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□どうなる自衛隊次期輸送機のエンジン 防衛省御用達商社「山田洋行」分裂 [読売ウイークリー]
http://seiji.yahoo.co.jp/column/article/detail/20070612-02-0202.html
2007年6月12日
どうなる自衛隊次期輸送機のエンジン 防衛省御用達商社「山田洋行」分裂
「山田洋行」。航空・防衛の専門商社として、防衛省に食い込んでいる。この会社が分裂。航空自衛隊の次期輸送機(CX)のエンジン契約をめぐる奪い合いも始まっている。
発端は昨年6月、防衛省御用達の中堅商社「山田洋行」の代表取締役を務めていた宮崎元伸氏が、同社を退社し、同年9月に株式会社「日本ミライズ」を設立したことだ。
1969年設立の山田洋行は、社員約150人ほどだったが、艦船搭載機関砲システムや多用途戦術ミサイル、航空機の構成品などを防衛省に納入し、大手総合商社に伍して実績を積み上げてきた。同社ホームページによると、昨年3月期の販売高は約340億円で、純益は9億8500万円となっている。内情に詳しい関係者は、こう解説する。
「宮崎氏は、自衛官をやりながら大学を卒業し、山田洋行に入社しました。社員が4〜5人しかいないころから、こつこつと防衛分野を開拓し、専門商社に育て上げました。山田洋行が今あるのは、彼の功績だと言っていいでしょう」
その宮崎氏がなぜ退社したのか。宮崎氏の説明はこうだ。
「山田洋行の親会社は弥生不動産という会社です。ここが金融機関と問題を抱え、整理回収機構(RCC)の扱いになった。これに合わせてグループのオーナーが持っている山田洋行の株が銀行の担保に入り、売られそうになったんです」
この経緯に不安を覚えた社員から、宮崎氏に対し、MBO(現経営陣による株式買い取り)で、オーナーから株を買い取ってほしいとの要望が出たという。
「大変なことなので、書面で出してほしいと言ったら、98%の社員が署名してきました。そこで、社員を代表してオーナーと交渉しましたが、不調に終わりました。社員からは、『MBOがうまくいかない場合は、独立して新会社をつくってほしい』という要望があり、これを受けて会社を設立したんです」
日本ミライズによると、社員47人のうち山田洋行の正社員だった者は36人、契約社員や関連会社から来た者を含めると、40人以上が山田グループから転じたという。
もちろん、山田洋行側は黙っていなかった。昨年10月に日本ミライズや宮崎氏らを相手取り、10億円の損害賠償請求を起こした。さらに、日本ミライズの一部社員に対しては、退職金の返還訴訟を起こしている。山田洋行の野村裕幸社長室長は、
「宮崎さんは親会社がRCC管理になったことと、株が銀行の担保になった問題を関係づけていますが、全く別です。RCCの問題は和解して決着しています。山田洋行の株が三井住友銀行の担保に入ったのは、担保となっていた不動産の評価額が下落し、追加担保を要求されたためです。これも、不動産市況が回復したので、昨年4月には担保を外れています」
と説明する。さらに、社員がMBOを求めたとする宮崎氏の説明に対しては、こう反論する。
「最初から乗っ取りを考えていたのではないでしょうか。宮崎さんは非常にワンマンな人でした。署名しろと言われれば、訳も分からず署名した社員もいたでしょう。実際に出て行った社員の数を見れば、どちらが正しいか分かるはずです」
両者の主張は真っ向から対立している。そして、その最大の焦点となっているのが、次期輸送機(CX)に搭載される米GE(ゼネラル・エレクトリック)社製エンジンの商権だ。
CXは2000年12月に閣議決定された中期防衛力整備計画で開発が決まった。国産輸送機だが、エンジンはGE社製のCF6‐80C2を使用する。現在、このエンジンに関してGEと代理店契約を結んでいるのが山田洋行だ。すでに試作機用として、防衛省の04年度予算で3基、05年度予算で2基の計5基の契約を結び、これまでに3基を納入している。
防衛省によると、CX用エンジン1基当たりの購入価格は約6億円。今年度予算でも1基を導入する予定だ。CXの量産が決まれば、製造機数は30機から40機にのぼると見られ、1機当たりエンジン2基が搭載されることから、総額は500億円近くになる見通しだ。
ここに割って入ったのが、宮崎氏率いる日本ミライズだ。山田洋行側は訴状の中で、
「(宮崎氏らは)最重要取引先であるGE社について、自らが在職中に知り得た情報、人脈を利用し、原告会社から取引を奪取せんと画策している」
と、宮崎氏らの動きを糾弾する。
一方の宮崎氏は、GEとの代理店契約の成否について、明確な回答を避けながらも、
「米国や海外の会社は、個人の信頼関係が大事です。どれだけの実績をつくってきたか。代理人としてどれだけやってくれるか。徹底した能力主義です。組織とか会社より、まず個人です」
と、自らの実績、人脈などに自信を示す。ただ、山田洋行の訴訟に対しては怒りを隠さない。
「うちが代理店契約を取っていない段階での訴訟は、営業妨害です。この仕事は信用が何より大事で、訴訟を抱えているだけでダメージになる。ケンカをする気はなかったのですが、訴訟によってミライズの活動を阻止し、兵糧攻めにするのが目的だという話も伝わってきているので、正しいことは言っておかなければと考えています」
日本ミライズに移った社員のうち退職金が支払われていない一部社員は、退職金支払いを求めて山田洋行を提訴しており、両社の間は訴訟合戦の様相を呈している。
では、実際の代理店契約はどうなっているのだろうか。
山田洋行の野村社長室長は、
「GEとの代理店契約の内容については、守秘義務があるので申し上げられません」
と、にべもない。ただ、一般論と断ったうえでこう話す。
「未来永劫に続く契約はありません。期限が来れば更改しないといけない。いらない契約などありませんから、契約を継続する努力をします」
ある業界関係者は、代理店契約をめぐる動きをこう説明する。
「今年の3月ごろ、GE側から山田洋行に、CXのエンジンの代理店契約の20%程度を日本ミライズに譲るよう提案があったそうです。山田洋行はもちろん、これを拒否しました。その後、4月ごろになって、改めてGE側から山田洋行と日本ミライズ双方に通告があったようです」
その内容は、7月末をもって山田洋行との契約を解消し、日本ミライズと契約を結ぶ、というものだとされる。
この問題は、エンジンを購入する防衛省にとっても他人事ではない。防衛省に聞くと、
「GEがCXのエンジンの代理店契約を山田洋行から日本ミライズに移すことを決めた、ということは確認している」
との回答が返ってきた。山田洋行の看板より、宮崎氏個人の人脈、実績に軍配が上がったということか。だが、先の関係者は、こうも付け加える。
「CXのエンジンの取り扱いは、額で考えれば山田洋行にとってはそれほど大きなものではありません。ただ、宮崎氏にあっさり契約を取られることで、会社のイメージが悪くなることを恐れているのでしょう」
期限とされる7月末に向け、山田洋行も巻き返しを図っていることは想像に難くない。設立間もない業者が、代理店になることは異例であり、業界内では、両者の争いに政界や防衛省幹部の介入があるのでは、とのうわさも絶えない。