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株式日記と経済展望
http://www5.plala.or.jp/kabusiki/kabu143.htm
http://blog.goo.ne.jp/2005tora/
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『アメリカの没落』 by Donald L. Barlett,James B. Steele
ハゲタカはアメリカ企業を食いつくし日本企業に襲い掛かる!
2007年5月8日 火曜日
◆アメリカの没落 ドナルド・L. バーレット,ジェームズ・B. スティール(著)
http://www.junkudo.co.jp/detail2.jsp?ID=0193069300
◆合法的な借金踏み倒し
以前には、企業はお金を借りて工場を作り、設備を買い、新しい製品を作った。だから新しい仕事が生み出されていた。当時は、税金の申告時に金利負担分を控除することを認めるのは筋の通ったことだった。しかし一九八○年代に金利分の控除はアメリカを建設するのではなく、アメリカを切り崩すための方便になってしまった。
企業はお金を借りて他の企業を乗っ取り、資産を売り払ってしまう。その結果、工場は閉鎖され、中間所得層の仕事を奪い、そうした結末をもたらした企業のオーナーや投資家、役員たちに天文学的な額の金が支払われた。この結果、支払利息に課税しないことによって、納税者にすべてのしわ寄せがくる。
たばこのウィンストンやキャメル、オレオ・クッキーやリッツ・クラッカーなどの製品を作っているRJRナビスコ社の乗っ取りの場合、ウォール街の投資銀行でも企業買収会社でもあるコールバーグ・クラビス・ロバーツ社は、F・ロス・ジョンソン社長が率いる企業管理チームとの厳しい株買付け競争の果てに、一九八九年四月、RJRナビスコ社を買収した。競争に勝つためにコールバーグ・ク.ラビス社は、RJRナビスコに、ドレクセル・バーナムランベール社から売り出された50億ドルのジャンク・ボンドを含む200億ドル分の長期負債を負わせる事になった。
ニューヨークタイムズ社はウォール街の投資銀行家のコメントを引きながら、ドレクセル・バーナムの投資顧問を「畏敬に値する」と表現し、その証拠に(ドレクセルの)やり方は非常にうまく機能している」と論評した。実際にはドレクセルのやり方は、破産宣告に向かっていたのだが、その間にRJR社の取引で、法律家をはじめてする各種のプロフェッショナルたちの手数料も合わせて「おそれおおくも」何億ドルもの手数料が、コールバーグ・クラビス社にかかることになった。
納税者たちは、それに引き換え、何十億ドルという損失をこうむった。SECの記録によると、一九八九年の最後の九ヵ月と一九九〇年にRJRナビスコは三〇億ドル以上の支払利息を計上した。これによって、同社の新しい所有者は一〇億ドルかそれ以上の法人税を免れたことになる。
この一〇億ドル強をこんなふうに考えてもいい。あなたがインディアナ州フォートウエインかアイオワ州スーシティに住んでいる中流世帯なら、一九八九年と一九九〇年に支払ったあなたの所得税はすべてRJRナビスコの買収劇によって国が取り損ねた税金の穴埋めに使われたのだと。実際、あなたが今世紀中に支払う所得税はすべて、その目的に使われるはずだ。
中流階級の納税者が企業から入ってこなかった税収の埋め合せをしている一方で、それを仕掛けた企業の経営者たちはまんまと利益を得ている。同時に、彼らは個人的な所得税でも、ここ数十年の間かつてない低率でしか払っていない。一九九二年度の個人所得税の最高税率は三一パーセントで、一九九〇年までの数年間は二八パーセントだった。一九六〇年には九一パーセントもあったというのに。
世界最大のメディア・エンターテイメント企業であるタイム・ワーナー社の会長で経営最高責任者の一人であるスティーブン・J・ロスの場合を考えてみる。一九八九年の七月にタイム誌の発行元であるかつてのタイム社が、映画・テレビ・娯楽業のワーナー社の株式の過半数を取得し買収してできた企業が、タイム・ワーナi社である。
RJRナビスコの場合と同じで、買収は新会社に重い惜金を残した。SECの記録では、タイム・ワーナーは一九八九年と一九九〇年に二一億ドルの利払いを計上した。その結果支払わずにすんだ法人税額は七億ドルになる。実際、SECの記録が示すとおり、タイム・ワーナーはその二年間に一九〇億ドルの売上げがあるが、国に払った法人税はゼロである。
