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2007年08月19日
経済の話。市場下落がもたらすもの
昨今の相場下落で、俄かにまた議論の俎上に上り始めた年金基金の運用実績。参院選の前はあれほど騒いでいた年金問題も、近頃では影を潜めていましたが、またしても議論が紛糾するかもしれません。一つには社会保険庁が今月10日に発表した、保険料の納付率があります。
平成18年度の納付率が66.3%となり、前年度と較べて0.8%の下落となりました。最終目標といわれていた19年度の80%も達成の見込みはなく、恐らく国民皆年金の思想、その前提が崩れるのはかなり前倒しになると見られます。国民はすでに年金に対して『不安』ではなく、『不信』に陥っていますし、公的機関の運用そのものに、疑惑の目を向けているのです。
市場が調整すれば、その他の材料もあります。政府系金融機関が今年から始めている、ITバブル崩壊後に市場から買い取った株の市場での売却、日銀もこのタイミングで売却を示唆していますが、その時に試算された売却益も、今回の市場の調整でその試算が大幅に狂う可能性もあります。今まで、市場で売却しても益が出るとされていましたが、調整幅次第では損となる可能性も出てきました。
今回の市場の調整とは、更に重大な点があると思います。それは買収防衛策で企業同士が株式の持合を進めていることです。実は今まで、株式の評価損はさほど大きな問題とはなってきませんでした。それは株とはいずれ戻るもの、一時的な下落を評価損として組み込まなくとも、決算を通すことが出来たからです。しかし昨今の会計検査の厳格化で、今はそれも出来難くなりました。今後調整が長引けば、企業は保有株式の評価損という、かつて聞いた言葉を再び耳にすることになるのです。
今回の下落は、今までの経済の様々な矛盾を暴き出すと思います。米国が公定歩合のみを引き下げましたが、形骸化した公定歩合を調整し、政策金利を動かさなかったのは、ドル急落を引き起こして新興国が保有する外貨準備として積み上げられた、米国債の売りによる市場の混乱を防ぎたかった、そうした思惑もあるのでしょう。8000億ドルを越える経常赤字を垂れ流し続けた米国、その分を投資に回して好転していた時と、循環がきかなくなった社会は全く様相が異なるのです。
米国の信用市場が一体、いつ頃正常化するのかが問題ですが、公定歩合の引き下げは最初だけのアナウンス効果で、継続した影響の行使は難しいでしょう。米国で利下げの期待が強いのは、ヘッジファンドなどが規制の網に引っ掛ることを恐れ、利下げという大枠の市場原理を導入させることで、沈静化させて欲しいという切望です。しかし市場の監督者であるFRBは、株式市場だけではなく米国経済全体を支えなければならない、使命を帯びています。その時どういった手を打つのか、だからこそ私は米国の次の手に、注目しているのです。
http://blog.livedoor.jp/analyst_zaiya777/