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http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20070802/131543/?P=1
Stanley Reed (BusinessWeek誌、ロンドン支局長)
米国時間2007年7月20日更新 「Oil: OPEC in Charge, $90 on the Way?」
この数カ月、原油市場は激しく動いた。2007年初めに1バレル60ドルを割り込んだ原油相場はその後大きく戻し、米国産標準油種(WTI=ウエスト・テキサス・インターミディエート)は現在1バレル76ドル前後。昨年8月以来の最高値で取引されている。
さらに驚くべきは、比較的重質で低品質の原油を対象にしたOPEC(石油輸出国機構)バスケット価格が7月19日に、1バレル73.23ドルという史上最高値をつけたことだ。OPECバスケットは通常、北海ブレントやWTIといった欧米のマーカー原油よりかなり割安に取引されるが、米国や新興市場の旺盛な需要が消費を押し上げたことによって価格差が縮小した。
需給バランスが崩れ、原油価格は高騰へ?
市場心理は比較的短い間にほぼ180度転換した。昨年秋時点では、需要の伸びの鈍化とともに、OPEC非加盟国による供給過剰が懸念されていた。しかも、OPECは西欧諸国の備蓄タンクを十分満たすだけの原油を生産する意欲があるかに見えた。
ところが数カ月後、そうした読みがすべて間違いだったことが明らかになり、商品トレーダーは原油先物の買いポジションを記録的な水準まで膨らませた。期待されていたOPEC非加盟国からの大量供給は、プロジェクトの遅延や減産、油田の老朽化に伴う生産量の急減により実現しそうもない(BusinessWeek.comの記事を参照:2007年6月28日「The Problem's Not Peak Oil, It’s Politics」)。
英投資銀行バークレイズ・キャピタルのアナリストであるポール・ホーンセル氏とケビン・ノリシュ氏は、OPEC非加盟国の新規供給量を2007年はせいぜい日量50万バレル程度、2008年にいたってはゼロと見積もっている。
一方、需要は堅調な伸びが見込まれ、今年と来年は日量150万バレル前後の新規需要が生じる見通しだ。だが、これだけの新規需要を満たせるかどうかは、ほぼ全面的にOPECの意向にかかっている。OPEC産油国は年初の相場急落で痛い目に遭ったため、供給の引き締めにかかっているのだ。
「世界の原油生産量は昨年より日量100万バレル以上減少しているが、逆に世界の需要は日量100万バレル以上増えている」。米ゴールドマン・サックス(GS)ロンドン支店のアナリスト、ジェフ・カリー氏はこう指摘する。
原油価格の上昇をなぞるように、仏トタル(TOT)や蘭ロイヤル・ダッチ・シェル(RDSA)といった欧州の国際石油資本の株価も上昇し、3月初旬から中旬にかけてつけた年初来安値から30%以上も急騰した。米石油大手のエクソンモービル(XOM)やシェブロン(CVX)の株価はそれ以上高騰している。
とはいえ、これまでの原油価格の高騰が世界経済に打撃を与えることはないと専門家は見る。現在の価格は昨年のピーク時とほぼ同じ水準で、エネルギー価格は実質的にほとんど値上がりしていないからだ。一因としては、需要がそれほど増えなかったことがある。特に欧州経済は原油価格高騰によって大きな影響を被ることはないだろう。今でも原油取引決済の大半に使われるドルは弱くなっているが、ユーロや英ポンドはそれほどでもない。
年内には原油相場が下落する可能性も
問題は今後の価格の動きである。昨年夏、ひどく懸念されたハリケーンの時期がさほどの被害ももたらすことなく過ぎると価格が急落し始めた。だが、今年はハリケーンが来るか来ないかは問題ではない。OPECが増産しない限り原油価格が下がることはないとアナリストは見ている。
ゴールドマン・サックスのカリー氏は、「OPECが今秋までに供給を増やさなければ、年末までに原油相場は1バレル90ドルを超える」と予測する。最近の原油先物カーブは、期先物価格が期近物価格を下回るいわゆる「逆ザヤ」を描いている。これは「超強気」を示すサインだという。
その一方で、OPECが増産を示唆すれば、投機家が記録的な買いポジションの清算に動き、原油価格はすぐに1バレル当たり5〜10ドル下落するとカリー氏は見る。ただし、OPEC加盟諸国では自国内の原油消費量が増えたことによって輸出に回す分を食い始めているため、正念場に備えて余剰生産能力を温存する可能性もある。
原油相場が上昇トレンドを描くと誰もが確信しているわけではない。米ワシントンのコンサルティング会社PFCエナジーでアナリストを務めるデビッド・カーシュ氏は、年内にも価格が下落する可能性があると見ている。
「供給不安は実態よりもいくらか誇張されている。世界的な原油の在庫状況はまずまず良好で、米国は十分在庫を抱えている。今年第4四半期には1バレル当たり平均68ドルまで値下がりするのではないか」とカーシュ氏。
とはいえ、長期的な供給不安が世界中で高まり、OPECが再び市場を牛耳るようになった今、当面、原油価格の底値は高水準を維持しそうだ。