一方、ロスはその報酬として一九九〇年に三三〇万ドルを受け取っている。さらにボーナスとして七四九〇万ドル。かれのタイム・ワーナーからの収入は七八二〇万ドルに上った。
RJRナビスコとタイム・ワーナーのケースは、そこに絡んだ金の額から見ると例外的なものかもしれないが、もう少しスケールの小さい同じような話は全米にいくらでもある。SECの記録を引きながらさらに三つのケースを考えてみよう。
[スーパーマーケッツ・ジェネラル・ホールディングズ社の場合]
同社はニュージャージー州のウッドブリッジに本拠をおく、全米十指にはいるスーパーマーケット・チェーンだ。パスマーク、ピュリティシュプリーム、あるいは四〇店舗ほどのリッケル・ホーム.センターなど、北東部、中部大西洋岸、ニューイングランドの各州で都合、二〇〇を超えるスーパーマーケットを展開している。
一九八九年と一九九〇年の二月に終る会計年度の二年間に、同社の営業利益(支払利息や法人税を差し引く前の利益)は、3億4300万ドルであった。支払利息は4億9800万ドル。営業利益を帳消しにして両年とも損失を計上し、国に支払った法人税は、ゼロ。
正確に言うならば、同社はこの二年間に法人所得税を1300万ドル支払ってはいる。しかし、純営業損失規定のおかげで同社は前年度に支払った3600万ドルの法人税の中から払い戻しを受けた。さらに同社はこのタックスゲームで、この先に二三〇〇万ドル分の控除が残っているのだ。
[USGコーポレーション]
この会社はシカゴに本拠をおき一九〇一年の設立。昔の名前、USジプサム(石膏)カンパニーと言ったほうがとおりがいいかもしれない。同社は建設資材の製造販売会社で、石膏ボードではアメリカ最大の生産量を誇る。一九八九年と一九九〇年、同社の営業利益は四億八七〇〇万ドルに上った。しかし支払利息は五億八九〇〇万ドルで利益を帳消しにした。法人税はゼロだ。
[バーリントン・ホールディングズ]
この会社はノースカロライナ州のグリーンズボロにあるが、これもまた昔の名前のほうが有名で、バーリントン・インダストリーズといった。服地、カーペット、室内装飾品、カーテン地などのテクスタイル全般を作っている。
一九八九年と一九九〇年、同社の営業利益は三億八九〇〇万ドルであったが、支払利息は五億四〇〇万ドルで利益を帳消しにして、法人税は、ゼロ。
さて、これら三社の数字を合計してみよう。営業利益は含わせて一二億ドルである。支払利息は一六億ドル。つまり利益を帳消しにしてしまうわけだから、法人税の合計額は、ゼロである。
あなたの個人所得税の計算書と比較するとどうなるだろう。たとえば、一九九一年の所得税申告書に年収を三万五〇〇〇ドルと書いたとする。所得税を一ドルでも払えば、あなたの税率はこの三つの企業より高いのだ。
ここに挙げた三社は、その他多くの企業のほんの一部の例に過ぎないことを忘れないでほしい。また、これらが、税制の公正さをうたいあげ、アメリカの企業に相応の税負担を負わせることを公約した、あの一九八六年の税制改正が施行されたあとの事例であることも、記憶していてほしい。
有利な政府のルールブックのおかげで相応の税負担を免れている企業よりも、アメリカの中流階級にとってはもっと暗い側面がこの話にはある。これら三つの企業が借りた数億ドルの借入金も、そのために現在、そして今後支払われる数億ドルの利息も、新しい仕事はただの一つも作りだしはしないということだ。
さらに、支払利息分を課税対象から差し引けるというこの控除の制度そのものが、将来の利益を隠ぺいする、また別の税逃れのメカニズムを創り出すのだ。つまり、純営業損失控除とよばれる税金を消すことのできる魔法の杖である。
税法の数多くの条項とともに、この制度はもともと公正な課税を推進するための「緊急措置」として議会で賛同を得たものである。これはおもに、第一次世界大戦後の産業界の復興をたやすくするために、一九一九年に発効した制度であった。
ノースカロライナ州選出の民主党議員で、下院の歳入歳出委員会の委員長を務めたクロード・キチンは、1919年の二月に棚上げした税金の扱いについての審議の中で彼が、「純損失軽減条項」と呼んだ規定について説明している。彼はこの税制を策定した人々は「戦時から平和時への移行の期間中」であるため、控除措置を一年に限って認めるのが「賢明であり、安全であると賛成した」と述べている。
