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http://markets.nikkei.co.jp/column/fxwatch/index.cfm
10月1日、NYダウ平均株が史上最高値を記録した。米国経済が減速していくという見通しが大勢を占めている中での株式市場の上昇は一見不思議な現象に思える。しかし、今回のケースに酷似した現象が過去に起きている。それは1998年に発生したロシア金融危機と呼ばれるものである。
当時はヘッジファンドビジネスが急拡大している時期であったが、その象徴的存在として知られていた米国のロングターム・キャピタル・マネジメント(LTCM)という大手ヘッジファンドが破綻の危機に陥った。LTCMはロシアの債券への巨額の投資を行っていたが、ロシアでの金融危機発生によって多額の損失を被ったのである。当時、米国の各金融機関はこのヘッジファンドに多額の資金提供をしていたために、問題は金融機関にまで波及し、金融市場が大混乱に陥った。株式市場は急落し、その後、激しい円高相場がやってきた。今回とよく似た展開である。これに対して、当時のグリーンスパンFRB議長は金融市場の混乱を沈静化させるため、政策金利を3回にわたって引き下げた。こうした措置により、株式市場は急回復し、その後の株式市場のミニバブルへと繋がっていった。
今回のサブプライムローン危機も、サブプライムローン担保証券という金融商品での損失がきっかけとなっている点で1998年と酷似している。また、それによって信用不安が発生し、株式市場が急落、為替市場では円高が進んだ点もよく似ている。
今回の混乱に対してバーナンキFRB議長は8月17日に公定歩合の引き下げを実施、その後、9月18日にはFF金利を0.5%引き下げた。こうした中央銀行の対応を好感して株価が上昇している。この動きも1998年と似た現象である。過去の現象を見ると、今回の米国株式市場の上昇も決して特殊な現象ではないというがわかると思う。
年々企業のグローバル化が進んでいる中で米国企業も国内経済の影響を受けにくくなってきている。こうした環境下では金融緩和による企業の負担軽減という株価への押し上げ効果が1998年当時よりも大きいかもしれないということも推測できる。
米国の株式市場が上昇してきていることに伴って、外国為替市場でも、サブプライムローン問題発生以前の「円以外のユーロなどの通貨に対するドル安」そして「円はドルにもユーロにも円安」というかつての展開に戻ってきている。つまり、米国経済の緩やかな減速によるドル安と金利差を反映した円安の共存である。今回の市場の混乱によって、安易な金利差への傾倒に対する反省が投資家の中にもあると思われるため、ここから一層円安が加速していくという可能性は低いかもしれない。しかし、日本人投資家にとって、国内によい投資先がない状態では、今後も外貨への投資家は継続していくと考えられるので、緩やかにユーロやドルに対しての円安が進行する可能性は依然として高そうだ。
(2007/10/02)
今井雅人
グローバルインフォ株式会社
代表取締役社長
1985年上智大学卒業、三和銀行に入行。1987年よりディーリング部門へ。シカゴ支店で先物取引等のディーリングを経験。1993年からは東京本店の円デスクのチーフディーラー。2000年より三和銀行、UFJ銀行の為替部門の統括次長。2004年に独立。マットキャピタルマネージメントCEO、早稲田大学インド経済研究所研究員を兼任。元、外為市場委員会委員、東京フォレックスクラブ理事