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■マル激トーク・オン・ディマンド 第318回 [2007年5月2日収録]
タイトル:誰のための三角合併なのか
ゲスト:山崎養世氏 (シンクタンク山崎養世事務所代表)
<プレビュー>
http://www.videonews.com/asx/marugeki_backnumber_pre/marugeki_318_pre.asx
5月1日、三角合併による企業買収が解禁された。自社株との交換による買収が可能
になったことで、時価総額で日本企業を大きく上回る多国籍企業による日本企業の買
収に拍車がかかる可能性が取りざたされ、一部では日本企業に触手を伸ばす外資を
「黒船」呼ばわりする風潮も散見される。
しかし、元ゴールドマン・サックスの山崎養世氏は、それは明らかに現実を反映し
ていないと、昨今の「外資脅威論」を一蹴する。
そもそも「黒船」や「企業防衛」といった考え方は、規制に守られながら非効率な
経営を続けることで株主利益を蔑ろにし続けてきた日本企業の経営者の立場のみを反
映したものであり、株主や日本経済全体の利害を反映していない。M&Aにより企業価
値が高まれば、株主は利益を得るし、労働者も一時的にはリストラなどの憂き目に遭
うかもしれないが、最終的には経済全体としてはより多くの雇用が維持されることに
なる。にもかかわらず、経営者の立場のみを反映する情報を垂れ流しする日本のメ
ディアもまた、規制による保護と非効率の象徴的な産業であると、山崎氏は喝破する。
もともと「三角合併」が解禁されれば直ちに外資による買収が横行するという見方
自体に問題がある。日本企業は総じて時価総額が低いため一見お買い得のように見え
るが、実際は株価収益率(PER)などの指標で見ると魅力の低い企業が多い。また、
三角合併を仕掛ける企業は、現金の調達も容易にできるはずなので、わざわざ手間の
かかる株式交換などを行う必要は無い。
「買収が脅威なのではなく、買収さえしてもらえないダメな企業が多い」のが日本
の現実なのであって、買収対象になるということはむしろ「国際的に評価された」こ
とを意味すると、山崎氏は言う。
実際、90年代後半から日本企業のM&Aは急増しているが、その内実は外資に日本の
企業が買収されるよりも、日本企業が海外で買収を行うケースが数では大きく上回っ
ている。「外資黒船論」がいかに恣意的な表現であるかは、これでも明らかだ。
一方、山崎氏は製造業を中心に日本の企業はかなり競争力をつけてきていると語る
が、ことメディアと金融については、いまだに世界基準の競争力がまったくついてい
ないと苦言を呈する。この2つは人間に喩えれば血液やリンパ液を循環させる役割を
担っている。日本ではその2つの生命線が機能していないため、いまだに東京への一
極集中や効率的な経営が生き延びてしまっているという山崎氏は主張する。
山崎氏はまた、M&Aなどの市場原理を導入して合理化を進めることはいいことだが、
教育や医療など、必ずしも市場原理だけでは解決できない分野があることも、認識し
ておく必要があると言う。
元祖「高速道路無料化論者」として知られる山崎氏とともに、三角合併で改めて浮
き彫りになった後ろ向きな日本企業の経営体質と金融、メディアとの癒着した関係を
再考し、日本が21世紀型の経済に脱皮するために何が必要になるかを考えた。