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マーケットの危機は去ったのか 米国の公定歩合引き下げだけでは「力不足」 = FINANCIAL TIMES
http://www.asyura2.com/07/hasan52/msg/163.html
投稿者 ダイナモ 日時 2007 年 8 月 27 日 09:13:09: mY9T/8MdR98ug

http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20070824/133051/

 米連邦準備理事会(FRB)は確かに期待通りの力を発揮した。ほんの数日間で数十億ドルの資金を市場に注入したうえ、進退窮まったとはいえ、必ずしも手を差し伸べるには値しない金融界の要望に折れ、8月17日に公定歩合を引き下げたのだ。1週間大揺れし、時にパニックに陥った株式市場は、これで持ち直した。だが、信用市場から株式、為替市場へと波及したこの危機は、果たしてこれで終息を迎えるのだろうか。

果たしてこれで終息を迎えるのか

 楽観派は、世界の証券市場は今、歴史的な尺度で測ると妥当な水準になったと主張する。彼ら曰く、企業収益は前代未聞の好調さで、世界の経済成長は力強い。米ゴールドマン・サックスの元会長兼CEO(最高経営責任者)で、現在財務長官を務めるハンク・ポールソン氏によれば、ここ数週間の市場の動揺は「成長率に水を差すことになろう」。だが、同氏にしても、これが景気後退につながるとは考えていない。

 今回の動揺の震源地であるサブプライムローン(信用力の低い個人向けの住宅融資)市場については、規模が小さく、金融システムに深刻な打撃を与えるには至らないというのが楽観派の見方だ。一方、信用スプレッドも拡大したとはいえ、金融システムの崩壊を招くほどのものではない。

 こうした楽観論の欠陥は、今回の危機がサブプライムローン市場に限定されていないというところにある。金融工学の革新のおかげで、信用の質に構造的な劣化が起きた。昨今の銀行は日常的に債権を売却し、その債権はまとめられて複雑な金融商品に姿を変える。あらゆる投資対象の利回りが極めて低い時代にあって、リターンを求める投資家の要求を叶えようと生み出されたものだ。

ローン債権の値づけは正しいのか

 ところが、こうして債権を即座にバランスシートから外せるようになると、銀行は借り手の信用力を気にする必要を感じなくなる。さらに悪いことに、これらの革新的な金融商品――債務担保証券(CDO)や貸付債権担保債務証書(CLO)など――は仕組みが複雑で、評価が困難なうえ、流動性にも乏しい代物だ。

 しかもレバレッジをかなり利かせている。つまり、投資額は僅少で済むが、市場の変動の際のリスクは非常に高いものになるのだ。そして投資家は、内在的なリスクを評価するのに、信用格付け機関に依存しきっていた。

 これらの潜在的な問題が派手に表面化したのは7月、投資銀行ベアー・スターンズ傘下の2つのヘッジファンドがサブプライムローン関連で莫大な損失を出したことが明らかになった時である。これがきっかけで、レバレッジを駆使したほかの投資ファンドが抱える住宅ローン債権も、値づけが誤っているのではないかという疑念が生じた。

 債券運用会社ピムコのビル・グロス氏も最近指摘したように、投資家らは突如、ムーディーズ・インベスターズ・サービスやスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)のサブプライムローン債権の格付けがこれほどお粗末だったのなら、ほかの革新的な金融商品に同じことが繰り返されないという確証はないという事実に気づいたのだ。

未曾有の「レバレッジ解消の動き」

 8月は投資家心理が一気に冷え込み、信用市場全体でリスクを取る意欲が後退。銀行同士が短期資金を融通し合うのに尻込みするようになると、短期金融市場の機能不全に対処するためにFRBの介入が必要となった。短期金融市場以外でも、貸し手が見つからない状態だ。信用スプレッドの比較的穏やかな拡大は、したがって、市場の状況について誤った認識を与えるものだ。

 危機はまだ終息していないと考えられる一番の根拠は、未曽有の信用バブルの後を受け、やはり未曽有のレバレッジ解消の動きが金融界で進行中だからである。市場が上昇の際にオーバーシュート(過剰反応)した時は、下落する際もオーバーシュートするのが一般的だ。

 そして、斬新な金融商品の多くは、タイムリーに時価で「値洗い」をせずとも済むため、悪材料となるニュースは今後も散発的に出てくる可能性が高い。最近の市場の振れはまた、自ら価値の破壊を惹起している。広範に用いられているが欠陥を抱えたリスク管理モデルのおかげで、強制的な持ち株売却を余儀なくされ、市場参加者が全員、同時にリスクを減らそうとするからだ。

無関係ではいられない実体経済

 実体経済にとって、これらすべては無関係では済まない。経済が順調でも、それが不健全な資金供給に支えられている場合は長続きしない。1997〜1998年に起きたアジアの金融危機がそれを如実に示している。それに各国経済は今、かつてないほど市場と密接に結びついている。とりわけ住宅と株式の所有比率の高い英語圏では、その傾向が著しい。

 問題は、株式やその他の資産で実際に損失を出し、返済能力の危機に陥った場合、借り過ぎた家計が弱気になり、貯蓄に向かうことである。そうした状況になると、金利の引き下げは、経済の押し上げに力を発揮できない可能性がある。

 また、企業のバランスシートは良好とはいえ、年金基金の積み立て不足を巡る問題は依然消えない。というのは、金利引き下げが年金債務に適用される割引率の引き下げにつながるかもしれず、それが年金債務の増大を引き起こすからだ。

確かなのは、公定歩合の引き下げ「以上」の対策

 株価の下落はさらにこの問題を悪化させる。資金調達が難しい中で、経営者の心理を鼓舞するものではない。株価の下落が経営幹部のストックオプション(株式購入権)や長期インセンティブプランに良い影響を与えないのは言うまでもない。

 こうしたことが米国の景気後退につながるかどうか、さらには世界経済に悪影響をもたらすかどうかは、今のところ明確なことは言えない。しかし、金融界のこの危うい状態を支えるには、8月17日の公定歩合の引き下げ以上のことが必要なのは確かだ。

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