★阿修羅♪ > 国家破産51 > 632.html ★阿修羅♪ |
Tweet |
経済成長は格差を拡げる?
2007年08月09日
ちょうど1年前の8月は、総理総裁を目指す安倍晋三氏が大人気でした。変われば変わるもので、わずか1年後の今、当初は70%を超えていた内閣支持率が、「神の国」発言の森内閣以来の低率(20%台)に落ち込んだと報じられています。この振れ方はちょっと極端な気もしますが、まあ、それほどにお粗末だったということでしょう。
それはさておき、小泉政権時代から、「農奴」ならぬ「労奴」の国にまっしぐらに進んでいるという印象がありました。この8月3日公表の『労働経済白書』は、国の機関自らそれを認めたようです。02年頃から第二次大戦後最長の景気の回復が続いているとのことですが、非正規雇用の増加、労働組合の衰退などが原因で労働者への報酬はむしろ減少(マイナス3.8%)し、長時間労働が増え、過労による労災認定は過去最高。この間、企業の経常利益は1.8倍、役員報酬は2.7倍、株主配当は2.8倍にそれぞれ増えているといいます。景気が回復し、経済が成長し、企業業績が好転すれば、労働者の賃金も増えると散々言われていたのは、何だったのでしょうか。景気回復・成長はむしろ格差を拡げているように思われてなりません。
為政者(政府・与党)や産業界(経団連など)のリーダーたちが、以前からそういう数値や傾向を知らなかったはずはありません。であるのに、定率減税だけをさっさとやめ、同じ理由(景気の刺激)で同時に実施した法人税率引下げ、所得税最高税率引き下げはそのまま放置し、なおかつ、証券投資税制の優遇を延長し、法人の負担を一層軽減したのが、今年度の税制改正でした。また、さらなる労働強化に繋がる可能性のあった「ホワイトカラー・エグゼンプション」も危うく制度化されるところでした。一方で「再チャレンジ」がどうこうなどと言いながらです。
参院選が仮に与党の勝利に終わっていれば、法人税率をさらに引き下げ、消費税率を引き上げ、「ホワイトカラー・エグゼンプション」がむし返されていたことでしょう。そういう意味では、景気回復を実感できない人々にとっては、参院選の結果は束の間の時間稼ぎになりました。ただし、参院選に大勝した民主党からも、まだこれらの点についての言及はほとんどありません。「生活第一」とのキャッチフレーズが、単なるスローガンで終わってしまうことのないよう、粘り強く監視し続けたいものです。
余談ながら、新聞によって『労働経済白書』公表の扱いが大きく異なるのが気になります。とりわけ、日本経済新聞の扱いは小さかったような・・・
生活設計塾クルー 野田 眞
「日経マネーDIGITAL」FP快刀乱麻より (c)日経ホーム出版社 日経マネー編集部