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今週の内外株式市場は米国株式市場の動向に神経を振り向ける展開が予想される。米国株式市場ではNYダウが3月5日の12,050ドルから5月9日の13,362ドルまで、1,312ドル、10.9%上昇した。インフレ懸念が後退する一方で、景気失速の懸念も後退し、インフレなき成長の持続が予想されている。これが株価が史上最高値を更新している基本背景である。
日本市場でも米国市場の株価堅調を受けて、堅調な株価推移が続いているが、株価上昇力が弱まっている。日本経済が循環的に伸び悩みの局面を迎えていることに加えて、日本の財政政策が景気抑制要因になり、金融政策も緩やかな引締めスタンスに転じていることが背景に存在する。
全体として膠着状態のなかでの、堅調な株式市場の推移が予想されるが、3月以来の米国株価の上昇が急ピッチであったことを踏まえると、5月から6月にかけて、株式市場にスピードに対する調整が入る可能性がある。米国市場で調整が入れば、主要国市場に波及することが予想される。日本、米国で本格化している企業決算発表に注意を払いつつ、市場のリズムとしての株価調整に注意を払うべき局面と考えられる。
5月11日に発表された米国4月卸売物価指数は前月比上昇率が?0.7%と3月の+1.0%に引き続き、高い伸びとなった。しかし、市場が関心を払う食品、エネルギーを除くコア指数は3月に引き続いて2カ月連続の前月比横ばいとなり、物価の基調が非常に落ち着いていることを示した。
また、同日発表された米国4月小売売上高は前月比-0.2%と市場予想に反してマイナスに転じた。小売売上高統計は月次での数字の振れが大きく、単月の数値に強い意味はないが、景気減速を示す指標と受け取られた。
米国のインフレ懸念は後退しているが、景気に対する警戒感も残存している。5月9日のFOMC(連邦公開市場委員会)声明では、政策金利が据え置かれ、インフレ懸念が低下しないことがリスクであると表現され、FRBによる金利引下げ政策が近い将来に実施されるとの期待が後退した。インフレ懸念は後退しつつあるものの、景気減速の懸念と利下げ期待の後退が入り交じり、株式市場には気迷い気分が生じる可能性がある。小幅のスピード調整に注意が求められる。
日本の株式市場は国内景気動向、政策対応、米国株式市場動向を睨んだ展開の継続が予想される。今週は15日(火)に3月機械受注が発表され、17日(木)に1-3月期GDP速報が発表される。GDP実質年率成長率の事前予想値は+2.6%であり、事前予想に対して発表値がどちらに振れるかによって市場の反応が分かれることになると思われる。16日(水)には日銀の政策決定会合が開催され、その後の福井日銀総裁の会見が注目される。
今週も企業決算が多く発表される。全体として、米国株式市場の動向に神経質な展開が続くなかで、景気の持続性を慎重に見極める一進一退の株価推移が予想される。ただし、株価水準そのものには依然として大幅な割安感が存在しており、株価下落局面には自律的な買いが入り、株価急落の懸念は大きくない。「押し目買い継続」の投資スタンスが有効と考えられる。
米国では、15日(火)に4月消費者物価指数、16日(水)に4月鉱工業生産指数が発表される。15日(火)と17日(木)にはバーナンキFRB議長の講演も予定されている。株式市場のリズムから考えて、市場は株価下落要因に過敏に反応しやすい局面にあることを念頭に入れておくべきである。
また、中国の上海総合株価指数が3月以降急激な上昇を示した。急上昇後の反動的な下落のリスクが存在しており、米国市場の調整の可能性を含めて、世界的な株価連動リスクを頭に入れておくべきと思われる。
債券市場は一進一退の膠着状態の持続が予想される。日本のGDP統計が市場予想に対してどのように発表されるか、また、福井総裁の追加利上げに対するコメントが注目される。米国では消費者物価指数のコア指数が注目点である。
米国でインフレ懸念が強まれば米国主導で金利上昇圧力が発生する。ドルも上昇圧力を受けることになる。米国のインフレ懸念、日本の景気実勢、日銀の政策スタンスが焦点になる。
国内政治情勢では7月22日に予定される参議院選挙に向けての与野党攻防が本格化する。参議院選挙で与党が過半数を維持できるかどうかが、今後の政局の最大の焦点である。
「憲法改正」、「格差」、「政治とカネ」、「天下り」、「教育」について国民に訴える政策体系の提示が求められている。
2007年5月14日
スリーネーションズリサーチ株式会社
植草 一秀