★阿修羅♪ > 国家破産53 > 180.html
 ★阿修羅♪
これはカタルシス? なぜ市場は巨大銀行の赤字を歓迎するのか――フィナンシャル・タイムズ
http://www.asyura2.com/07/hasan53/msg/180.html
投稿者 gataro 日時 2007 年 10 月 22 日 13:14:28: KbIx4LOvH6Ccw
 

http://news.goo.ne.jp/article/ft/business/ft-20071018-01.html

これはカタルシス? なぜ市場は巨大銀行の赤字を歓迎するのか――フィナンシャル・タイムズ(1)
2007年10月18日(木)14:50

(フィナンシャル・タイムズ 2007年10月4日初出 翻訳gooニュース) ピーター・サル・ラーセン、デビッド・ワイトン、ベン・ホワイト

銀行関係者は今、危機のコストを計算している。世界の債務市場で吹き荒れた嵐を耐えに耐えて約2カ月。高リスク債権のコストが一気に高騰し、資金が逼迫(ひっぱく)した信用収縮の影響が、賃借対照表にどう表れるか。世界有数の投資銀行は受けたダメージを計算している。

発表されたダメージは巨額だ。10月冒頭に発表されただけでも、シティグループとドイツ銀行とUBSが7〜9月期に、合計130億ドル近い評価損を計上。これに先立ちゴールドマンサックス、モルガン・スタンレー、リーマン・ブラザーズ、ベアー・スターンズもこぞって、評価損を計上したし、メリル・リンチとJPモルガン・チェースもまだ数字を公表していないが赤字を出しただろうと予想されている(訳注・メリル・リンチは10月5日、55億ドルの評価損を計上すると発表。シティグループは15日、7〜9月期決算で57%の減益を発表した)。

しかしこれだけの減益が相次いで発表されても、市場は驚くほど前向きだ。UBSは今月1日、37億ドルの評価損を計上したと発表し、1998年にヘッジファンド「ロングタームキャピタルマネジメント(LTCM)」が倒産して以来初めての四半期決算赤字を公表したが、それでもその後、UBSの株価は9%近くも上がった。ほかの投資銀行の株価も軒並み上昇。つまり悪い噂や予測ばかりが何週間も飛びかった後だけに、投資家たちはたとえ悪い内容でも、数字が公表されたことを歓迎したようだ。

モルガン・スタンレーのアナリストたちは、悪い血を瀉血(しゃけつ)したかのような今回の決算発表を「カタルシス的だ」と呼んでいる。まさに雨降って地固まるかのように、悪い発表が好ましい結果を呼び込んだのだ。「損を出せば出すほど、株価が上がるみたいだ」と、ある投資銀行トップは言う。

3日には、メリル・リンチが確定利付き部門の責任者と仕組み債商品の責任者を解雇したと報道され、決算発表に先駆けて投資家は動揺するかと思われた。しかし実際には市場はすでに、メリル・リンチが何十億ドルもの評価損を報告するだろうと織り込み済みで、よって株価はほとんど全く動かなかった。

モルガン・スタンレーのアナリスト分析によると、シティグループやベアー・スターンズ、ドイツ銀行、UBSのいずれも、第3四半期の株主資本利益率(ROE)は10%以下でしかなかったはずだという。同じ業界で比較すると、過去10年間のROE平均は18%だったし、2001年〜02年に下落した時でさえ11%を維持していた。そして現在でも、全ての銀行が同じようにROEを下げているというわけではない。たとえば5月〜8月期に評価損を出したリーマンとモルガン・スタンレーはいずれもROE17%だったが、一方でゴールドマンサックスはROE23%で群を抜いた。

それでも、最もひどい打撃を受けた銀行でさえ、今回の評価損は今のところ企業生命にかかわるほどのものではない。投資銀行では、賃借対照表も資本準備金も健全だ。60億ドル近くの評価損を出したけれども、シティグループはそれでも7〜9月期に利益を出すだろうし、赤字転落したUBSも、2007年1〜9月について85億ドルの利益を計上する見通しだ。「要するに我々は、ひとつの四半期分をまるまる失ったということだ」とマルセル・ローナー最高経営責任者(CEO)は話した。

大きな打撃を受けた企業の多くが、10〜12月期で一気に回復すると楽観視する観測が拡大している。シティグループはこのほど、確定利付き商品部門は9月段階ですでに正常レベルに回復したと発表。確かにそうやって、市場の混乱でかえって得をした部門もあるくらいだ。市場が不安定だったおかげで、金利スワップの取引高は増えたし、外為市場も活発化した。

しかし投資家たちが一安心するのとは裏腹に、投資銀行業界は未だに、業界としての今後の展望について重要な問題に直面している。信用収縮をきっかけに、多くの銀行家やアナリストは、過去3年半にわたってとてつもない巨額の利益をもたらした現在のビジネスモデルを、再考するようになった。

