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サブプライム、責任転嫁合戦 自分の責任は棚に上げ非難の応酬、訴訟も勃発 = BusinessWeek
http://www.asyura2.com/07/hasan51/msg/750.html
投稿者 ダイナモ 日時 2007 年 8 月 20 日 23:53:30: mY9T/8MdR98ug
 

http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20070816/132283/

Roben Farzad (BusinessWeek誌、ウォール街・市場担当編集者、ニューヨーク)
米国時間2007年7月27日更新 「Let the Blame Begin」

 サブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅融資)問題は、いったい誰の責任なのか──。

 リスクの高い住宅ローンを消費者に提供してきたローン会社は、「我々のせいではない」と言うだろう。そして、サブプライム債を買い取り、形を変えて投資家に売ったウォール街も、債券の安全度に下駄を履かせた格付け機関も、その債券を買い漁ったヘッジファンドも同様だ。非難の応酬が続く中、関係者は自分たちの責任を否定し、ほかの誰かに転嫁することに躍起になっている。

債券を発行する側と“馴れ合った”格付け機関

 論争の的になっているのは、米大手債券格付け機関であるムーディーズ・インベスターズ・サービス(MCO)、フィッチ・レーティングス、そしてスタンダード&プアーズ(S&P:ビジネスウィーク同様、ザ・マグロウヒル・カンパニーズの事業部門)だ。これらの機関は債券の発行会社から格付け手数料を得る。投資家は格付けを判断材料として債券に投資するかどうかを決める。

 2大格付け機関であるS&Pとムーディーズは、ここ数年、債務担保証券(CDO:サブプライムを裏づけにした低格付け債権などを複数集めて証券化した商品)といった複合的債券の格付けでかなりの利益を得てきた。こうした金融商品は、多数の住宅ローンやそのほかの債務の担保とし、同等格付けの社債より高い利回りを得られるように設計されている。

 ムーディーズとS&Pは、CDOの格付けで得た手数料収入を区分していないが、CDOの販売額は2001年から5倍に跳ね上がっている。こうした格付け機関のお墨付きがなければ、年金基金や大学基金のような大手投資家の多くはCDOを買うことができなかった。実態として、市場メカニズムは機能していなかったのだ。

 だが最近、粗悪なローンを担保にしたCDOが急落した。担保にした住宅ローンのデフォルト(債務不履行)が増加したためだ。7月にムーディーズとS&Pは、サブプライム債を担保とする証券について、当初発行額でそれぞれ52億ドル、73億ドル相当の格付けを見直すと発表し、結局、大半を格下げした。だが、対象は過去1年半に発行された証券の3%にも満たないため、格下げの規模が小さすぎるうえにタイミングが遅すぎると批判を浴びている。しかも、格付け機関とCDO発行側との馴れ合いに問題の根があるとされ、現在、オハイオ州の司法長官が利益相反の可能性について調査中だ。

 ここに、格付け機関が抱える重大な問題が潜んでいる。すなわち、格付け機関は格付けを利用する投資家ではなく、格付けの対象である債券発行側から手数料収入を得ているという構造だ。彼らは最高格付けである“トリプルA”を獲得するための極意を債券発行体に伝授する一方で、格付けを決定する際にいわゆるデューデリジェンス(投資適正性の事前調査)をまともに行っていない。CDOを構成する個別のローンが投資適格水準にあるかどうかを検討しないで、もっぱら債券発行体が提供する情報に基づいて決定を下しているのだ。

 そうした暗黙の了解があれば、誰だって債券を発行し続ければ儲かると考えるに決まっている。クレジットサイツは対象企業から手数料を取らない独立系の債権調査会社である。同社のアナリスト、クリスチャン・ストラック氏は、CDOの発行体が提供する情報を額面どおりに受け取るのは間違いだと指摘する。「莫大な金額を投資するのだから、十分なデータを集めて商品を緻密に分析すべきだ。経験則は当てにならない」。ムーディーズやS&Pの格付けした債券の中には、トリプルAを付けるべきではないものや、格付け自体を辞退すべきだったものもあるという。

格付けは単なる意見、投資判断を委ねてはいけない

 ただし、両社とも利益相反疑惑を強く否定している。「信用リスクについて最も適切な客観的意見を提供することが当社の役割だ。格下げをためらうことなど決してない」と、ムーディーズのマネージング・ディレクターであるウォーレン・コーンフェルド氏は言う。

 ムーディーズとS&Pは、CDOを構成するすべてのローンを把握することは不可能だが、手続きについてはできるだけオープンにすると強調する。S&P広報担当者クリス・アトキンス氏は「債券の発行体と対話することで、当社の基準をよく理解してもらっている」と語り、ムーディーズのコーンフェルド氏も「我々は誰とでも意見を交換するし、手続きは透明だ」と反論する。もっと突き詰めると、CDOの格付けというものは合衆国憲法が保護している「表現の自由」に基づく意見の表明であり、投資判断を全面的に委ねるべきものではないというのだ。

