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プライマリーバランスの話(経済コラムマガジン)-「プライマリーバランスを回復させよ」という「悪魔の囁き」
http://www.asyura2.com/07/hasan53/msg/115.html
投稿者 JAXVN 日時 2007 年 10 月 15 日 08:16:12: fSuEJ1ZfVg3Og
 

「経済コラムマガジン07/10/15(500号)

・プライマリーバランスの話

・プライマリーバランスの回復

今日の日本の財政運営の基本方針は、2010年初頭(2011年と見なして良い)にプライマリーバランスを黒字化(回復)することである。まずプライマリーバランスを説明する。プライマリーバランスとは「国債などの借金を除いた歳入と、過去の借金の元利払いを除く歳出との比較」のことである。これが黒字化するということは、前者が後者を上回ることを意味する。

プライマリーバランスが均衡、あるいは黒字化すれば過去の借金は残るが、借金はこれ以上増えないことになる。つまり国の借金はなくならないが、どんどん借金が増える状況からは抜け出せる。このプライマリーバランスの回復によって、財政の破綻を免れ、持続可能な財政運営が可能になると財政再建論者達は主張する。

たしかにこのプライマリーバランスの回復という大方針は一般受けする。特にここ1,2年の増税と、法人税の増収があった。法人税の増収は大企業のリストラ効果に加え、驚異的な新興国の経済成長によって外需が好調に推移し、主に輸出企業の業績が良くなった(円安も寄与)からである。これらによって日本の財政は、たしかにプライマリーバランスの回復に一歩近づいた。そして政府・与党だけでなく、国民もこの財政再建路線がうまく行くと思い込んでいる。

小泉政権下で作られたこの方針は、今日、政府・与党の財政運営の基本方針となっているだけでなく、野党の民主党も特にこれに反対していない。逆に今日この大方針に反対するには、「国賊扱い」を受けることを覚悟する必要がある。唯一これに異議を唱えているのが国民新党である。「橋本政権以来、財政再建政策を採る度に国の借金は逆に増えている」という事実を国民新党は指摘する。しかし今のところマスコミは全くこれを相手にしない(そのうちこの話が本当のことと知って愕然とするであろうが)。

国の借金も家計の借金も同じと思っている国民にとって、プライマリーバランスの回復という方針は解りやすい。大きな借金を抱えていても、これ以上借金を増やさないというのがプライマリーバランスの回復である。誰もがこれは財政再建の一歩と考え、反対する者はいない。

しかし家計の借金と国の財政赤字とは全く違う。個人や家計がこれ以上借金を増やさないことは決して悪いことではない。ところが国が借金を増やさないということは、政府消費や公共投資を削減したり、増税を行うことを意味する。当然、これらはマクロ経済に悪い影響を与える。

一人の個人や一つの家計が借金を増やさないため、緊縮財政を採っても日本経済に影響はない(全ての個人や家計が借金返済に走れば話は別だが)。しかし国が借金返済に向かって走れば、日本のように慢性的な需要不足の経済を抱える国にとって悪影響は避けられない。この悪影響がここまで大きく表面化しなかったのは、たまたま新興国の経済発展による特需があったことと円安(政府・日銀の円安政策も影響)のためである。もちろん外需の恩恵を受けられなかった業種や地域経済は、既に緊縮財政によって大きな打撃を被っている。

国のバランスシートを静態的に見るか、動態的に見るかで、プライマリーバランスを黒字化(回復)政策の評価は正反対になる。バランスシートを静態的に見れば、増税と財政支出の削減を続けることは正しい。しかしそんなにプライマリーバランスの黒字化(回復)を良い政策と主張するなら、中途半端な緊縮財政を止め、もっと大胆な超緊縮財政を来年にでもやれば良いのである。それで経済の方が破綻すれば、今度は国民も政治家も目を醒すと筆者は考える。

・悪魔の囁き

財政の状態を示す指標には、プライマリーバランスだけでなく他に色々ある。しかし財政再建論者達はこのことに口をつぐんでいる。例えば橋本政権の財政健全化目標は、単年度の財政赤字額をGDPの3%以内に収めることであった。EUへの参加条件もこれに近い。またOECDは、財政の健全性を見る指標に、名目GDPに対する債務残高の比率を使っている(債務比率)。さらにOECDは債務残高から金融資産を差引いた純債務のGDPに対する比率というものも使っている(純債務比率)。

日本の場合、政府の債務残高は大きいが、一方に政府は莫大な金融資産を保有している。したがって筆者は単純な債務比率でなく、純債務比率の方が日本の財政の健全性を見るにはより適切と考える。この辺りは04/12/13(第371号)「第一回財政研交流会」(http://adpweb.com/eco/eco371.html)で詳しく取上げた通りである。

プライマリーバランス回復論者は、国のバランスシートだけを静態的に見ている。つまり財政のマクロ経済への影響を無視する。しかし財政が経済や経済成長率に影響を与えることは確実である。ところが彼等は、例えば「公共投資を増やしても、経済成長率は上がらなくなった」と言った明らかな嘘を平気でつき、これを否定する。

また外需依存経済によって円高になれば、常軌を逸したような為替介入を行う。小泉政権下では短期間のうちに35兆円もの為替介入を行って、経済を支えた。たしかに為替介入は財政支出にならないが、これは明らかな誤魔化しである。このような金こそ国内の投資に回すべきであり、もしこれを財政支出の拡大に使っておれば、今日の日本経済はもっと成長していたはずである。

緊縮財政が経済に与える悪影響は徐々にやってくる。財政はプライマリーバランス回復に一歩近づいたが、国民経済は一段と疲弊した。小泉政権流の財政運営が続くことによって、日本経済はさらに落込むと筆者は見ている。

先週号で「家計の可処分所得は2000年度の298兆円から2005年度の283兆円へ15兆円も減っている」ことを指摘した。本来、経済が成長して、逆に家計の可処分所得が増えていなければならないのに、逆に減っているのである。その差額が大企業の収益になっていたり、プライマリーバランスの回復に使われていると考えれば良い。

長期金利がわずか1.6%なのに、なんで「財政危機」なのか。政治家もマスコミも、そして国民も全て騙されているのである。ところが肝腎の政治家の大半が騙されていることにいまだに気が付いていない。

国民は「日本経済は戦後最長の景気拡大を続けている」という官僚が作った嘘話にずっと騙されてきた。しかし先の参議院選挙で与党は大敗した。有権者は経済状態が確実に悪くなっていることを実感しているのである。ようやく政治家の中にも、この「プライマリーバランスを黒字化(回復)」政策が間違っているのではないかと気付く者が出て来た。筆者に言わせれば「ようやく気が付いたか」ということになる。

ふっと気が付くと経済コラムマガジンも今週号が500号ということである。しかし筆者の言わんとしていることは、今週号に集約されているような気がする。「プライマリーバランスを黒字化(回復)」方針こそが「悪魔の囁き」なのである。

来週は、今週の話をさらに一歩進めたい。」
http://adpweb.com/eco/eco500.html

関連
財政再建至上主義をこのままつづければ日本は崩壊する(森田実の言わねばならぬ 638)
http://www.asyura2.com/07/senkyo42/msg/1128.html
投稿者 天木ファン 日時 2007 年 10 月 12 日 10:11:02: 2nLReFHhGZ7P6

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