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深刻な株式市場の格差問題 日本経済は完全な負け組に = NBonline
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投稿者 ダイナモ 日時 2007 年 10 月 27 日 09:26:12: mY9T/8MdR98ug
 

http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20071024/138436/

 格差が、日本社会の大きな問題になっています。一方、競争が前提のマーケットの世界では、格差があるのは当たり前です。

 でも、今の株式市場の格差には心寒くなります。世界の中で日本経済が取り残されているのがはっきり見えるからです。

 今年の世界経済の最大の問題は、米国のサブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅融資)です。そのせいで、世界の株式市場は、8月に暴落しました。先週からも大きく下げました。

 サブプライムローンとは、優良(プライム)でないローン、つまり返済能力が低い人に貸す住宅ローンのことです。ここで大量の焦げ付きが発生しました。

 そうなると、サブプライムローン専門に貸し付けていた米国の金融機関の経営が悪化し、つぶれるところが出ました。次に、大手の銀行や証券会社に被害が飛び火しました。

 そして、損失は国境を越えました。英国やドイツ、フランスの金融機関が巨額の損失を被り、取り付けや破綻や顧客への資金の返還停止などの事態が起きました。

 サブプライムローンそのものや、それを組み入れた証券化商品やファンドを買っていたからでした。欧米でのサブプライムローン問題からの損失の合計は20兆円に達すると言われます。

日本経済は沈む米国を尻目に成長できるか?

 こうなると、米国の金融機関は、不動産関連の貸し付け全体に一気に慎重になりました。不動産の買い手が減りました。破産した借り手の不動産は売りに出されて値下がりし、やがて影響は米国の不動産全体に広がりました。欧州でも日本でも不動産関連の貸し付けが減りました。

 おかげで、米国の住宅は1970年以来の値下がりをしています。米国経済が深刻な不況に突入する危険性が指摘されています。これまでの米国の景気のかなりの部分は、不動産の上昇とそれに関連した雇用や消費に支えられてきたからです。

 収入の面では本来は家を買う余裕のない人にまで住宅ローンを貸したのが、サブプライムローンでした。そこが直撃されたわけです。

 2003年の超低金利のボトムから昨年6月まで、中央銀行であるFRB(連邦準備理事会)が徐々に金利を上げてきたため、サブプライムローンのような返済能力の低い借り手が真っ先に破綻してしまったのでした。消費者の購買意欲が急速に低下してきました。雇用の伸びも止まりました。

 欧州も景気後退を心配しています。米国への最大の輸出国である中国の成長にも急ブレーキがかかるのでしょうか。世界は米国発の同時不況に陥るのでしょうか。

 ところが、日本では、野村証券を除けば、金融機関は米国のサブプライムローン問題からの影響はほとんどないようでした。それなら、日本経済は沈む米国を尻目に成長を続けるのでしょうか。

上場企業の収益はかなりの部分が海外へ

 株は経済の鏡と言われます。株が企業の将来の収益を予想して動くからです。経済が悪化すれば、企業の収益は下がり、株は下がります。また、金利が上がり続ければ、株は下がるのが普通です。

 企業の借り入れコストが上がり、収益が減ると予想されるからです。では、今年の世界の株式市場はどうなっているのでしょうか。

 日本株は低調です。今年の日経平均は、先週末までに3%近いマイナスでした。新興株指数である日経ジャスダック平均はマイナス11.7%、東証マザーズ指数は18.8%マイナスでした。

 そして、日銀などの報告では、ようやく上向いてきたはずの景気も再び下降線をたどりだしています。再びゼロ成長に戻ってしまいそうです。

 日本の上場企業で業績が大きく伸びているのは、ほとんどが海外での売り上げが国内よりも多いキヤノン、ファナック、商船三井、小松製作所、三菱商事、任天堂、といった企業です。

 そうした企業の株主も外国人の比率が高くなっていますから、収益のかなりの部分は海外に流れるわけです。これに対して、新興企業の多くは国内向けの売り上げが主ですが、国内の消費は低迷しています。まして、上場していない地方の会社の経営は大変です。

 企業以上に大変なのが、政府部門です。国の財政は、失われた15年で大企業や銀行の不良債権処理の損失を負担したり法人税が入ってこなかったりしたことで赤字が膨らみました。