時代は変わった。厳密に言えば七三年間、キチンの「純損失軽減条項」は内国歳入法の中で安泰に生き続けた。そしてその期間の大半は、純営業損失控除はあまり広範には適用されず、したがって歳入を大幅に減らす要因にはなっていなかった。それが一九八○年代になって変わった。投資家や投機家や乗っ取り屋が税制を自分たちが手っとり早く儲ける道具として見るようになったのである。
一つの会社がそのやり方に乗った。一九七〇年、ペンシルバニア鉄道とニュiヨークセントラルとが合併して二年前にできたペン・セントラル交通が倒産した。一九七八年に会社更生の手続きを経て再組織化され、ペン・セントラル社と改名した同社は、かつての鉄道会社の面影を残してはいなかった。鉄道車両や操車場や駅の代わりに、同社が扱うのはハウジング、娯楽、電力など多角的な事業の持株会社となったのだった。
しかし同社は、鉄道会社だった時代の「資産」を一つだけ持ち続けた。二〇億ドルの損失である。一九一九年の臨時の「緊急」規定のおかげだった。これをフルに活用するために同社は利益のあがる企業を買収した。昔のペン・セントラル社の損失を、新しく買収した会社の税金を安くするために活用したのだった。一九七八年から一九八四年にかけて、営業利益は一八億ドルも上がっているのに、同社は法人税を一度も払っていないのだ。
「当社の利益は、繰越損失のために連邦所得税の課税対象とはならない」と一九八三年度の年次報告書でペン・セントラル社は述べている。
一九七八年に会社を再建し.て以来、ペン・セントラル社は合わせて一〇億ドル以上の純損失を、何千万ドルという納税を避けるために利用してきた。一九九〇年の時点で同社には消えていない繰越損失がまだ一〇億ドル以上残っている。これを充分に活用することが同社の重要な課題の一つとなっているのだ。
一九八九年に同社の経営陣が株主に言ったように、「われわれはペン・セントラルのかなりの額に上る流動預金を投資に回し、借入れ能力をフルに活用すべきだ。そして同時に当社に残された一〇億ドルの繰越損の価値も充分に活用すべき」であるというわけだ。
さらに、シカゴに本拠をおくアイテル社の例もある。同社は鉄道車両と海運用コンテナのリース、浚渫、ワイヤやケーブル一システムの販売で年商二〇億ドルの企業である。同社もまた純営業損失控除のおかげで税金のかからない多額の利益を上げている。
こうした利益によって、この事業を支配しているシカゴの投資家、サミュェル・ゼルはフォーブス誌が発表する四〇〇人の最も裕福なアメリカ人番付での地位を確保しているのだ。
一九八四年から八九年にかけて、SECの報告書によれば、アイテル社は利息や税金を支払う前の営業利益で五億六三〇〇ドルを記録した。連邦法人所得税は、ゼロだった。
「連邦法人税はアイテル社の場合、増えることも支払われることもない」と一九八八年度版の同社の年次報告書は記している。「なぜならば、当社の課税利益は、繰越損を活用することによって差し引かれてしまうからである」。
純営業損失控除の収支はどうなっているのだろうか。これを擁護する人は、企業が初期の費用のかさむ時期を乗り切るのを援助する為に必要な制度だと言う。また、年によって利益が大きく変動する企業の税額を平準化するためのものだとも言う。
しかし、よく言ったところで、不運に見舞われた企業の費用を、その株主や経営陣から一般の納税者に転化する道具だったのではないか。多くの場合、他人が作った損失を、自社の納税申告書に利用する抜け目のない投資家に、やすやすと税逃れをさせる手段になり果てているのではないか。
実際、純営業損失控除のおかげで、企業は将来の税金から逃れられるだけではなく、過去にさかのぽってすでに支払った税金の払い戻しまで受けられるのだ。たとえば、一九九一年につくられた損失は、申告年度で三年分さかのぽって差し引くことができる。その期間にすでに支払った税金を、アメリカ財務省から払い戻してもらうこともできるのだ。
ここまで読んできたあなたは、どうやったら自分も同じことができるのだろうと思っているかもしれない。内国歳入法のぺージを繰って、毎日の仕事で収入を得ている労働者に同じような規定がないか捜してみるとよい。あなたが前年に三〇〇〇ドルの所得税を支払ったが、今年は職を失い、まもなく期限の切れる失業保険と預金で生活している場合は、昨年に支払った三〇〇〇ドルの払い戻しを受けることができる、そんな規定を捜してみるといい。見当たらないって? 当然だ。