債務不履行の危険が大きい企業は、政府のような安定借り手に比べて、より高い保険料を払わなくてはならなくなる。信用格差拡大に伴うこうした直近の影響で、投資銀行にとってここ数年、もっとも収益性の高かった部門の事業規模がこれから縮小していくかもしれない。

今までよりも高い利子と厳しい貸し付け条件を前に、投資ファンドは借り入れを減らすだろう。すると、ほとんどの投資銀行が投資ファンドと取り引きするために作り上げてきた、レバレッジファイナンス部門が、打撃を受けることになる。「資本コストが3〜4年前と同じくらいに戻ってしまえば、レバレッジローンの収益と取引高は数年前に逆戻りすることになるだろう」 モルガン・スタンレーのアナリストたちはこう話している。

米サブプライムローン市場の破綻によってほかにも、危険な住宅ローンを作り出してパッケージ化し、高収益な証券商品を求めている投資家に提供するというビジネスも、終ってしまった。サブプライムローンをもとにした証券商品を投資家がまた買うようになるには、何年もかかるだろうと、多くの銀行トップは話している。

多様な証券やデリバティブを原資産とする複雑な投資商品を作りあげるのが専門の、仕組み債商品部門は、もはやそういう複雑な投資商品への需要そのものが減りつつあると気づき始めた。新商品を組み立てるよりも、かつて自分たちが作った複雑な商品の仕組みを解いてばらす方が、需要として高まっている。

パンク・ジーゲルのアナリスト、リチャード・ボーブ氏は投資銀行が今後、確定利付き商品の減収を反映して、10%以上も人員を減らすかもしれないと見ている。今のところ人員整理の大半は米国各地に点在する、そもそもの住宅ローンを担当した部門で行われた。しかしすでにニューヨークでも解雇が始まっている。高給取りのトレーダーや銀行社員が、職を失い始めているのだ。 

==========================================

http://news.goo.ne.jp/article/ft/business/ft-20071018-02.html

これはカタルシス? なぜ市場は巨大銀行の赤字を歓迎するのか――フィナンシャル・タイムズ(2)
2007年10月18日(木)14:50

(1から続き)

一部業務の事業停滞によって投資銀行全体の収益は今後も縮小するだろう。しかし銀行の経営陣はこれが、どのくらいになるのか予測できずにいる。「2008年の収益の適正なランレートはいったいどれぐらいなのか。誰も答えられない。好材料より悪材料の方が多いだろうと予測するしかない」 リーマン・ブラザーズのアナリスト、ジョン・ピース氏はこう言う。

サンフォード・バーンスタインのアナリスト、ブラッド・ハインツ氏は、2007年の信用危機は以前のリプライシング(価格の付け直し)周期と同じ動きを見せていると言う。これまでのリプライシング周期は平均して4.8カ月続いた。以前の信用収縮では、確定利付き商品の収益が21%減。半年にわたって収支に影響を与えたという。「現状では2007年の下落は、過去5回のリプライシング周期の平均に比べて、下げ幅が大きいようだが、今回は債券市場が前よりも素早く反応して調整している様子だ」とハインツ氏。

明るい材料はほかにもある。資金が市場にあり余っていた日々にあっさり戻れるとは誰も期待してはいないが、レバレッジローン市場は楽観視されていた通りに速やかに回復しつつある。カード決済処理ファースト・データの買収資金260億ドルを支えるローンについては、銀行は損益覚悟で売却せざるを得なかった。しかし引受人によると需要は高く、市場の自信は回復しつつあるようだ。

そもそも投資銀行というのは、コストを素早く削減して社内資源をあちこちに動かすものだとアナリストたちは言う。投資銀行グループはあちこちで、住宅ローンやプライベートエクイティのコンサル部門を減収に合わせて縮小しており、おかげですでにベア・スターンズやリーマン・ブラザーズ、クレディスイスやモルガン・スタンレーの各社では、住宅ローン関係の人員削減が進んでいる。投資銀行業界は今後も市場の変化に合わせて、新たに利益を生み出す手法を編み出すはずだと、楽観的なアナリストたちはそう言う。

「この業界について忘れられがちなのは、資本を動かすのに長けていること。金融市場の一部で機会が少ないとなれば、ほかの市場に資本を回すまでのこと」と、ゴールドマン・サックスのアナリスト、ウィリアム・タノナ氏は言う。

しかしここ数カ月の展開は、投資銀行業界全体の構造そのものにも影響しかねない。業界がかつてのビジネスモデルに戻るのではないか、つまり、顧客に資金を提供した金融機関はその債権を商品としてほかの投資家に売るのではなく、自分自身の帳簿につけておくという伝統的なモデルに回帰するのではないかと、多くの銀行関係者が予想している。