 地方自治体の財政はさらに悪化し、破綻予備軍が目白押しです。少子高齢化の影響が本格化するのはこれからの15年です。それがこれからの日本の財政を直撃します。

サブプライムの震源地、米国では実は影響は軽微

 株式時価総額でトップ50社の76%が東京に本社を置いていることから分かるように、日本経済の東京一極集中は進んできました。自治体財政も苦しく大企業もない多くの地方の経済はますます苦しくなります。

 「国土の均衡ある発展」は死語となりました。大企業は、生き残りのために海外に出ていき、財政負担は軽くしてくれと頼みます。

 せめて、政府が高速道路無料化ぐらいさっさと実行して、地方の経済を少しでも楽にしてあげることさえ進みません。これでは、日本株全体は買えません。悲しいことです。

 前述の通り、サブプライムローン問題の震源地である米国の株は、その影響をもろに受けています。しかし、長いスパンで経済の流れを見ると、米国の株は思いのほか堅調で、今の株価急落もその大きな流れの中の小さな調整に過ぎないことが分かります。

 ゼネラル・エレクトリック(GE)、ゼネラル・モーターズ(GM)、シティグループなど、米国を代表する30の大企業の指数であるダウ平均は、年初来、先週末までで8.5%上昇しました。

 しかも、先週1万4000ドル台を初めて突破しました。私が金融界に入った1982年には800ドル近辺だったわけですから、25年で17倍になったわけです。

 2000年にIT(情報技術)バブルが崩壊して大暴落をしたナスダック指数も元気です。今年は先週末までで12.8%上昇しました。

サブプライム問題どこ吹く風の新興国

 ナスダック指数とは、米国の店頭株および小型株の指数です。時価総額で加重しますから、マイクロソフト、インテル、アップル、グーグルといった巨大IT企業の株に引っ張られる傾向があります。

 その意味で、経済の先行指数という位置づけもできます。ナスダックの上昇を支えているのは、予想収益の大きな伸びです。1株当たりの利益は、ブルームバーグの統計によると年間で4割近くも増益になることが予想されています。

 ドイツ株も元気です。今年のフランクフルト指数(DAX)は、先週末までに19.5%上昇しました。ユーロが上昇していますから、円で換算すると24.6%の上昇になります。

 ダイムラーをはじめ、ドイツ企業の業績は好調です。クルマ、ファッション、グルメ、観光まで、セレブの本家欧州のブームが続き、ユーロも高くなりました。

 そして、新興国の市場は、サブプライムローン問題などどこ吹く風というように、今年は大幅な上昇を続けています。

 代表的な株式指数を見ると、先週末までに、上海117%、香港48%、台湾23%、韓国37%、インド27%、ブラジル37%、トルコ44%、と上昇しました。そして、新興各国の経済は高い成長を続けています。今年は、アジア危機は起きていません。

橋本政権の退陣につながったアジア危機

 アジア危機は、今から10年前の1997年に起きました。最初は、サブプライムローン問題と同じように、米国の金融引き締めでドルの金利が上昇しました。

 すると、アジアに投資していた欧米の金融機関の収支が悪化しました。それが、アジアからの欧米資金の引き揚げにつながりました。

 そうなると、アジアの不動産と株が暴落を始めました。韓国やインドネシアやタイの株価は半分になりました。アジア経済は大混乱し、政変も起きました。

 アジアの金融危機は日本にも飛び火し、山一証券、北海道拓殖銀行、日本長期信用銀行が次々に破綻し、日本経済は一気に後退しました。先送りしてきたバブルの崩壊です。それが橋本龍太郎政権の退陣にもつながりました。

 なぜ、今のサブプライムローン問題が欧米の株と経済の暴落につながらないのでしょうか。なぜ、アジア危機が起きないのでしょうか。そして、なぜ、日本の株と経済が取り残されているのでしょうか。

 それは、世界経済の構造が10年前とは変わってしまったからです。新興国で経済成長が続いているだけではありません。「新興国企業」の高度成長が起きています。新興国企業の収益が伸びるからこそ、新興国の株式が上昇を続けるのです。

ドラッカーが予測した時代の終焉

 冷戦時代には、途上国には世界的大企業はほとんどありませんでした。89年に、ピーター・ドラッカーはソ連邦崩壊を予言した名著『新しい現実』を書きました。

 その中でドラッカーは、世界規模のスーパー企業は米国、日本、ドイツ、英国の4カ国からしか生まれないと書きました。途上国は先進国に追いつけない、南北格差はなくならない、というのがその頃の常識でした。