それでも、あなたの損失は、誰か別の人の利益となっている。一九六九年にアメリカの企業は、課税所得の三パーセントにあたる二五億ドルの純営業損失を控除した。一九八八年にはこの控除は、課税所得の一三パーセントにあたる五一四億ドルに膨れ上がった。つまり純営業損失控除はこの期間に一九五六パーセント増えたわけだ。
これはほんの序の口に過ぎない。法改正がないために、控除額は年々増え、さらに多くの企業が連邦破産裁判所に申し立てを行って将来使える純営業損失控除をさらに作りだしている。ということは、中流世帯は一九八○年代に企業経営の失敗のつけをこれからも払っていくことになる。企業の経営陣や投資家には膨大な富をもたらし、労働者には破産と失業と賃金の低下をもたらした経営の失敗のつけである。
法律に触れる商取引が損失をもたらした場合でも、有利な法律のおかげで節税に使うことができる。たとえば、経営に失敗した銀行ギャランティ・フェデラルの新しい所有者たちは、有罪判決を受けた前任者のつくった不正行為による損失によって、利益を享受しているのである。 (P126〜P135)
(私のコメント)
アメリカで1980年代に起きた事が日本では2000年代に起きつつあります。それは企業が企業を買収して、買収した企業の資産を売り払って、その利益が役員や株主の配当として吸い取られていく。その反面では買収費用は借金によって賄われて、支払利息や損失費用によって利益は相殺されて税金を1ドルも支払わない。まさにハゲタカだ。
ハゲタカはすでにアメリカの企業を食い尽くして、いよいよ日本に本格的な日本企業買収攻勢に出るだろう。すでにハゲタカによって買収された日本企業では株式配当の驚異的な増大を外資から求められている。内部留保されていた資金は役員報酬や株式配当に回されて、リストラと称して従業員の首切りが行なわれて、企業業績は一時的に向上する。
小泉内閣になってから法人税が軽減されて、サラリーマン減税は元に戻された。経団連の御手洗会長はもっと法人税を負けろとかホワイトカラーエグゼンプションとか消費税を上げろとか、言いたい放題の要求をしている。
キヤノンのような輸出企業にとっては消費税は上がった方が輸出した分の消費税が国から還付されるから上がった方が都合がいい。法人税にしても個人には認められていない繰越損失が認められて税金を払わないで済む税制になっている。
「アメリカの没落」という本の著者はピューリツァー賞受賞した人で1992年にアメリカで発刊されている。日本でも堺屋氏の翻訳で1993年に出た。この本で紹介された企業の繰越損失のマジックを利用して、ハゲタカたちは税金も支払わずに、買収した企業の資産を食い散らかして、アメリカ経済を食い尽くしてしまった。
それでハゲタカたちは日本に目をつけて、小泉改革を実行させて、ハゲタカたちに都合のいいような法制度や税制にしてしまった。企業の繰越損失の制度も徐々に延長される傾向にあるようだ。しかしこのような税制はサラリーマンには分からないが、分からないからサラリーマンに税制のしわ寄せをしているのだ。
日本でも中産階級が没落して格差社会が作られつつある。ホリエモンのようなずる賢い人は法の抜け穴を見つけて、会社を売買して大儲けをする人がいれば、リストラや規制緩和で賃金はどんどん下げられてワーキングプアに没落していく大勢の人が出てくる。
高度成長時代なら会社もサラリーマンもみんなで豊かになることが出来ましたが、低成長時代になると経済を活性化させるということで、規制の緩和が行なわれる。規制によってみんなが公平に豊かになっていたのが規制を撤廃すれば格差が生じるのは当然だ。アメリカはレーガン時代の80年代にそれが行なわれた。
「アメリカの没落」という本は格差社会の今こそ読まれるべき本なのですが、すでに廃刊となって本屋には売っていない。私もいずれは本に書かれたようなことが日本でも行なわれると思っていたから、小泉構造改革に反対したのですが、格差社会になってようやく小泉改革の正体がわかってきたようだ。
5月からは三角合併も解禁になって、ますます弱肉強食時代が酷くなるだろう。そしてアメリカ国内で企業を食い散らかしてきたハゲタカがいよいよ日本上陸が本格化して、「アメリカの没落」に書かれたような企業が食い散らかされる模様が展開される事だろう。