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http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20071019/137943/
「インド=IT」はもう古い。今やスニーカーからクルマまで作る大製造拠点。
BMWや現代自と世界の大手が進出、大量の雇用を生んでいる。
国内には300もの経済特区が誕生、熱心な誘致がさらに企業を呼びそうだ。
チェンナイの西40kmに位置するインドの町スリペルムブドル。1991年にラジブ・ガンジー元インド首相が自爆テロリストに暗殺された町として知られてきたが、最近、そんな陰惨さとは懸け離れた評判を獲得しつつある。
舗装された街路の脇に木が立ち並ぶ工業団地に、携帯電話メーカーのフィンランド・ノキアや米モトローラ、韓国・現代自動車といった世界的な大企業の工場が次々と出現している。
チェンナイ周辺にあるその他の工業団地にも自動車部品メーカーや繊維メーカーの工場が結集。ドイツの高級車メーカー、BMWの工場まである。
ITだけでは雇用生めず
インドとIT(情報技術)と言うなら、分かるが、インドと製造業?
だが過去2年間で、製造業はインドの新しい期待の星として浮上してきた。2007年3月会計年度でインドの鉱工業生産は12.5%伸びた。巨大な市場、生産性の高い労働者、ようやく投資を支援し始めた政府のおかげで、インドはスニーカーからクルマまであらゆるモノを生産するための、中国に代わる魅力的な国になり始めている。
「製造業こそインドの未来。これぞ実体経済だ」と言うのは、欧州のエンジニアリング大手ABBグループの国際担当社長、ラビ・アッパル氏。同社は2億ドルを投じてインド事業を拡大中だ。
製造業の隆盛には長い時間が必要だった。過去50年近く、厳しい規制がインドの産業を錆びつかせてしまっていた。力のあるソフトウエア・サービス産業がその遅れを補ってきたが、同産業の雇用者数は200万人程度。毎年1400万人の新規求職者が市場に入ってくるインドでは微々たる数字だ。
インドの製造業が創出する新規雇用は年間100万人足らずで、本来、その5倍は創出する必要がある。そして何億人もの国民を貧困から救うには、インドは中国のように繊維や玩具、家電製品といった労働集約型の輸出産業を確立しなければならない。
新工場の多くは急成長するインド市場向けに建設されたが、輸出も狙っている。「インドが製造業で力をつけるに従い、大規模な輸出が始まる」とコンサルティング会社タタEストラテジック・マネジメントグループのCEO(最高経営責任者)、ラジュ・ビンジ氏は言う。
大手IT企業はインドに大規模なアウトソーシング(業務の外部委託)拠点を築いているものの、製造業の投資額は規模が違う。ムンバイ近郊では独フォルクスワーゲン(VW)と現代自動車、米ゼネラル・モーターズ(GM)、さらに伊フィアットと地元タタ・モーターズの合弁企業が新工場を建設中で、投資は合計40億ドルに上る。
韓国の鉄鋼メーカー、ポスコは120億ドルかけてインド東部のオリッサ州に工場を建設予定。ルクセンブルクに本社を置くアルセロール・ミタルはオリッサ州及びジャルカンド州の2つの製鉄所に200億ドル投資する。3月には米ヒューレット・パッカード(HP)がインド第2の工場をデリー近郊で稼働させたところだ。
仏キャップジェミニが調査した多国籍企業340社のうち、40%が2012年までにインドに製造拠点を設ける予定だ。各社は中国でのコスト上昇に悩まされており、「インド政府の前向きな姿勢を感じ取っている」とキャップジェミニの副社長ロイ・レンダーン氏は言う。
障害がすべて解消したわけではない。インドのインフラは向上してはいるが、スピードは遅い。電力供給が不安定なため、各社は自家発電機を所有する必要がある。港は一部が私有化されているものの、なお混雑を極める。
職業訓練の不足、厳しい労働規制、州や地域の規制の食い違いは依然、経営者の悩みの種だ。国家製造業競争力委員会(NMCC)のV・クリシュナムルティ会長は「インドの政策は時代遅れで、現代インドの現実に合わない」と言い、NMCCは税金の引き下げや、企業に優しい労働法の制定を求めて活発にロビー活動を行っている。
だが、政府も製造業の重要性を認識し、投資誘致に乗り出している。インド商工省は2年前、経済特区を推進する政策を打ち出した。工場が集積する中国の深圳のような経済特区だ。
特区では、電力・水の安定供給や迅速な輸出入手続きを確保でき、官僚からの干渉も抑えられる。インド全体でおよそ300の経済特区が誕生した。
急拡大する経済特区
「ここでは道路の状態や電力、水について心配する必要はない」とBMWインドのCEO、ステファン・フルセンバーグ氏は語る。BMWインドは今年2月、チェンナイ南部の経済特区でインド国内で販売する「3シリーズ」と「5シリーズ」の生産を始めた。
中国と同様、インドもサプライヤーの強固なネットワークを発展させた。例えば自動車業界。スズキは1982年に合弁でインドに進出した際、旭硝子のような部品メーカーも連れてきた。部品各社はすぐに地元企業と提携。米デルファイやデンソーが続いた。スンダラム・クレイトンなどの地元企業も発展を遂げ、現代自動車やホンダなども引きつけるサプライヤー基盤を築いた。
同じことが携帯電話でも起きている。ノキアは充電器を生産するフィンランドの企業、サルコンプを伴って2006年3月にインドで業務を開始。後にはプラスチック部品メーカーのペルロスや委託製造業のフォックスコンが続いた。
インドにおけるノキアのサプライヤーは、地元企業から小さな部品を購入している。「半導体の焼きつけから、すべてがここで作られている」と、スリペルムブドルのノキア幹部サチン・サクシーナ氏は語る。今では、同社のサプライヤーはモトローラにも部品を売っている。モトローラは1年前に2km先で電話を作り始め、11月には新工場を稼働する予定だ。
インドは、中国の急成長の原動力となった地域からも投資を引きつけている。台湾である。
フォックスコンのような電機メーカーに加え、ローテク産業も姿を現し始めた。米ナイキに靴を販売する台湾のフェン・タイは、チェンナイ近くの経済特区に工場を建設中。米リーボックのサプライヤーであるアパッチ・フットウエアもハイデラバードで工場建設を計画中だ。フェン・タイは既にインド人を5000人雇用しており、ハイデラバードではアパッチと建設予定の2工場で合計2万人の雇用が見込まれている。
各社は移民の労働力を引きつけるために社宅の建設を計画している(これは中国の成功の方程式の基盤だった)。
「多くの企業がインドに来てくれるように誘致したい。中国だけにすべてを賭けるわけにはいかないはず」と台湾の貿易振興組織タイトラのトーマス・チャン氏。「インドはいい選択肢だ」。
Manjeet Kripalani
(BusinessWeek,(C) 2007 Oct.15,McGraw-Hill,Inc.)