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2007年04月18日 (水) http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/2573.html
(野村キャスター)
ニュース解説「時論公論」、今夜は、円がユーロに対して最安値を更新する中で、先週末G7の財務相中央銀行総裁会議が開かれたことを受けて、なぜ円安が進んでいるのか、どう対処するべきなのか、大島解説委員が伝えます。
(大島解説委員)
今回のG7声明では、ヨーロッパ経済が比較的順調なこともあって、「為替は経済の実態を反映するべきだ」というこれまでの表現が繰り返され、円安批判が表面化することはありませんでした。
しかしヨーロッパ中央銀行のトルシェ総裁がG7のあとの記者会見で、「円で投機をする際には、日本経済の健全性を思い浮かべた方がいい」と、円売りを仕掛ける投機筋に警告を発するなど、特にヨーロッパを中心に、今の円安に対する不満がくすぶっていることを窺わせました。
円安の元凶として槍玉に上がっているのが円キャリートレードと呼ばれる取引です。これは、ヘッジファンドなどの投機筋が、低金利の円を借りてより金利の高い通貨で運用して利益をあげる手法です。
例えば今円で運用すると利回りは1%台ですが、ドルで運用すれば4〜5%台となりまして、金利がそのままならこの金利差分が儲けになります。同時に為替も変動するので色々損得が出ますが、今回投機筋は、先行き円安になると読んで、一方的に円を売っています。現実に円安になっているので投機筋は大いに儲けているはずで、通貨当局が問題にしているのはこの点です。
もう一つ円安の背景となっているのが、個人投資家が外貨建ての資運用を急激に増やしている点です。日本の個人投資家が買った外国の株や債券、投資信託の合計は、10年前には10兆円足らずでしたが、この3〜4年、投資信託を中心に急激に増え始め、最近は40兆円規模にまで膨れ上がっています。
元々日本の預金者は、日本国内でしか資産を運用してきませんでしたし、株よりも銀行預金を好んだものでした。ところが2年前に実施されたペイオフで、日本の銀行一行あたりに1千万円以上を預けることに預金者が危険を感じたことや、これまで馴染みが薄かった投資信託を銀行が扱うようになったことなどから、資産運用の対象が一気に拡がったと見られています。
更に年金を含めた将来への不安から、自らの資産は自らで護るという意識がこれまで以上に高まったことも影響しているかも知れません。
預金者が、リスクを分散する観点から資産運用の対象を海外に拡げること自体は結構な事だと思いますが、こうした動きが円安の流れを加速していることも事実です。
更に一部の個人投資家の間で証拠金取引という為替取引がブームになっていて、彼らの円売りドル買いの動きが為替相場に少なからぬ影響を及ぼしています。
このように、プロの投機筋と個人投資家が、同時に円を売って外貨で運用している事が相乗効果をもたらす形で、今の円安を引き起こしていると見ることが出来ます。
先週末G7の通貨当局者たちは、わざわざヘッジファンドの首脳を呼んで資金運用の実態について話を聴きましたが、もとより取引の内容に踏み込むことはしていません。
また個人投資家が資産を外貨建てで運用している点についても、現実には抑制する手だてなどはありませんし、またするべきでもないでしょう。自由な資本取引を保証している以上、G7声明で、「投機的な取引にはリスクが伴うことを認識するべきだ」と、考えてみれば当たり前の警告を発する以外に、通貨当局者に出来る事は余りないのです。
また日銀が利上げを繰り返して、日本の低金利状態を急いで解消しようとしたり、円高に誘導するための為替介入を行うといった人為的な円安阻止の手段は、勿論とるべきではないでしょう。従って、今の円安の流れを変える有効な手段は、ないのです。
しかしだからと言って、今のままで良いかとなると、なかなか悩ましいところです。
日本は、バブル崩壊のあと前例のないデフレ状態に陥ったことを受け、永らくG7の間で、円安による輸出主導の景気回復を図ることを黙認してもらうという特別扱いを受けてきました。鬼ごっこで、捕まっても鬼にならなくてすむ年少の子供の様に、日本はオミソ扱いとなったわけです。
オミソの立場をフルに活用したのが、2002年から二年足らずの間に35兆円という空前の規模の為替介入を行って円安誘導を図ってきたことでした。
輸出を増やすという観点からは自国通貨が安くなる方が有利ですが、どこかの通貨が安くなれば、他の国の通貨は高くなりますので、自分の国の都合だけを考えて為替介入をすることは、少なくとも先進国の間では見苦しいことだとされています。それにもかかわらずなりふり構わない為替介入が行われた背景には、何としてでもデフレ不況から抜け出したいという日本の通貨当局の必死の思いがあったのです。
それがどれだけ功を奏したかは別途議論があるところですが、日本経済はようやく回復し始め、今や戦後最長の景気拡大を謳歌しています。ところがその後も円安の流れは続いていて、円は一時1ユーロ162円を突破して史上最安値を更新しています。「日本は何とかしたらどうなのか、いつまでもオミソ扱いにはしないぞ」というのがヨーロッパの本音でしょう。
わたくしは、「失われた10年」、ずっと特別扱いを受け、この間先進各国に色々迷惑もかけてきたのですから、景気回復を果たした今、日本はそろそろ国際社会の期待にどう応えるかを考えなければいけないと思っています。では何が出来るのでしょうか。
日本の景気回復は、企業の4年半連続の増益に支えられたものですが、それは円安を追い風にしながらアメリカと中国向けの輸出によってもたらされたものです。端的に言えば、為替頼み・アメリカ頼みの好景気です。それを為替や外国の景気に左右されない自立した経済になるよう、経済運営の舵を内需主導に切り替えるべきでしょう。
そのためには輸出産業ではなく、サービス産業をもっと振興するべきです。特に教育と医療福祉の分野は、人口減少社会に見合った形で規制緩和を進めていけば、今までにない新しいビジネスが興る可能性を秘めていますので、早急な取り組みが求められます。
もう一つ企業の業績向上に貢献したのは、正社員を減らしてパートや外国人労働者を増やしたリストラ効果です。しかしこれでは個人消費がなかなか回復しません。今の好景気が、国民レベルではなかなか実感が伴わないのは、収益の伸びに見合った従業員の待遇改善が出来ていないからです。
ハゲタカファンドに迫られて株主に配当を増やす前に、「企業から家計へ」、従業員に対して富を再配分するべきでしょう。
流行りの言葉を使えば、特別扱いを受けたことを恥とも感じない「鈍感力」は困ります。求められなくても内需主導の経済を実現して国際社会にきちんと借りを返すことこそが「国家の品格」というものではないでしょうか。
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わたしとしても政府、自民党、野党には、一刻も早く「国家の品格」を備えるべく、方策をこうじていただきたいものです。