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著者◇竹中平蔵(慶応大学教授、日本経済研究センター特別顧問、元総務相)
http://netplus.nikkei.co.jp/forum/academy/t_70/e_762.php
ここのところ将来の財政収支がどうなるかという試算が色々と示されている。まず10月17日の政府の経済財政諮問会議において、民間議員の名で、2011年度までの短期試算と2025年度までの長期試算が示された。
10月26日に開かれた財政制度等審議会(財務相の諮問機関)の部会でも、富田俊基・中央大学教授の名で2050年までの試算が示されている。いずれの場合も、かなり大幅な国民の税負担引き上げが必要であることを示唆する内容になっている。
このうち、経済財政諮問会議の2011年度までの試算については前回のコラムで、「名目成長率3%や2.2%という前提が、先進諸国の平均5%に比べて極端に低い」ことを指摘したから、ここでは触れないでおこう。
しかし、2025年度までの長期試算については、もっと問題のある試算と言わねばならない。この試算では、社会保障の給付を維持するためには2025年度で14兆円から29兆円の増税が必要であると結論付けられている。メディアでは結果だけがしきりに報道されているが、試算の前提条件に大きな問題があることは全くといってよいほど報じられていない。
■歳出削減努力をしないという前提
試算の前提については、以下の点が指摘される。まず歳出について見ると、人件費は民間の賃金上昇率と同じ、ほかの歳出は名目国内総生産(GDP)と同率で増加する、としている。つまり2011年度以降はいわゆる"自然体"であり、特に歳出削減努力はしない、ということを意味している。
公務員の数は減らさないし、民間より高いといわれている公務員賃金もそのまま、という前提である。社会保障費用についても、厚生労働省の言い値ベースの数値が使われている。今後の社会保障制度改革のあり方いかんで、そもそもコスト自体が大幅に変わってくるのに、そうした努力はしません、という立場に立っている。
次に名目金利について見ると、成長率に比べて1.3−1.5%程度高いことを前提としている。名目成長率と名目金利の関係についてはこれまで諮問会議の場でも議論してきた。理論的にも実証的にも、どちらが一方的に高いとも低いともいえないのである。
■日銀の金融政策は失敗を前提
しかし今回の試算では、長期にわたって成長率よりも金利が高い(しかも1%以上も)と一方的に決め付けている。これはいかにも"ためにする"試算である。金融政策を適切に行えば、少なくとも長期的にはこうした事態を回避できるはずだ。その意味でこの試算は「日銀は金融政策に失敗する」のを前提にしている。
要するに、この試算の意味は次のようになる。今後、政府は歳出改革をしない、日銀は金融政策に失敗するという前提で、増税額は極めて大幅になる……。
そう考えると、このような試算はほとんど意味を持たないと言ってよい。少なくとも国民から見れば、そんないい加減な前提で政府が試算することは、決して受け入れられない。今後、私自身も少し試算してみたいと思うが、歳出改革を続けかつ日銀が適切な金融政策を行うことを前提すれば、必要な増税額は10兆円以上は低下するだろう。
もう一点問題視したいのは、この試算が諮問会議の民間議員の名前で出されていることだ。このような試算を財政当局が示したがるというのは理解できる。財政当局とはそういうものだ。しかしこうした試算が民間議員の名前で出され、かつ諮問会議ではその補足説明を官僚が行なっている。経済財政諮問会議は、そんな場所ではなかったはずだ。
◆滝田洋一(日本経済新聞社編集委員)
「社会保障制度の現状を前提とした将来像を描けば、高齢化時代の到来とともに負担増が当然の結果になる」。竹中さんが指摘したのは、こんなカラクリだと思います。いったん負担増の議論に力点を置きだすと、歳出削減や小さな政府への意欲が弱まるということを、物語っているのかもしれません。
いまや上げ潮(成長重視)路線は、政治の場で力を弱めてしまったかの感があります。その帰結が経済財政諮問会議の変容だとすれば、12月の政府予算編成に向けて、優しい政府(大きな政府)と負担増容認とを組み合わせた路線が、徐々に勢いを増していくことになるでしょう。
低福祉・低負担から中福祉・中負担へなどと言葉は踊りますが、既存の行政サービスの効率性の検証を抜きに、ムードだけ先行するのは困ったことです。
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もし、竹中平蔵氏の指摘が生かされないような福田現政権なら、反省?と休養十分な小泉元首相のカンバックを願いたいのはわたしだけではないはずです。
格差是正や社会保障などは大事な問題ですが、大手企業を除き、農業や民間の会社で働く人たちは給料が下がり続けている現状のようです。
民間ばかりに痛みを押し付けて、官に携わる人〃には手心を加えるような天下り規制や、特殊/独立行政法人改革などの、ほとんど痛みを伴わないと言っていいような改革が行われ、その結果、現政権や民主党が簡単に増税に走ってしまわないためにも、今年〜来年にかけては与野党の動きを注意深く見守りたいところでしょう。