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原油価格100ドル・オプションの意味するもの
http://www.gci-klug.jp/commodityreport/07/10/31/100_1.php
原油価格高騰により、国内ガソリンの販売価格は11月にはリッター当り150円に上昇する見通しとなっています。これは、昨年8月の販売価格を上回るものとなります。また、同様な理由で電気料金、ガス料金なども全国一斉に引き上げられることが決定しました。石油は「経済の血液」といわれるように、産業経済には不可欠なものです。それだけに原油高に伴う世界的なインフレに対する懸念が強まってきています。
現在の原油高騰の供給面での原因としてはイランの核開発問題、トルコのイラク侵攻懸念、ナイジェリアなどアフリカ産油国の政情不安の長期化が挙げられます。また、OPEC諸国が原油高にもかかわらず増産に対してはトゥーレイト、トゥーリトルの姿勢を見せていることも一因と言えるでしょう。この姿勢に対し世界的な供給逼迫を招いているという批判の声が上がっていますが、OPECが12月の総会で追加増産を行ったとしても価格高騰を食い止めることができるかどうか疑問がもたれるところです。
というのも、OPECの中でも増産余力が有るとみられているのはサウジやペルシャ湾岸諸国に限られているからです。また、増産余力がない他の産油国は限り有る石油資源を出来得る限り高く売りたいため、世界的なインフレを招こうが増産に対して慎重な姿勢を取っていることも供給量拡大を疑問視させる背景となっています。
さらに、サプライム問題を契機にしての金利引下げに伴ったドル安が原油価格の上昇幅を抑制しているため、産油国にとっては実質的な原油販売に伴うドルの手取り価格は大きくは伸びていません。それだけに原油価格の下落を嫌った産油国が多額のオイルマネーでドルを売っていることもドル建てで取引が行われる原油価格を押し上げているのです。
更に超長期的にみれば2025年前後には原油生産がピークに達し、以降は生産が減少してくると言われています。過去には中国が輸出国から輸入国に転じ、インドネシアも輸出力を失っています。また、米国にとって主な輸入相手先国であるベネズエラも外国資本排除の動きが高まり、これを受けて新規油田開発は宙に浮いた状況が続いているため今後の産油量は先細りが見込まれています。なおこの遠因としては、ロシアのように石油利権が産油国側に帰属するケースが増加して、技術力を持つメジャーの新規開発意欲を低下させていることにあります。
しかし、グリンスパーンが語っているように「原油100ドルは悪いことだけではない」という見方も理にかなっています。というのも代替エネルギー開発に対する先進国の姿勢も真剣さを増していますし、いままで採算が合わなかった深海油田、北極地域の開発も進むと考えられるからです。需給原則の一つに「値が品を呼ぶ」というものがあります。価格が高騰すれば需要は後退し、新たな供給を招くということを端的に表現しているものですが、燃費の良い車の開発が進んでいることもそうした現象の表れと考えられます。
とはいえ、原油価格の100ドル示現が実際にもたらす効果に関しては、需要の動向や代替エネルギー開発の進行速度に依存するところが大きいため、不透明感が強く、これが懸念を深めていることも事実です。価格高騰が消費後退を招いたり、代替エネルギーの開発進行速度が速ければ原油価格は緩和に向かうと思われます。しかし、高騰する価格を吸収するほど需要が強い、又は代替エネルギーの開発が遅れるようだと青天井になると考えておいた方が良さそうです。特にサウジの産油能力が飽和状態に達すれば価格高騰が需要を殺すという事態が引き起こされかねません。
原油高を引き金にしてのインフレが緩やかながらも進行し、インフレヘッジの代表的な金などの貴金属価格も上昇しています。ETFsの保有高が増加の一途であることもそうした心理状況を反映しているものと言えるでしょう。こうした空気を背景にしてNYMEXのオプション市場では10月、12月決済物で100ドルを権利行使価格とするコールオプション(買う権利)が数千本単位で買われていたことは、原油の先行きに対する強気人気の表れと思われます。