド・モーゲージ・ファイナンス」によると、モルガンはサクソン買収により、今年のサブプライムローン担保証券の引受業務でトップに躍り出た。05年には5位、06年には3位だった。メリルもサブプライムローン会社買収により、05年の7位、06年の4位から今年は2位に浮上した。
サブプライムローン引き受けの増加により、モルガンの8月時点での帳簿では、サブプライムローン残高が29億ドル、サブプライムローン担保証券の残高が40億ドルとなっていた。ただ、それらの保有分は、サブプライム市場の悪化を予想した投資で66億ドル相当のヘッジをしていた。
あるモルガン関係者は「サクソンによるサブプライムローン引き受けをヘッジするための投資は12月に始めていなかった。ヘッジの一部はサクソンの資産を充てていた可能性がある」と語った。また、そのことは、モルガンが入手したサクソンの投資行動にかかわる市場データからわかった可能性があるとしている。
この関係者によると、サブプライム市場の悪化を予想した投資にはスワップを利用しており、モルガンはそのための金利を支払う必要があった。この投資のヘッジとスワップ費用に充てるための金利収入を得る目的で、モルガンはCDOのポジションを膨らませ、それが6日明らかになった多額の損失のほとんどを占めることになったという。
モルガンの資料が示している税引き前の評価損37億ドルのうち最も大きな部分を占めるのは、CDOのポジションが8月28日時点の114億ドル相当から10月31日時点の83億ドル相当に31億ドル減少したことによるもの。CDOの評価額は、8月に最大4.4%、9月に4.5%下落し、10月には最大27%下落した。
ケレハー氏は電話説明会で「サブプライム投資は、証券引受など顧客を巻き込んだ業務ではなく、サブプライムローン担保証券の売り持ちから始めた。12−2月期(第1四半期)はこれがうまくいった。だが、サブプライム投資のヘッジのために保有していたシニアCDOにまで市場悪化の影響が及ぶにつれ、モルガンのエクスポージャーは売り持ちから買い持ちに変わっていった」と語った。
ゴールドマン・サックスのアナリストであるウィリアム・タノナ氏は「モルガンは07年11月期の最初の9カ月に当たる06年12月から07年8月までに、サブプライム市場悪化予想による投資で10億ドルの利益を得た」と指摘している。だが、モルガンが評価損計上見通しとCDO保有規模を明らかにしたことを受け、格付け会社2社がモルガンの信用格付けを引き下げの方向で見直すとした。
ムーディーズ・インベスターズ・サービスは、このモルガンの情報開示によって「モルガンにおけるトレーディングのリスク管理の効果に疑問が生じる」とした。メリルのアナリスト、ガイ・モシュコフスキ氏は「(CDOの)取引規模が大きすぎる」と指摘した。モルガンは数週間前、CDOトレーダーのチームを解雇した。
(11月9日付のHeard On The Streetより)
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/media/djBWD7533.html