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ヤマ場は9月、クレジット市場 米サブプライムの波紋 = NBonline
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投稿者 ダイナモ 日時 2007 年 9 月 05 日 22:57:27: mY9T/8MdR98ug

http://business.nikkeibp.co.jp/article/money/20070903/133882/

 米国のサブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅融資)の焦げ付きを発端としたクレジット市場の崩壊は、いまだにその全容を詳らかにされていない。当初は「軽い」と見られていたサブプライム問題はなぜ、世界の金融市場に影響を与えるまでの騒ぎに広がったのか。

 今年2月、英大手銀HSBCがサブプライムの貸し出しに関連して10億ドルの貸倒引当金を引き当てると発表したことでにわかに脚光を浴びたサブプライム問題は、「専門家」たちの間では楽観論が支配的だった。その最大の根拠は、サブプライム市場の規模が限定的であるという点にあった。

 確かにサブプライム住宅ローンが米住宅ローン市場全体に占める比率は12〜13%程度に過ぎないと言われている。また、住宅を担保とするローンである以上、貸付額がそっくりそのまま回収できないような事態は考えられない。どんなに返済が滞ったとしても、サブプライム全体の15〜20%以上の資産が毀損をすることはないというわけだ。

 だが、7月、米大手投資銀ベア・スターンズ傘下のヘッジファンド2社が、サブプライム投資で損失を計上した時、投資家から集められた約16億ドルの資金はほとんど返ってこなかった。それどころか、ベア・スターンズ本体は、ファンドから生じた損失の穴埋めのために、さらに16億ドルもの追加資金の投入を余儀なくされた。住宅ローン市場全体からすればわずか数%、サブプライムに限っても15〜20%以上の資産が毀損することはなかったはずが、なぜこのようなことが起こり得たのか。

レバレッジの魔力

  答えは、こうしたクレジット商品の特徴の1つである「レバレッジ」にある。

 レバレッジとは、一般に、投資家から集めた元手となる資金に加えて、銀行など金融機関から借り入れをすることで、元々の投資額に比して、より効率的な運用利回りの提供を可能にする仕組みを言う。例えば、5億ドルの資金で購入したサブプライム証券など資産担保証券(ABS)を、さらに担保として資金を借り入れ、その資金で別の資産担保証券などを購入、さらにそれを担保に…といった作業を繰り返すことで、資産を50億ドルにまで膨らませたファンドを想定してみよう。

 そうすることで保有資産全体が仮に10%の運用利回りを上げれば、5億ドルの利益、つまりこのファンドに投資した人にとっては、投資資産に対して100%に当たる運用益を獲得できることになる。しかし、逆に保有資産の価値が45億ドル(−10%)にまで減価すれば、このファンドの価値はゼロになってしまう。ベア・スターンズ傘下の2ヘッジファンドの場合、投資家から集めた資金の約16億ドルに対し、銀行などから借り入れていた資金は実に200億ドルにも上っていたという。

分散効果と優先劣後構造に対する過信

 また、クレジット商品の中には、銀行借り入れで資産を膨らめるような単純明快な方法以外にも、レバレッジを高める仕組みを持つものが多く存在した。その仕組みを支えたのが、こうした金融商品のもう1つの特徴である「優先劣後構造」とポートフォリオの「投資分散」にあった。

 そもそも証券化商品では、担保となる資産を裏づけに発行する証券を、リスクの異なるいくつかの層に切り分け、貸し倒れなどのリスクを一部の層に圧縮する手法が一般的に採用されていた。これを優先劣後構造という。

 例えばサブプライムローンを裏づけに発行された証券が、債務不履行により損失を計上したりした場合、その損失を真っ先に負担しなければならない底辺の部分は、その分、高い利回り(高レバレッジ)を提供されることになる。逆に、損失から最後まで守られる上澄みの部分は、相対的に低い利回りしか期待することはできないわけだ。

 1990年代後半から広く人気を博したCDO(債務担保証券)のようなクレジット商品の中には、その資産にサブプライムのほか、各種の資産担保証券をポートフォリオとして保有及び管理し、そのポートフォリオ全体を担保として発行された2次派生的な資産担保証券が存在する。こうして、裏づけとなる資産を分散投資することで、同質の資産を担保とした場合よりも、安定的で機動的な運用が可能になると期待された。発行される証券は、さらに、優先劣後構造をつけて切り分けられることになる。

 新しく組み上げられた2次派生的な資産担保証券は、極めて幅の広い内容の資産を裏づけに発行されるわけだが、その証券の大半は分散投資と優先劣後構造を通じて、非常に安全性が高いと見みなされていた。しかし、資産内容が複雑であることが、値洗いの煩雑さや流動性の欠如に直結する事実は、ほとんど顧みられることはなかった。

 今般の混乱を加速させた要因の1つに、予想以上に短期の証券として切り売りされていたという事実もあった。満期が来た時点で、現在価値も容易に確定できない資産を担保とした証券を、誰が再び購入するのだろうか。

