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社説:ロイター買収 信頼がメディアのカギだ
国際的な通信社として知られるロイターが、北米に本拠を置く総合情報会社のトムソンに買収されることになった。欧米ではメディア企業の再編をめぐる動きが活発化しており、今後も大型再編が続くとみられる。
ロイターは報道を業務とする通信社だが、収益の9割以上は金融・経済情報の提供や為替の売買など金融取引に関連するサービスから得ている。一方、トムソンは、北米を中心に新聞や出版などの事業を展開し、一時は英国のタイムズ紙も保有していた。しかし、収益に限界があるとして新聞・出版事業から撤退し、金融関連のサービスに事業を転換してきた。
北米でのシェアが高いトムソンと、欧州に強いロイターの統合は、ブルームバーグに対抗するためだ。現在、ニューヨーク市長を務めているブルームバーグ氏が創業したが、ロイターなどからシェアを奪い、急拡大を遂げてきた。
金融情報サービス事業は、世界的な投資ブームもあって、高い収益性が期待できる分野だ。米経済紙のウォールストリート・ジャーナル(WSJ)を発行しているダウ・ジョーンズに、ルパート・マードック氏率いるニューズ・コーポレーションが買収提案をしたのも、経済情報をもうかるビジネスとみているからだろう。
インターネットの普及によって、メディア産業には地殻変動が起こっている。米国では新聞社の売却が相次ぎ、ヤフーとマイクロソフトの提携交渉などに関心が集まっている。
ダウ・ジョーンズはネットで提供している電子版のWSJの有料購読者が拡大している。ニューズ社が買収を提案したのは、電子版WSJを足がかりに、ネットを通じたメディア事業を拡大したいからだろう。
メディア再編が進む要因は技術面にもある。文字や写真、動画などの素材を一体的に扱えるシステムの利用が広がっており、活字媒体、放送、ネットなどメディア企業の統合を後押ししている。
日本の場合、日本語による市場が限定されていることや、新聞社は株式を上場していないことなどの事情から、欧米のような国境を越えたメディアの再編にはつながりにくい。しかし、ライブドアによるニッポン放送の買収劇や、楽天によるTBSへの経営統合の提案といった動きもある。
メディア産業をめぐる地殻変動の影響は避けられないだろうが、重要なのは、メディアは読者や視聴者の信頼によって成り立っていることだ。
ブログなど、ネットを通じた情報発信が拡大している。情報の受発信のあり方はますます多様になっていくだろう。しかし、真実を追究し、的確な情報を提供するというメディアの活動の重要性は変わらない。
ロイターの場合も、通信社として培った信頼がビジネスの基礎となっており、編集権の独立は維持されるという。メディアの再編が加速するとしても、この点だけは忘れてはならない。
毎日新聞 2007年5月17日 東京朝刊
http://www.mainichi-msn.co.jp/eye/shasetsu/news/20070517ddm005070034000c.html