★阿修羅♪ > 国家破産51 > 730.html ★阿修羅♪ |
Tweet |
第14回 「信用収縮」は経済のブラックホール(やきもので知る経済学)
経済評論家 豊住紘一 とよすみ・こういち
前回は、銀行がおこなう「信用創造」のメカニズムについて説明しました。
信用創造は、経済活動に欠かせないマネーをふんだんに提供し、成長のためのテコとなってきたのです。しかし、銀行が貸出をしなければ、このメカニズムは働きません。
ご存じのように、いま銀行はなかなか貸出に応じてくれません(いわゆる「貸し渋り」)。それどころか、いろいろ理由をつけては、すでに貸出した資金を回収しようとします(「貸し剥がし」)。
こうなると借り手は返済に追われ、おカネは銀行に向かって逆流するようになります。
前回にもお話したように、銀行による融資は、契約書にもとづいて、借り手の預金通帳に金額を書きこむだけでOKです。いわば、銀行は手品のように、おカネをつくることができるのです。
けれども、企業や個人が返済するおカネはそうではありません。これは、実業で汗水たらして稼いだおカネです。その大事なおカネが銀行に逆流して、銀行が新たな貸出をしないかぎり、そこで「消えて」しまうのです(その結果として、銀行のバランスシートは改善されますが)。
信用創造とは逆の、このマネーの流れを「信用収縮」といいます。
信用収縮は、銀行の不良債権が増えてくると、起こります。危機を感じた銀行が、身をまもるために貸し渋りをするようになるからです。また、デフレと信用収縮は深い関係があります。デフレ下では、収益が減るうえに、債務(借金)の負担が重くなるので、企業は返済にはげむようになるからです。
バブル崩壊後の日本は累計で130兆円を超える財政支出をおこないました。たいへんな金額ですが、このほとんどが、不良債権処理と過剰債務の返済(つまり信用収縮)に消えてしまいました。
信用収縮は、いったん始まると、ブラックホールのように、おカネをのみこんでいく、恐ろしいものなのです。
豊住紘一(とよすみ・こういち)
1940年(昭和15年)生まれ。東京大学経済学部経済学科卒。三共株式会社を経て1970年、読売新聞社入社。出版局週刊読売編集部、図書編集部勤務。当時の著書に「昭和日本軍」(読売新聞社刊)、「気になるクルマの採点評」(二見書房刊那須毅のペンネームによる)。訳書に「理想のテニス」(日刊スポーツ出版社刊)などがある。1990年、読売新聞社退社。投資研究会を主催するかたわら、ラジオたんぱ、「東京スポーツ新聞」紙上で経済評論を展開。「ザ・株式オプション」(ラジオたんぱグループNSB通信社刊)をはじめ、出演ビデオ多数。現在はラジオたんぱ株式カセットや講演などで活躍中。
http://www.arslonga.jp/monthly/keizai/keizai014.html