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【週刊エコノミスト編集部】 ドルの暴落 本当のドル危機は年末に訪れる
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投稿者 小沢内閣待望論 日時 2007 年 10 月 02 日 16:55:30: 4sIKljvd9SgGs
 

2007年10月 2日(火)
特集 ドルの暴落 本当のドル危機は年末に訪れるhttp://biz.yahoo.co.jp/column/company/ent/071002/r/071002_biz01.html

週刊エコノミスト編集部
平野純一

 世界の金融市場を震撼させた「サブプライム問題」。混乱は予想以上に長引くことが見え、米国経済の行方にも赤信号が点り始めた。米国の通貨「ドル」の価値は維持できるのか。基軸通貨としての地位は揺らぐことはないのか。ユーロや中国・人民元の存在感も増すなか、ドルの信認性が問われている。

(図1)

◇本当のドル危機は年末に訪れる−いまは“不気味”な安定状態

「FRB(米連邦準備制度理事会)の念頭にあるのはただ1つ。いかにドルを“暴落”させることなく、サブプライムローン(低所得者向け高金利住宅融資)危機を乗り切るかだ。しかし、それは限りなく不可能な注文に思える」

 あるマーケット・エコノミストは、ため息まじりにそうつぶやく。7月以降、瞬く間に世界に広がった米国のサブプライム問題。その深刻さを詳細に分析していけば、「ドルの大幅下落以外の結論を導き出すことはできない」というのだ。

 サブプライム問題をきっかけに、欧米を中心とした金融機関の不良債権問題の危機がささやかれ、米国経済はリセッション(景気後退)入りも指摘され始めた。三菱UFJ証券の吉川雅幸シニアエコノミストは「米国が深刻なリセッションに陥って、4〜5回連続で利下げをしていく状況になると、リスクケースとして1ドル=100円を目指すようなドル安の可能性がある」と予測する。

◇ドルを持っていていいことはない

 サブプライム問題を原因とするドル下落のルートは、2つある。1つ目は、米国の利下げが続くことで、日米間の金利差が縮小し、円キャリートレードなど、ドルの高金利を目指した「金融投資面」からのドル買い需要がなくなる。2つ目は、サブプライムローンを元手とした証券化商品が不良債権化し、金融機関の信用が収縮することで、米国経済が失速するという「実体経済面」の悪化によるドルの下落である。

 1つ目の金融投資面を見てみよう。これまでの円安・ドル高を演出してきた円キャリートレードの資金量を測るデータの1つ、シカゴ国際金融市場・通貨先物の「円売り・ドル買い」ポジションは、9月末現在でほぼ姿を消している。投資家は、今後ドルを持っていても得することはないと読んでいるからだ。

 FRBは9月18日のFOMC(米連邦公開市場委員会)で、FFレートを0.5%下げ4.75%としたが、利下げがこれで終わりと見るエコノミストはほとんどいない。今後も日米金利差は縮小していくなかで、さらに円売り・ドル買いポジションを積み上げるには勇気がいる。金融投資面からのドル高・円安局面は終わったと見ていいだろう。

 では、実体経済面からはどうか。サブプライム問題が、どれくらい金融機関の不良債権問題として深刻化するかは、エコノミストの間でも意見が分かれている。

 だが、7月中にバーナンキ議長が最大1000億ドルと見積もっていたサブプライム関連の金融機関の損失は、9月24日のIMF(国際通貨基金)の調査であっという間に2000億ドルと2倍に膨らんだ。まだ拡大する可能性は十分にある。しかも、変動金利型のサブプライムローンの延滞率は今後も上昇していく可能性が高いのだ。

(図2)

 最新の金融機関の決算には、その影響がじわじわ出始めている。モルガン・スタンレーは6〜8月期の決算で、サブプライム関連などローン債権の償却費用を9億4000万ドル(1080億円)計上した結果、純利益が前年同期比で17%落ち込んだ。サブプライム問題のきっかけをつくった米大手証券ベア・スターンズの同期決算の純利益は同61%のマイナスである。

 ベア・スターンズ傘下のファンド2社の危機が6月下旬に表面化し、ほぼ無価値となってしまったが、そこが保有していたCDO(債務担保証券)などの格付けは、ほとんどが損失の発生などほぼ考えられない「AAA」または「AA」だったのである。市場関係者によると、CDOやABS(資産担保証券)などの証券化商品の80%程度は「AAA」の格付けを取得しているとされる。他のファンドも今後危機に瀕しかねないことは容易に想像できる。

 金融機関は傘下に、「コンデュイット」や「SIV」(運用の受け皿ファンド)といった特別目的会社を持ち、そこがCP(コマーシャルペーパー)やABCP(資産担保コマーシャルペーパー)を発行して短期資金を調達。CDOなどへ投資し長期運用している。だがいま、CDOには「値がついていない」状態だ。したがって、CPやABCPの発行も滞り、金融市場はマヒ状態にある。

 米『ウォールストリート・ジャーナル』によると、シティグループは、SIV市場全体の25%にあたる1000億ドル(11兆5000億円)規模のSIVを保有。CP発行に利用するコンデュイットの資産規模は770億ドル(8兆8550億円)に達するという。もちろん、これらがすべて損失になるわけではないが、このような規模の大きさの前に、市場関係者の「疑心暗鬼」は解けない。

 そして、もし金融機関に危機が発生すれば、信用は一気に収縮し、実体経済にも大きな影響を及ぼすことは、バブル崩壊後の日本でも経験済みだ。9月7日発表の米国の8月の雇用統計では、非農業部門の就業者数が前月比4000人減と4年ぶりのマイナスとなった。三菱UFJ証券の嶋中雄二・景気循環研究所長は「米国経済は7〜9月期にマイナス成長に陥った可能性がある」と見る。

 何よりも今後の米国経済とドルの行方を占ううえで重要なのは、米国へ資金がきちんと入っていくかどうかだ。8000億ドルの経常赤字を抱える米国は、外国からの資金流入なしに経済を支えることはできない。

 しかし、サブプライム問題が広く認識された7月、米国への資金流入は大幅に減少した。

(表1)

6月まで株式と債券を合わせ月に1000億ドル程度と順調に推移していた資金流入は7月、247億ドルと4分の1程度に激減した。景気を維持するためには利下げが必要だが、利下げをすれば資金流入が滞る。しかも、落ち着きを見せていたインフレも誘発しかねない。FRBは袋小路に追い込まれた。

 ドルは瞬間的に111円台を付け、その後115円台まで戻すという展開をたどっているが、吉川氏はこの現状を「いまは不気味なドルの安定状態。金利が下がるということが見えているのに、ドルは思ったほど下がっていない」と見る。その理由を、「ABCPなどの流動性がなく、売りたくても売れないので、結果的にドル売りにつながっていないからではないか。これらが多少流動性が出て市場で売れるようになると、ドル売りに傾く可能性がある」と分析する。

 今後、年末が近づくにつれ、金融機関も決算期を控えて、ファンドの“精査”が必要になる。「11月末ごろには、米国もクリスマスセールの状況が次第にはっきりし始める。そこで消費が振るわず、金融機関の危機も表面化すれば、一気にドルが下がる危険性が増す」と第一生命経済研究所の熊野英生・主席エコノミストは見る。

(2007.10.2)


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