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http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20070817/132304/
Ron Grover (BusinessWeek誌、ロサンゼルス支局マネジャー)
米国時間2007年7月31日更新 「Dear Rupert...」
すべての始まりは3月29日、米ダウ・ジョーンズ(DJ)のリチャード・ザニーノCEO(最高経営責任者)との密かな朝食会だった。
それから4カ月、米ニューズ・コーポレーション(NWS)のルパート・マードック会長は、124年の歴史を持つダウ・ジョーンズ買収にこぎ着けたようである。創業家バンクロフト一族の反対派を押し切り、米ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙の編集権の独立性確保を巡って譲歩もした。買収提示額の50億ドルは、対抗馬と見られた米ゼネラル・エレクトリック(GE)、英ピアソン(PSO)、そして米マイクロソフト(MSFT)にとってすら高すぎる買い値だった。
この戦いに勝つまでに、マードック氏はずいぶんと批判された。WSJ紙の1面記事では、同氏が世界に広がる帝国の事業に有利になるよう日頃から傘下の新聞の経営に介入していると書かれた。2000年には、夫人が公私にわたる野心を、やはり1面で詳細に書き立てられた。「新聞報道に抗議したのはあの時だけ」と本人が振り返るそのWSJ紙を、マードック氏は手中に収めたのである。
では、仮にあなたがルパート・マードックで、世界で最も名高い新聞の1つを買収したばかりだとしたらどうするだろうか。マードック氏はWSJ紙の編集方針を変えるつもりはないと言ってきた。現発行人のゴードン・クロビッツ氏については「有能な人物だと聞いている」と語っている。
とはいえ、マードック氏は細心かつ果敢な経営スタイルで知られる人物である。ダウ・ジョーンズの昨年の利益は2003年並みにとどまることを考えると、このオーストラリア出身のメディア王が既に戦略の青写真を描いているのは明らかだ。あえて、いくつかの補足提案をすることにしよう。
ルパート・マードックへの手紙
このたびは、おめでとう。ジャーナリズムの世界で屈指の有名ブランドを手に入れたそうじゃないか。知っての通り、この会社は今のままではだめだ。どこから手をつけるべきか分からないほど、ひどい状態だ。
旗艦媒体であるWSJ紙の発行部数は長年、下降の一途をたどり、今年に入ってからは3%も減っている。広告収入も落ち込みが続いて前年比で4.2%の減少だ。その一方で、オンライン事業は軒並み絶好調だ。WSJドットコムとバロンズ・オンラインの利用はいずれも2ケタのハイペースで増加している。
この会社には“ルパート・マードック流”の改革が必要だ。まずは簡単なところから始めようか。米国内に16カ所ある印刷工場のいくつかを売却して、また借り直すのはどうだろう。既にサンフランシスコ郊外でやっているように。そして、印刷業務の一部をニューズ傘下の米ニューヨーク・ポスト紙と統合する。何なら4年前にニューヨーク市ブロンクス地区に建設したばかりの最新鋭の印刷工場を両紙で兼用してもいいだろう。
7400人の社員──。確かに解雇には痛みが伴うことは分かっている。解雇はしないとあなたが約束したことも知っているが…。
WSJ紙についてはどこから手をつけようか。週末版を始めたことで総支出は年間4000万ドルも増えたのに、広告売り上げは過去5年間ほぼ横ばい。今年は2%近くの減少だ。ルパート、雇用確保を約束したとはいっても、今こそ人員整理が必要なんだよ。昨年の4%の削減だけではとてもじゃないが足りないぞ。
オンライン事業は金鉱脈
いらないものも結構ある。米ハースト・コーポレーションと折半で出資しているスマートマネーだが、あれは手放そう。購読者が80万人では大した儲けにはならない。求人求職サイト向けオンラインデータサービスのアディコもそうだ。世界に冠たる米モンスター・ドットコム(MNST)と渡り合うには規模が小さすぎる。
ロシアの経済紙ベドモスチに至っては論外だ。広告売り上げが6%も減っている地方紙の数々には良い売却先を探してやるといい。マサチューセッツ州ナンタケット島やオレゴン州南部の小さな町で地方紙23紙を発行する事業なんて、持っていても頭痛の種になるだけじゃないか。
そろそろ、面白い話題に移ろうか。ダウ・ジョーンズのオンライン事業が金鉱脈だってことは知ってるだろう。WSJ紙のオンライン購読者93万1000人、バロンズのオンライン購読者8万8000人は米国屈指のカネのなる木だ。なにしろ高所得で熱心な読者ばかりなんだから、もっと広告を売らなきゃ。オンライン購読料を引き下げるか、いっそ無料にして、段階的な料金体系で専門サービスを提供すればいい。オンライン読者はまだまだ増えるぞ。
しかし、WSJ紙の購読者を増やすのはなかなか難しい。もっと勢いのある記事を増やすか。まあ、それもあるな。いや、それより昔ながらの販売促進に力を入れるべきじゃないだろうか。WSJ紙はマーケティングにほとんどカネをかけてこなかった。そこを強化しよう。フォックス・ニュースでWSJ紙を宣伝すればいい。WSJ紙がCNBCに記者を出演させる長期契約を結んでいるのは知っているが、それくらいは構わないだろう。
そうだ、フォックスでナショナル・フットボールリーグ(NFL)を観ている視聴者を狙おう。彼らが投資している株式ポートフォリオをチェックできるように割引料金で売ったらいい。レジー・ブッシュ(NFLのスター選手)の個人成績を調べるような感じでさ。
オンラインでデジタル配信されている株式相場表やティッカーサービス、ニュース記事の利用をどんどん増やそう。携帯電話で外出している時にも情報を得られるなんて便利じゃないか。フォックススタジオも携帯電話向けの映画制作に熱心に取り組んでいることだし。
SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)のマイスペースもそうだ。今や米国人口の半分ぐらいまで普及しているというじゃないか。利用者の平均年齢が40歳に近づくということは、株式情報やニュース、WSJ紙コラムニストのウォルト・モスバーグによる情報端末のレビュー記事なんかにもぴったりだってことだ。
英フィナンシャル・タイムズも買っては?
そして何よりも、映像事業は間違いなく伸びる。10月にフォックス・ビジネスチャンネルを始める時に米国ではダウ・ジョーンズのコンテンツを利用できないとしても、世界は広い。“WSJチャンネル”をアジアで放映してはどうだろう。あなたの香港スターテレビは53カ国に3億人以上の視聴者を抱えているじゃないか。東欧もいい。最近テレビ局を買収しているんだし。イタリアと英国では衛星放送で放映してもいい。
例の厄介なCNBCとの契約だって、弁護士が何とかしてくれるかもしれない。今回の件で危機感を抱いたCNBCが英フィナンシャル・タイムズ(FT)とオンラインコンテンツの共有について交渉している今こそがチャンスだ。
そう言えば、FTの買収を真面目に検討したことはあるかな。FTはぜひとも買うべきだ。親会社のピアソンは今、あなたのWSJ買収がFTを脅かすのではないかと心配する大株主から突き上げを食らっている。そして偶然にもFTの中心読者はその大半が欧州にいる。まさにWSJ紙が購読者を増やしたい地域じゃないか。
ルパート、朝食会の席をもう1回設けるんだ。いくらぐらいだろうか。まあ、20億ドルといったところか。そのくらいのカネ、何でもないじゃないか。
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