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http://business.nikkeibp.co.jp/article/money/20070507/124239/
米国在住で卵好きな人なら、最近はスーパーマーケットに出かけるたびにショックを受けるだろう。卵の販売価格が値上がり続けているからだ。全米農業団体連合会(AFBA)によると、2007年第1四半期(2007年1〜3月)の間で、卵1パック(12個入り)の平均価格が、1.18ドルから1.51ドルへと28%増加した。スーパーマーケットで価格が上昇しているのは、卵だけではない。小麦5ポンドの値段は第1四半期で19%、トウモロコシは同8%、牛乳は同5%の上昇となった。
商品の価格が急激に変化するのは珍しいことではないが、ここ最近の変化は従来の価格上昇とは異なると、ほとんどのエコノミストは見ている。それは供給量が増えているにもかかわらず、販売価格が上がっているからだ。農産物価格が上昇しているのは、トウモロコシから製造されるエタノールの需要が急激に増加している影響からだ。トウモロコシの生産量は大幅に増加したにもかかわらず、シカゴ商品取引所では1ブッシェル当たりの価格が2006年初めから115%増加し、4ドルで取引されている。
鶏はトウモロコシで育てられるため、鶏卵の生産者は消費者にエサ代の上昇を負担してもらわざるを得ない。鶏の飼育コストの増加は、消費者がファストフードチェーンで支払う価格にも影響を与えている。統計によれば、2006年に米国のレストランではチキン料理の価格が11%上昇し、また大規模なフライドチキンチェーンの1つは、商品を10%値上げした。
世界の穀物在庫はここ30年来で最低のレベル
米国が石油の海外依存を減らすのにエタノールが重要なツールになってきたのにつれて、トウモロコシだけでなく、他の農産物価格も上昇すると見られている。推計によると、2008年には米国の穀物生産高のおよそ30%がエタノール向けになり、これは2006年比で16%増の水準になる。エタノール需要を満たすため生産者が他の食物からトウモロコシに生産シフトし、それによって農業製品全体の供給が抑制され、価格上昇圧力を増す。
発展途上国の経済発展も、農産物供給の縮小をもたらしている。世界の穀物在庫は、ここ30年来で最低レベルにある。トウモロコシがエタノール生産に回されるにつれて、この状況はさらに悪化すると見られている。例えば、インドは国内需要に十分な量を確保するために、小麦の輸出を禁じた。
しかしながら、こうした手段が長期的にインド国内需要を満たすものかは疑わしい。ニューデリーの農業アナリストであるアミット・サチェフ氏は、インドのトウモロコシ需要は2001年から年5.5%増加したが、生産量は年4.0%増加しただけだと言う。また中国では人や家畜の食料を確保するために、政府がトウモロコシを使ったエタノールの生産プラントの建設制限を始め、さらに農地でのゴルフコース新設を禁じた。
インフレ圧力を払拭する勢いを失う企業
農産物や原油などここ最近の原材料価格の急騰は、消費者に影響を及ぼすのは必至だ。というのも米国の企業は、もはやコスト増を吸収する力がほとんどなくなってきたからだ。これまでの10年間は、米企業は生産性の向上でコスト増をほぼ相殺することができた。これに安定需要が相まって、インフレ圧力なしに企業は利益を保つことができてきた。
だがアラン・グリーンスパン前FRB(米連邦準備理事会)議長がインフレと闘う一番の協力者として考えた生産性向上は、勢いを失い始めた。2004年には生産性向上が4%強だったが、2006年第4四半期は1.4%に縮小している。それによってインフレ圧力が増している。
統計がその実態を反映している。米労働省によると、3月の生産者物価は予想を上回り前年比で1.0%の上昇となった。2月の同1.3%ほどではないが、生産者物価が予想を上回ったのは2度目だ。また消費者物価は、3月に前年比で0.6%上昇し、2月の同0.4%に続いて上昇した。期初の3カ月では年率換算で4.7%の上昇となり、2006年全体の同2.5%のほぼ倍となった。
現在のインフレペースは心配の種である。というのも、中央銀行による一連の利上げ後、物価は間髪をおかずに上昇し始めたからだ。FRBは短期金利を2004年6月の1%から現在の5.25%に上昇させてきた。この利上げは、ここ数カ月の間苦しんできた住宅市場と企業投資の両方を圧迫する可能性がある。
企業投資は繊細で難しい分野だ。住宅における下降は広く予期されているけれども、企業支出の下降を認識するのはやや難しい。米商務省によれば、企業の設備投資は2006年第4四半期に3.1%減少した。これは、2003年初頭から初めての下降であった。
3月のFRB議事録には、財務状況やファンダメンタルズから、企業の資本支出は好転する余地が依然として残っている、とする。しかしながら、輸送やハイテク設備以外の財・サービス投資は、ファンダメンタルズ以上に弱まった。バーナンキFRB議長は3月の演説で「建設と自動車産業による過剰な資本財の使用が、ここ数カ月の弱さの主要な要因である」と語った。
企業支出が弱含みなのは、新たな科学技術によってブレークスルーが見られていないこと、消費需要の不透明さや、ここ数年の過剰投資が、しばしば理由として引き合いに出される。さらに言えば、バーナンキFRB議長は就任からわずか1年足らずで、グリーンスパン前議長がこれまでうまく克服してきたような困難な状況下で舵取りをした経験もない。
これらの要素が絡まって、金利情勢は非常に不安定になっている。景気後退を防ぐために企業支出と消費支出を強く保ちながらインフレ懸念に対処するのは、至難の業だということが今後数カ月で明らかになるだろう。バーナンキ議長はこれまで発揮してきた以上の手腕があることを示す機会に恵まれたのだ。