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植草 一秀:今週の内外経済金融情勢の展望 = スリーネーションズ・リサーチ株式会社
http://www.asyura2.com/07/hasan51/msg/419.html
投稿者 ダイナモ 日時 2007 年 7 月 30 日 21:10:15: mY9T/8MdR98ug
 

http://www.uekusa-tri.co.jp/column/index.html

 7月29日に実施された参議院選挙で民主党が大勝、自民党が大敗した。安倍首相は選挙に際して「安倍首相の自民党を選択するのか小沢一郎氏の民主党を選択するのかが問われる選挙」と有権者に訴えた。結果は自民党が37議席、民主党が60議席となり、安倍首相の言葉を借りれば、有権者は安倍政権に明確にNOを突きつけたことになる。
 自民党が参議院選挙で大敗した過去2回のケースでは首相が退陣した。1989年には自民党が36議席しか獲得できず、宇野首相が退陣した。1998年は自民党が44議席しか獲得できず、橋本首相が退陣した。安倍首相は政権の政策の基本路線については国民に理解されたと発言しているが、その根拠はどこにも存在しない。安倍政権の基本路線に対する有権者の審判が選挙結果に表れたと考えるのが常識的な判断である。

 今回の選挙の第一の意味は、小泉政権以来実行されてきた「市場原理主義に基づく政策運営」に対する審判だった。民主党、社民党、国民新党は弱肉強食の「市場原理主義」に対して「セーフティーネット重視=弱者重視」の政策を全面に掲げた。「格差」問題が大きな争点だった。
 さらに選挙前に大きく、クローズアップされた「年金」、「政治とカネ」の問題も大きな争点として浮上した。さらに、「天下り問題」、「閣僚の問題発言」、「教育」などが争点になった。年金問題や政治とカネ、閣僚の問題発言などの問題が表面化した際、新たに焦点になったのは、問題の発生に対して首相がどのように責任を明らかにするかだった。安倍首相は年金問題に対して責任転嫁の姿勢に終始した。柳沢厚労相、松岡農水相、久間防衛相、赤城農水省、麻生外相などの失言問題に際しても、すべからく大臣擁護の姿勢を示し続けた。
 結果に対して責任を明確化するという政治家として求められるもっとも重要な点における安倍首相の姿勢が有権者からの審判の対象とされた点を忘れてならない。

 選挙結果を厳粛に真摯に受け止めるなら、安倍首相は総理の座を辞する決断を示すべきである。政権選択の選挙であるとの選挙演説を繰り返しておきながら、選挙が終わったあとで、参議院選挙は政権選択の選挙ではないとして首相の座に居座るのでは、有権者の支持は一段と低下せざるを得ないだろう。国民主権の根本原則を重視するなら、安倍政権は国政選挙結果を真摯に受け止めた行動を取るべきである。政治家が言葉に対して責任を持たないこと、国民の審判を正面から受け止めないことが強い政治不信を生んでいることに思いをいたすべきである。

 筆者は内外株式市場について、繰り返し、7、8月の市場調整に対する警告を発してきた。『金利・為替・株価特報』7月6日号、7月20日号においても、7,8月の内外株式市場の調整を警告してきた。先週はNYダウが急落し、株価下落が世界市場に波及した。
 日経平均株価も18,200円台から17,000円近辺まで下落した。週明けの東京市場でも株価下落が持続したが、基本的には先週末のNY市場の株価下落を受けた株価推移である。
 株価下落の背景には米国経済の先行きに対する不安心理が存在している。原油価格が上昇を続け、総合的なインフレに対する懸念は払拭されていない。一方で、経済指標に経済の改善が示されているにもかかわらず、低所得者向けの住宅ローンであるサブプライムローンの焦げ付き問題が拡大している。住宅市場の調整が本格化して経済全体に波及するのではないかとの懸念も存在している。インフレの進行と景気の失速の両面において懸念が存在している。

筆者が7、8月の株式市場の調整に警告を発してきた背景に、原油価格の上昇、サブプライムローン問題があったことは事実である。現実にこれらの問題を背景に株価調整が生じている。しかし、より根本的な背景として、米国株価が本年3月から7月にかけて急上昇したことが存在している。急激な株価上昇に対する警戒感が強まったことが株価調整の根本背景であることを認識しておくべきである。
 重要な点は株価調整がトレンド転換をもたらす調整であるのか、トレンドが不変ななかで一時的な調整を演じるのかの見極めである。現状では、トレンド転換をもたらすものではないと筆者は判断している。しかし、調整完了にはある程度の時間を要するものと考える。また、日本の株式市場は米国市場の調整を受けて調整局面を迎えているが、政局転換からの株価下方圧力は生じていないものと考える。

 日本の政治状況は明確な二大政党の状況に初めて移行する大きな基盤が形成された。今回の参議院選挙の最大の争点は、小泉、安倍政権が推進してきた「市場原理主義」と「セーフティネット重視」の政策の路線対立であった。民主党が参議院で大勝したことを受けて、政局の次の焦点は次期総選挙に移った。衆議院の任期は2009年9月で、今後2年以内に必ず総選挙が実施される。民主党中心の政権が樹立される可能性が明確に浮上してきたと判断できる。
 「市場原理主義」を「セーフティネット重視」に転換することが日本経済の安定的な推移には必要であるし、それ以前の問題として「政権交代のある政治状況」が政治の健全化に必要不可欠である。金融市場は短期的にどのように反応するのかはともかく、中期的には今回の選挙結果が悪材料であるとの反応を示す可能性は極めて低い。政治状況の混迷は予想されるものの、新しい日本の政治状況を生み出すための「産みの苦しみ」と理解することもできる。

 7月30日(月)に6月日本鉱工業生産指数が発表され、前月比+1.2%の増加を示した。4ヶ月ぶりの増加となった。31日(火)には6月家計調査、6月失業率、6月有効求人倍率が発表される。米国では31日(火)に7月シカゴ購買部協会指数、7月コンファレンスボード消費者信頼感指数、8月1日(水)に7月ISM製造業景気指数、3日(金)に7月ISM非製造業景気指数、7月雇用統計が発表される。7月雇用統計が注目される。米国株式市場がどの程度反発するのかも注目点である。
 日本の政治状況は正常化に向けての重要な第一歩を記した。有権者の適切なバランス感覚がまだ枯渇していなかったことが示されたことは、極めて意義深いことである。短期の調整と中期のトレンドとを峻別して市場動向を見極めることが重要である。

2007年7月30日
スリーネーションズリサーチ株式会社
植草 一秀

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