 格下げが遅すぎたという批判に対しては、「債券価格は信用だけで決まるものではないので、格付けとは乖離する傾向がある」と、アトキンス氏は説明する。確かに、ここ数カ月の大騒ぎにもかかわらず、問題ありとされるCDOのほとんどは契約通りの金利をきっちり支払っている。価格が急落したのは、投機家が先行きの不透明さを恐れたからであり、発行体が破綻したからではない。

 「もっと多くの(CDOの)格下げがなかったことは驚きだと言われるが、何も分かっていない。当社は憶測に基づいて格付けの変更を行うようなことはしない」。ムーディーズのマネージング・ディレクター、クレア・ロビンソン氏は6月の投資家向け会議でそう発言している。

 純粋に信用力を基にして格付けがどれだけ正確だったかを検証しようとしたら、数カ月、いや何年もかかるだろう。「日々の取引の中身まで考慮しなくてはならないとしたら、格付けなんかできやしない」と、シカゴの投資会社ウィリアム・ブレア&カンパニーのアナリスト、ジョン・ネフ氏は語る。

混乱に拍車をかけたヘッジファンドは、ウォール街を批判

 集中砲火を浴びる第2グループは、短期売買を行うヘッジファンドである。住宅ブームの際に、最もリスクの高い不動産担保証券を買い集めた張本人である。「高給取りで頭脳明晰なヘッジファンドの資産運用責任者は、何か新しいものを買いたがっていた」と、ストラック氏は指摘する。サブプライムローンを間にはさんだCDOは、レバレッジをかけてでもぜひとも買いたいものだった。

 米大手証券ベア・スターンズ&カンパニー(BSC)が運用していた2つのヘッジファンドは、まさにその例である。今年7月、ポートフォリオが実質的に無価値になったことを投資家に伝えた。「100%の価値があると聞かされていたのに、翌日になって無価値になったと言われたらどうだろうか」と憤るのは、ヤコブ・ザマンスキー弁護士だ。ドットコム企業の株価暴落裁判の株主側代理人として名を上げたザマンスキー氏は、今、投資家代理人としてベア・スターンズを訴えるための準備中である。ベア・スターンズはコメントを拒否している。

 そのヘッジファンドは、昨年、資産担保証券の売買で270億ドル以上を稼ぎ出したウォール街を批判する。投資銀行は規制当局との係争に備えている。マサチューセッツ州は、ウォール街がサブプライムのローン会社に関する株式調査を適正に行っていたかについて取り調べに着手している。また、米フロリダ州セントピーターズバーグを拠点とする保険会社バンカーズ・ライフ・インシュアランスは、スイスの大手銀行クレディ・スイス・グループ(CS)を提訴した。不動産担保証券で130万ドルの損失を被ったのは、クレディ・スイスが格付けを低下させる恐れのある情報を隠蔽したからというのが、その理由である。「最終的には、ウォール街が責任を取るべきだ。こんなローンの手助けをしたのだから」と、ザマンスキー氏は言う。

ウォール街は、ローン会社を非難

 さて、そのウォール街が矛先を向けるのは、そもそも悪質なローンを提供した貸し手である。ドイツ銀行(DB)、UBS(UBS)、クレディ・スイスは、早期のデフォルト(債務不履行)が見込まれたローンを買い戻さなかったとして、住宅ローン会社を訴えている。

 さらにである。全米有色人地位向上協会(NAACP)は、アフリカ系アメリカ人に高金利のサブプライムローンを借りるよう仕向けたとして、十数社の金融機関を訴えた。「ローンを組む。そして、さらに多くの新しいローンを組む」。住宅ローン全体を破綻させないためにはそうするしかなかったと、ドレクセル大学のジョセフ・メーソン教授(財務専門)は指摘する。「ヘロイン中毒か、泳ぎ続けなければ死んでしまうサメみたいなものだ」。

 ザマンスキー氏は、住宅ローン詐欺師にだまされたと主張する住宅購入者の代理人として、裁判の陣頭指揮も執っている。彼の依頼人は、盲目の退役消防士、80代の老夫婦、ルーパス(自己免疫疾患の一種)持ちの老人などだ。「ローン会社や仲介業者の詐欺行為により、こういった人々が自分の家から追い出されてしまう」。規制当局に対してザマンスキー氏は、「居眠り運転か、同時多発テロ以前のCIA(米中央情報局)みたいなものだ」と憤りを隠さない。

 最後は、ローン会社が「住宅オーナーはリスクを抱えすぎた」と非難する番だろうか。もちろん、そういうわけにはいかない。「それは極めて不当な批判である。しかし、この非難合戦の発端は、元手が少ないのに金を借り、しかも高価で、大きい家を、すぐ手に入れようとしたことだった」とメーソン教授。「要するに、みんな、欲を張りすぎたのだ」──。

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