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個人金融資産1400兆円のなぞ____富裕層が眠らせる大金
http://www.be.asahi.com/20041016/W13/0044.html
長引くデフレで色あせてはきても、「金持ち日本」は健在。その象徴が約1400兆円の個人金融資産だ。でも、この数字、1人平均の現預金などが1100万円、4人家族なら4400万円にも上る。サラリーマン家庭の実感とはほど遠い。どこにそんなお金があるのかと探ってみたら、日本の「お金持ち」の姿が浮かび上がってきた。(石神和美)
「旧紙幣は新紙幣発行後も有効。誤解のないようお願いしたい」。1万円、5000円、1000円の新紙幣が11月に発行されるのを前に、日本銀行の福井俊彦総裁は7月、記者会見で極めて異例の呼びかけをした。
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メリルリンチ日本証券は02年以降、有望な取引先として個人部門は大口資産家、いわゆる富裕層を狙う戦略に特化した。同社は、日本の個人金融資産は人口の上位1%の126万人が全体の3割の440兆円を保有する、と推計する。1人平均では3億5000万円。上場企業のオーナー経営者の自社株保有額は上位500人で計7兆円(1人平均140億円)に上るという。
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米系のハートフォード生命保険は00年の営業開始後、3年半で変額個人年金保険の預かり資産が1兆円を超えた。顧客は10万〜12万人で、契約1件あたりの平均保険料は約800万円。すべて現金の一括払いだ。砂川和彦取締役マーケティング本部長が言う。「現役を引退した高齢の方々がもつ金融資産だけで600兆円近くある。しかもそれは使われず、眠っている」
持ち主不明の500兆円
1400兆円のデータの出どころは、日本銀行が四半期ごとに発表している資金循環統計だ。この日銀統計と総務省の家計調査を比べると、お金持ちの姿が見えてくる。
日銀統計では、今年6月末の個人金融資産は1425兆5282億円。不動産などの実物資産は含まない。一方、総務省の家計調査は各家庭に毎月、調査票を配って調べている。03年の平均は1690万円。調査対象は2人以上の世帯なので、単身世帯の別の調査も勘案して計算すると1人平均約540万円。国民全体では約670兆円で、日銀統計の半分以下しかない。
家計調査の結果でも「多すぎて実感に合わない」と言われるのに、この2倍以上の差は何なのか。
まず考えられるのは、「金融資産」の定義の違い。日銀統計には通常、私たちが自分の資産と認識していないものも含まれる。額が最も大きいのは年金準備金(約150兆円)。企業年金の運用資産相当額などで、現役のうちは意識しない。
未収・未払い金(まだもらっていない預金利息など)約24兆円もこれだ。また、現金(約40兆円)は資産ではあるものの、家計調査の対象に含まれていない。これらを合計すると、定義による差は220兆円前後になる。
このほか日銀統計には個人事業主の事業用資産が含まれている。法人でなければ、預貯金などの名義はすべて「個人」になるからだ。日銀はこの額を約90兆円と推計している。ただ、これは家計調査の結果にも含まれているので、双方の差の説明にはならない。
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リッチな高齢者も
日銀統計が正しいのなら、おかしいのは家計調査、ということになる。
家計調査による平均貯蓄高(年間)は無作為抽出した全国約1万6000世帯のデータに基づく。「統計学的には現状を正確に示している」(総務省)はずだ。ただアンケートなので、富裕層が対象から漏れたり、対象になっても正確に答えなかったりする可能性がある。総務省も「調査を断られる場合はあるし、意図的に少なく答える世帯もあるかもしれない」(消費統計課)と言う。
家計調査によると、貯蓄高が4000万円以上の世帯は全体の9.9%。元日銀マンの熊野英生・第一生命経済研究所主席エコノミストは、「富裕層ほど、資産や所得の捕捉を嫌がる潜在意識が強い。大口資産家は、実際にはもっと多いはず」と指摘する。
隠れた大口資産家が、家計調査との500兆円の差の原因というわけだ。この差は、家計調査の平均より1億円多く資産をもっている人なら500万人、10億円多い人なら50万人いることになる。
熊野氏の試算によると、日銀統計と家計調査の金融資産別の差は、預金など大半が1.7倍前後だが、株式・株式投信だけが3.25倍。富裕層が株関連資産を好む傾向が見て取れる。また家計調査では、貯蓄4000万円以上の世帯主の3分の2は60歳以上。「隠れた大口資産家も、ほとんどが高齢者では」と熊野氏。
脱税による隠し資産などの地下経済が日銀統計を膨らませているという見方もある。日銀統計はマクロデータなので、自宅の金庫に隠しているお金もみんな含まれる。地下経済に詳しい同研究所の門倉貴史主任エコノミストが毎年の脱税額などから個人の隠し資産を試算したところ、約120兆円に上った。大ざっぱな推計だが、「本人確認が甘い銀行がアングラマネーを無防備に受け入れてきた。試算は少なめの見積もり」と言う。
個人ごとの金融資産の額は税務署も把握していない。隠れたお金持ちは想像以上に多いようだ。
参考情報 日本の個人金融資産1400兆円は、主要先進国で米国の4270兆円に次ぐ2位。3位は英国の580兆円で、日米が突出している。日米の資産構成をみると、日本では半分を超える現金・預金が、米では1割強。一方、米で3割強の株式・出資金が日本では1割以下と、日本人の安全志向が際だっている(海外のデータは01年末)
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朝日新聞の提示したグラフを見ると、バブル経済がはじけた後も、個人金融資産は右肩上がりを示している。負債は95、96年をピークに横ばい。経済市場での不況感と一致していない。
しかし、若い世代では、給与の伸び悩みと雇用の不安、福祉行政の後退で、ゆとりは感じられない。若者の消費行動は、クレジット・ローンによる後払いが後押ししていて、「金はないのに物を買う文化」が経済を支えているように見える。今を楽しむ、乗り切るために、支払いを先送りするだけで、それが行き過ぎて不良債権を一部には生み出している。
こんな実感とかけ離れた、1400兆円の個人金融資産家が、人口上位1%、リッチな高齢者と聞けば、なるほどとうなずいてしまう。堅実なお年よりの中にはコツコツと蓄えた人もいるに違いない。欲しい物も買わずにじっと我慢した生活を送っている人もいるだろう。想像もつかないが、それらの中の眠っているお金が市場に出回ったら、もっと経済は活発化するだろうか。いや、中途半端な考えで付き合うと、金融業界は自分達の利益のためだけにお年寄りを食い物にしそうだし、金融行政だって、弱者救済には腰が重い。
(地方含む)日本全体の長期債務残高総額948兆円、国民一人当たり758万円(04・10・17現在)・・・日本の財政赤字が個人金融資産を食い尽くしていきそうな勢いが、今の日本を不安にしている。未来の年寄りであるはずの若い世代には、何が残されているのだろう?借金と戦争だけはごめんこうむりたい。