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【米経済コラム】金持ちから貧しき人へ直接訴えたいこと−M・ルイス
9月12日(ブルームバーグ):この市場混乱時にトレーディングから離れていては高くつくので、以下の話題についてはブルームバーグ向けに先日書いたコラムで終わりにするつもりだった。
しかし、現実の米ヘッドファンド運用担当者がサブプライム危機から学んだ教訓−貧しい人にカネを貸してはならない−について、多くの人が理解してくれたようなので、私が厳しい経験から学んだ教訓をもう少し分かち合うことにした。今回は、強いいら立ちを覚えた米議会での経験によるものだ。
ここ数週間、私はヘッジファンドやプライベートエクイティ(PE、未公開株)投資会社に増税しようとする上院議員らに対して、それが世界経済に対しても経済的な正当性からみてもいかに悪い結果につながるか説明しようとして無駄に時間を費やしてしまった。私は今回のコラムを、貧しい人に直接訴えることを期待して書くことにする(貧しい人とは、米証券取引委員会(SEC)の規定でヘッジファンドに投資する最低基準を満たせない人のことだ)。私が議員に言いたいことを、彼らが理解できる言葉で伝えてくれると期待している。以下に主張を掲げる。
1)民主主義改正の時機
成人1人に1票という制度はもはや時代にそぐわない。成功した人間と労働者階級のそれぞれの利害がほぼ同じ時代ならいいが、米国には本当に社会のトップにふさわしい金持ちという新しい階層ができた。そして怒れる多くの人々が金持ちの足を引っ張ろうとしている。適切に機能する経済なら、金持ちには普通の人々よりも多くの政治権限を与えるべきだ。リストラでレイオフ(一時解雇)されるような労働者と同じ1票しか持てないとはおかしい。労働者に平等な機会を与えても、特に金融市場にとっては逆効果なだけだ。彼らは新しい取引を駄目にするためなら何でも行い、古い仕事にしがみつき、惰性を好む。
2)PE投資は雇用創出につながる
高い教育を受けた議員でさえ理解できないようだが、PE投資会社は大金を借りて買収した企業の余分なところをそぎ落とすことで、これらの企業で働く人々にもっと効率的な仕事を見つけるチャンスを与えている。
3)PE投資会社やヘッジファンドのトップの行動は「行き過ぎ」か?
多くの人々はそのように考えているようだが、これは明らかにマスコミに責任がある。一部議員はブラックストーン・グループの共同創業者スティーブ・シュワルツマン氏が60歳の誕生日パーティー開催で、武器庫だった大会場を借り、壁に自らの巨大ポートレートを掛け、5000人を招待し、数百万ドル支払って歌手のロッド・スチュワートを迎えたと何度も引き合いに出す。
私が政界に向かって主張したいのは以下の点だ。スティーブのような能力を持った人間がリラックスするのは本当に難しいのだ。彼が武器庫だった場所でパーティーを開いたのは偶然ではないだろう。同氏がウォールストリート・ジャーナル紙の記者に対して話したように、スティーブにとっては、すべての取引が生きるか死ぬかだ。偉大なる男には壮大な気分転換が必要なのに、一晩、目立ったからと言って、議会は新たに税金を課そうとする。
4)働く金持ちには既に重税がかけられている
真実はしばしば普通の人には理解し難いものだ。金持ちは余ったカネの使い道を知っているが、貧しい人は必需品の購入に浪費するだけだ。だからこそ、資本主義は機能している。つまり、使い方を知らない人には渡らずに、カネはそれを増やすことを知る人のところに回る。だから、金持ちがカネを分け与えるというのは意味を成さない。最後の最後までカネをできるだけ積み上げてから、さらに金持ちの人にそれを寄与するとの資産家ウォーレン・バフェット氏の考え方は正しい。
5)ダーウィンの進化論
ウォール街を見ていると進化論のようだ。最も適応した者が生き残るが、これが誰かは分かっており、重要なのは彼らが生き残れるようにすることだ。それなのに、この国の民主主義はなぜかそう考えられないようだ。むしろその逆で、億万長者を見つけるなり、その立場を弱めようと、普通の人や彼らが選んだ議員らが計画する。
ヘッジファンド運用担当トップ25人にメディケア(高齢者向け公的医療保険)税を課して、6万8000人以上の高齢者向け医療コストを負担させるようにしたらどうなるのだろうか。フロリダ州で数人の老人がいなくなっても州には何の問題もないが、米国には最も成功した資産家1人でさえ、その立場を弱くしてしまうような余裕はない。メディケア税を払うくらいならドバイに拠点を移すというPE投資会社も一部に出てきたし、恐らくそうするだろう。が、多くは私と同様に反撃に出るとみる。
昨年、私は成功報酬として5000万ドル(約79億9000万円)を手にし、その15%を税金にとられたが、頭にきたので、今年は7000万ドルを稼いだ。 750万ドル取られるなら、2000万ドル余分に稼ぐまでだ。
好きなだけ課税するがいい。われわれはそれ以上に稼いでみせる。(マイケル・ルイス)
(ルイス氏はブルームバーグ・ニュースのコラムニストです。このコラムの内容は同氏自身の見解です)
原題:A Wall Street Trader Learns Some Taxing Lessons: Michael Lewis (抜粋) {NXTW NSN JO8LU407NBB6
更新日時 : 2007/09/12 13:24 JST
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