 今、株式時価総額で見て、世界最大の銀行は中国工商銀行です。世界最大の携帯電話会社はチャイナモバイル(中国移動通信集団公司)であり、電話会社はチャイナテレコム(中国電信集団公司)です。

 世界最大の鉄鋼会社はインド人が作ったアセロール・ミタルという多国籍企業です。規模だけではありません。インドには、インフォシス・テクノロジーズやランバクシー・ラボラトリーズといった先進的なビジネスモデルを持つ企業やICICI銀行のような革新的な銀行、リライアンスやタタといったかつての三菱や三井のような大胆でスケールの大きな財閥企業があります。

 世界の家電ナンバーワンは今や韓国のサムスン電子です。小型航空機の分野で世界第2の会社はブラジルのエンブラエルです。今や、新興国から世界企業がいっぱい生まれています。

 地殻変動は中国から始まりました。89年の天安門事件で欧米や日本から経済制裁を受け、世界から孤立したトウ小平の中国は大転換を行いました。それまでの、日本に学び国営企業を改革して米国に輸出できる中国企業を作る、という方針を捨てました。

「米中経済同盟」の始まり

 それからは、米国企業に合弁で中国に進出してもらい、中国の安くて優秀で豊富な労働力を米国企業に提供することを本格的に始めました。そのためには、外資企業の税金はタダ、といった思い切った経済特区を全国に作りました。

 80年代に日本企業に押されっぱなしだった米国企業にとっても、中国の政策転換が復活のチャンスになりました。

 安くて優秀な労働力と土地、それに10年も安いままに放置された人民元は、中国に進出した米国企業の生産コストを劇的に下げました。米国企業は出来上がった中国製の商品を米国国内で売って、企業収益は大きく増え株が上がりました。

 株が上昇すると個人の株式への運用比率が高い米国経済では、いわゆる資産効果によって消費が増え、それに応じて雇用も増えました。こうして対中国での貿易赤字が増えても米国経済は成長を続けられたのです。

 中国にとっても、賃金や土地代の形でドルが流れ込み、さらに輸出によってドルが入ってきます。そのドルは中央銀行が吸い上げ、その代わりに人民元が国内で大きく供給され、中国経済の成長が始まりました。「米中経済同盟」の時代の始まりでした。

 やがて、米国企業は中国の国内市場をターゲットにし始めました。国内経済の成長につれて、中国企業の成長も始まりました。昨年に不良債権問題を片づけた後は、国有企業の民営化や上場によって巨大民間企業が次々に誕生しました。

 米国企業の成功を見て、日本や欧州やアジアの企業も続きました。こうして、世界の製造業の中心が中国に移りました。こうなると、世界の工業製品の生産コストは大きく下がり、物価が上がらなくなりました。

1999年に1バレル10ドルだった原油価格は90ドルを突破

 石油や食料の値段が何倍も上がってもインフレが起きなくなったのです。だから、マネーの値段である金利も大きく下がりました。80年代の高金利は過去のものになりました。

 世界の大企業にとっては、労働、土地、マネー、という3大生産要素の値段が大きく下がったのでした。そうなれば、企業収益が大きく上昇します。

 そして、中国以外にもインドやASEAN(東南アジア諸国連合)諸国や東欧など、中国と同じように外国企業に経済を開放して成長を始める国が続出しました。

 こうして、21世紀の世界は構造的な経済成長に入りました。そうなると、資源への需要が増えました。99年には1バレル10ドルにまで下がった原油価格は先週90ドルに達しました。

 それでも、世界の物価全体への影響はわずかです。インフレにならないから金利も急上昇しない、つまり、80年代だったらかかっていたはずのブレーキがかからないのです。

 一方で、高い資源価格はアラブ諸国やロシアやブラジルやオーストラリアに大きな収入をもたらし、経済成長を加速しています。資源国でも、ブラジルのペトロブラスやリオ・ティント、ロシアのガスプロムといった巨大資源企業の収益は加速しています。だから、ブラジルやロシアの株も上がります。