これは必ずしも米住宅ローン市場のみのこととは限らない(米住宅ローン市場については、規制当局が将来的に、過剰な動きを阻止するべく規制を強化しそうな見通しだ)。ほかにも法人融資、特にレバレッジローン部門に影響しそうだ。「住宅ローンをまとめた人間と、その住宅ローンを債権としてもつ人間が別だという事態から生じるのと同じ問題が、ほかの債務市場にも発生している。なので、同じような反応が予測される」と、ウォール街企業のある重役は話す。これまで投資銀行の収益源になっていた、帳簿外の様々なカラクリについても、これからは監視が厳しくなるかもしれない。

こういう考え方はもしかすると、今ほど競争が激しくなかった昔に戻りたいという、銀行関係者の希望的観測なのかもしれない。しかし巨額のバランスシートに支えられるシティグループやJPモルガン・チェース、ドイツ銀行などの投資銀行は明らかに、今後の競争は自分たちに有利に働くと感じているようだ。巨大な国際銀行の重役は「信用に値段をつけられる、そういう世界の復活を期待している」と話す。クレディ・スイスのブレイディ・ドゥーガンCEOは株主に対して、競合他社の市場シェアをクレディ・スイスのものにできるだろうと話している。

しかしながらこうした予測は全て、今回の信用収縮がより広範な景気悪化につながったりはしないという、その前提をよりどころにしたものだ。信用収縮をきっかけに景気が悪化すれば、消費需要は減退し、企業活動がダメージを受ける。不安材料はいくつかある。シティグループの業績見通し発表で何より驚かされたのは、消費者金融部門で26億ドルの費用計上を予想(訳注・15日発表の決算発表ではさらに増えて、消費者金融関連費用を29億8000万ドル計上したとしている)。つまりクレジットカードや消費者金融の支払い滞納が急激に増えると予想しているということになる。

もし米経済が大きく減速するならば、投資銀行にとってこれまでの高収益だったビジネスが一気に減るだろうと、サンフォード・バーンスタインのハインツ氏は言う。かつてリーマン・ブラザーズの最高財務責任者(CFO)だった同氏によると、企業合併についてアドバイスしたり、株式発行を引き受けたりという、投資銀行にとってのもうけどころが減る可能性がある。「失業率が上がると共に、小売ブローカー業は減速し、新規投資は資産運用ビジネスに流れ込む。すると仲介業務は通常、縮小するものだ。景気が急に悪化すると、確定利付き商品のパフォーマンスは好転するが、銀行にとっての収益率は低いのだという。

米経済の失速はさらに、ただでさえ弱体化している米国の住宅市場をさらに悪化させ、これまで以上に住宅ローン証券の価値を脅かす。UBSはこのほど、自社へのサブプライム・ローンの影響評価は慎重すぎたかもしれないと発表。しかしローナーCEOは、米経済で深刻な景気停滞が起きればさらに影響は悪化するとも認めた。「期待値が再び外れたりすれば、かなりの評価損につながる」

未上場企業へ投資するプライベートエクイティ取引などを使った大規模な私設取引を展開していた銀行も、打撃を受けるだろう。「短期的で急激な修正期間に、いちばん手痛い打撃を受けるのは、引き受け担当だ。これがもっと長期にわたると、主要業務の部門がもっと苦しむことになる」 ある投資銀行のトップはこう言う。

多くの銀行は、米国外でのビジネスに守られている。特に中国やインド、あるいは原油高に支えられたロシアや中東などでは、資本市場がより堅調に成長しているからだ。しかしそれでも、投資銀行にとって最大の収益源は米国であることには変わりない。世界の投資銀行は動乱の夏を何とかしのいだが、その前に広がる未来は、さらに予測困難で、もしかしたら実入りの少ないものなのかもしれない。


==========================================

上記記事のFT.comにおける英文記事 ⇒

http://www.ft.com/cms/s/0/ce265746-72a9-11dc-b7ff-0000779fd2ac.html
‘Cathartic’: Why markets like the big banks’ poor results
By Peter Thal Larsen, David Wighton and Ben White


  拍手はせず、拍手一覧を見る

 次へ  前へ

▲このページのTOPへ      HOME > 国家破産53掲示板

フォローアップ:

このページに返信するときは、このボタンを押してください。投稿フォームが開きます。

 

  拍手はせず、拍手一覧を見る


★登録無しでコメント可能。今すぐ反映 通常 |動画・ツイッター等 |htmltag可(熟練者向)
タグCheck |タグに'だけを使っている場合のcheck |checkしない)(各説明

←ペンネーム新規登録ならチェック)
↓ペンネーム(2023/11/26から必須)

↓パスワード(ペンネームに必須)

(ペンネームとパスワードは初回使用で記録、次回以降にチェック。パスワードはメモすべし。)
↓画像認証
( 上画像文字を入力)
ルール確認&失敗対策
画像の URL (任意):
投稿コメント全ログ  コメント即時配信  スレ建て依頼  削除コメント確認方法
★阿修羅♪ http://www.asyura2.com/  since 1995
 題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
掲示板,MLを含むこのサイトすべての
一切の引用、転載、リンクを許可いたします。確認メールは不要です。
引用元リンクを表示してください。