金融商品の進化に対する慢心

 それでも、金融市場が「専門家」たちの想定する値動きの範囲内にとどまっていれば、投下資金が全額回収不能になってしまったり、何十億ドルという資金を傘下のファンド救済のために親会社が投入したりするような事態には至らなかったはずだ。しかし、現実に、事態は想定をはるかに超えた、尋常ならざる状態にまで悪化してしまったのだ。

 下の図はクレジットリスクを測るものさしの1つであるCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)という金融商品の値動きだが、ご覧の通り、200ポイント前後で安定して推移していたそのスプレッドは、7月のベア・スターンズ傘下のヘッジファンド破綻をきっかけに、一気に450ポイント超と2倍強も拡大してしまった。CDSは貸し倒れリスクを回避するための保険として開発された商品であり、そのスプレッドは、いわば貸し倒れから生じる損失を補うための保険のプレミアムと言える。

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 今回のように格付けの異なる債券などの利回り格差が、2倍超どころかそれ以上に広がる事態は歴史をひもとけば幾度も経験してきている。1998年のロシア危機に端を発した米LTCM(ロング・ターム・キャピタル・マネージメント)の破綻や、2001年の米エンロンや米ワールドコム事件の発生時も最近と同様の事態が起きている。

 今回の問題で注目すべきは、スプレッドの拡大が、企業倒産のような実態的な危機から生まれたものではなく、証券化商品や再証券化といったような新しい金融技術を通じて、一見何の関係もない米国や欧州の「企業信用」の価格であるCDSのスプレッド拡大という形で表れてしまった点だ。

 CDSのような商品は、そもそも過去から何度も経験してきたリスクをヘッジするために開発されてきたはずだ。しかし、今般の混乱では、むしろ、CDSのスプレッド拡大が、混乱に拍車を掛ける結果を引き起こしてしまった。我々は過去の失敗から、一体、何を学んできたと言えるのだろうか。

 このような事態を招いた責任は、金融新商品を生み出し、販売してきた運用主体にだけあるのではない。分不相応な格付けを与えてきた格付け会社、運用主体に対し無節操とも言える融資を重ねてきた金融機関にも責任はある。さらに過剰流動性にあぐらをかき、その危険性を十分に理解しないまま商品を購入してきた投資家、クレジット市場の変化に全く対応できなかった金融監督当局などが、その責任を分け合わなければならないだろう。

隠れ損失は残っているはず

 金融市場の今後だが、筆者には、クレジット市場の混乱がこれで収束したとは考えられない。この間、クレジット関係の投資で損失を計上してきたとの報は、ヘッジファンドなどの運用主体や、運用主体に対し融資をしてきた金融機関が大半で、年金、保険といった機関投資家や事業会社などからはほとんど聞かれていないからだ。これは、損失を確定したくても、評価額すら容易に定まらないというクレジット市場の流動性の低さによるところが大きい。売ろうにも買い手が見つからないのだ。

 8月末には大部分の投資家が保有資産の値洗いを余儀なくされたはずだし、遅くとも9月四半期末には、7〜9月期の業績発表のために、保有資産の正当な評価額を白日の下にさらす必要に迫られよう。不幸中の幸いと言うべきか、現在では、金融市場に携わる良識ある人たちのほとんどが、「9月中にもうひと波乱起こり得る」との認識を共有している。波乱を警戒しているということは、少なくともある程度は、その被害に対する備えを進めているものと信じたい。

最悪のシナリオは米経常赤字の急激な縮小

 出すべき膿は出し切ってしまわなければならないが、疑心暗鬼に陥っている今の状態よりも、金融市場は余程落ち着きを取り戻すだろう。パニックさえ過ぎれば、好調な企業業績を背景に、損失は吸収できる規模に収まるものと見込んでいる。

 クレジット市場に以前のように投資資金が戻ることは、少なくとも向こう数年はないだろうが、世界にはびこる過剰流動性が、今般の混乱で霧消雲散したわけではない。ほとぼりが冷めれば、世界の投資資産は、また、新たな投資対象を求め、それが新たなバブルを生み出すこともあり得るだろう。

 最悪のシナリオは、過剰流動性が短い期間に収縮するような展開で、逆説的ながら、それは取りも直さず、過剰流動性の最大の供給源である米経常赤字の急激な縮小を意味する。可能性は極めて低いが、恐らくはドルの大暴落を伴うそのような事態を、現時点では想像すらしたくない。


本多 秀俊(ほんだ・ひでとし)
みずほコーポレート銀行欧州資金室フォレックスグループ為替ストラテジスト
1964年静岡県浜松市生まれ。1989年東京大学教育学部卒業。1989年、ミッドランド銀行(現HSBC銀行)東京支店入行。1992年フランス・インドスエズ銀行(現カリヨン銀行)東京支店入行。1996年同行ロンドン支店配属。2000年、日本興業銀行(現みずほコーポレート銀行)ロンドン支店入行。為替スポットディーラー、通貨オプションディーラー、セールスディーラーなど一貫して為替市場に従事、2003年から現職。

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