1989年に比べ中国の人民元は半分に安くなった

 こうして、先進国も新興国も、資源輸入国も資源生産国も成長が続きます。いつ、世界経済のこんなハイスピードの成長が終わるのでしょうか。

 しばらくは続く、と見るしかありません。なぜなら、中国発のグローバリゼーションに参加する世界中の企業にとっては、儲かる仕組みが続いているからです。

 その源泉は、中国をはじめとした新興国での安い労働と不動産です。それが資源や食料の値上がりを相殺して、インフレなき世界を実現しているからです。

 安い為替レートも中国の低コストを支えています。中国が世界から孤立した89年の天安門事件の頃、1ドルは3.8人民元でした。今、中国が世界一の外貨準備国になったのに、1ドルは7.6人民元です。人民元は半分に安くなったのです。

 1ドル360円から80円を切るまで、4.5倍の為替の上昇を経験した日本とは逆です。日本にはあれほど乱暴に円高を迫った米国は、中国には大変寛容です。

 安い人民元は、中国に進出した米国企業にとっては、安いドル建てのコストだからです。安い人民元は米中企業共同の利益です。「米中経済同盟」の最も本質的なポイントです。

 中国だけでなく、インドやトルコやブラジルなど、新興国の通貨は長い間割安に放置されてきました。過去の中南米危機やアジア危機の記憶が残っています。でも、現実は大きく変化しています。

 かつて、外貨が底を突いて日本から借りたインドは今や20兆円もの外貨準備があります。ブラジルも、今は立派な貿易黒字国であり、かつて天文学的だったインフレ率は4%程度に収まっています。新興国の為替が上昇する条件は整っています。

世界がまだ認識していない大きな構造変化

 実は、マーケットの地殻変動は昨年から起きています。新興国の株も通貨も本格的な上昇が始まりました。

 最大の要素は、中国が不良債権問題を財政資金で処理したことでした。そして、新興国経済に参加するなど先進国企業の株も上がりだしました。世界経済の構造変化がマーケットに少しずつ浸透しているのです。

 でも、世界のマーケットは、このコラムに書いた構造変化を、まだトータルには認識していません。それが常識になった時に、新興国投資の本格的なブームが世界的に起きるでしょう。

 その間スピード調整の下げが年に何回かあっても、上昇トレンドが続き、世界の経済成長を加速するでしょう。

 つまり、日本でよく幅を利かす、世界経済や米国経済の崩壊といった解説とは逆のことがこれからの数年で起きるでしょう。

 でも、行き過ぎると、無理に投資資金を貸すところ、ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)を無視して短期的な収益に走るところが出てくるかもしれません。

 さらに、長期的には投資ブーム自体が新興国の競争力を低下させます。為替が上昇し、人件費や不動産も上昇するからです。やがて、新興国企業の収益はこれ以上伸びないことや、株や不動産が上がり過ぎたことに投資家や企業家や銀行が気がついた時に、暴落が起きるでしょう。

 つまり、新興国投資も、実体の上昇、バブルの形成と崩壊、というプロセスをたどるでしょう。でも、最終サイクルはまだ見えていません。マーケットのピークはまだ先だと思います。

新しい時代に合わない国は地位が大幅に低下

 もちろん、新興国中心の世界経済の成長は、資源と環境に深刻な影響を与え、さらに、世界の安全保障の脅威になり得る要素をはらんでいます。

 さらに、日本に表れているように、経済や国土のあり方が新しい世界にうまく適応できない国は相対的な地位を大きく低下させるでしょう。

 そして、先進国でも新興国でも深刻な格差の問題は、社会を不安定にし、テロや暴力の温床ともなるでしょう。こうした問題についてはまた改めて書きたいと思います。

 今の世界の全体的な仕組みや、それが生まれた歴史の流れについて、そして日本がどうすべきかについては『米中経済同盟を知らない日本人』(徳間書店)にまとめました。お読みいただければ幸いです。


山崎養世(やまざき・やすよ)
1958年生まれ、東京大学経済学部卒。カリフォルニア大学ロサンゼルス校でMBA(経営学修士)取得。大和証券勤務を経て米ゴールドマン・サックス本社パートナー、ゴールドマン・サックス投信社長などを歴任。2002年に退社後、「高速道路無料化」をマニフェストに掲げて、徳島県知事選挙に挑戦。現在はシンクタンク山崎養世事務所で金融、財政、国際経済問題などの調査研究を行っている。著書に『日本列島快走論』(NHK出版)、『大逆転の時代』(祥伝社)、『チャイナクラッシュ』(ビジネス社)、『投資信託革命』(共著、日本経済新聞社)、『米中経済同盟を知らない日本人』(徳間書店)などがある。
 

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