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http://markets.nikkei.co.jp/column/fxwatch/
最近、日本では新興国投資がブームになっている。ブームになっている背景は大まかに言って2つある。
まず1点目は、新興国の成長を買おうという新興国株式投資ブームである。ここ数年、高成長が期待できる新興国株式投信などが人気を集めている。昨年、ロシア株やインド株が1ヵ月足らずで3割以上、下落する局面があった。その後すぐに回復したが、市場が小さいので、投資資金が一度に流入すると一時的に過熱してしまう一方で、反動も起きやすい。長期的にはこうした国の成長は持続すると考えられるが、一時的には大きく株価が下落する展開がしばしば起きる。そのため、新興国の株式投信などを買うにあたっては、あまり大きな金額を投資しないで、長く持ち続けることが一番重要な投資スタイルである。
もう1点の投資スタイルは、新興国の高金利で稼ごうとする動きである。外貨建ての売り出し債や外国為替証拠金取引などで、ここ数年、高金利のメリットを享受してきた日本の個人投資家は多い。オーストラリアやニュージーランドなど、比較的金利の高いオセアニア通貨に投資をして利益を得ている。
このような成功体験が現在、さらなる高金利ブームを生んでいる。例えば最近は南アフリカランドが人気である。南アフリカは政策金利が9.0%あり、主要国の中でも一番金利が高いニュージーランドの7.75%を上回っている。南アフリカランド建ての売り出し債のほか、外国為替証拠金取引業者もこぞって南アフリカランドを商品ラインアップにそろえる動きを見せている。
さらに最近はトルコリラなども注目を浴び始めている。こうした傾向を真っ向から否定するつもりはないが、あまりにも安易な投資に走っているような気がしてならないので、ここで警鐘を鳴らしておきたい。
金利水準が高いということは、高インフレに悩まされていることの裏返しでもある。実際、トルコの政策金利は現在17.5%と非常に高いが、インフレ率は10.9%もある。インフレは、貨幣が減価するということでもあるので、本来こうした国への投資は敬遠されがちなものである。トルコの実質GDPは6.1%と相対的に高いものの、6%の成長率で11%近いインフレ率というのはかなり高すぎると言わざるを得ない。中国のように年率11%ものスピードで成長している国のインフレ率ですら、3%台である。
トルコに限らないが、このような新興国の通貨は何かのきっかけで暴落したりすることがあることをよく理解しておかなくてはならない。2001年、新興国全体が大きく崩れたことがあった。このとき、トルコリラ円は年初、一時177円台で取引されていたものが、10月には73円台になっている。173円ではない。73円である。つまり通貨の価値が半分以下になってしまったのである。また、翌年2002年にもわずか3カ月で、101円から68円まで下落するという激しい相場展開があった。さらに、直近では2006年5月から6月にかけての2ヵ月足らずで、86円台から65円台まで25%近くも下落する展開もあった。新興国通貨は短期間でしばしば大きく変動する、ということは肝に銘じておく必要がある。レバレッジをきかせた投資などには非常に大きなリスクが内包されているということを理解しなければならない。
「ハイリターン」の裏には必ず「ハイリスク」が潜んでいるのである。
今井雅人
グローバルインフォ株式会社
代表取締役社長
1985年上智大学卒業、三和銀行に入行。1987年よりディーリング部門へ。シカゴ支店で先物取引等のディーリングを経験。1993年からは東京本店の円デスクのチーフディーラー。2000年より三和銀行、UFJ銀行の為替部門の統括次長。2004年に独立。マットキャピタルマネージメントCEO、早稲田大学インド経済研究所研究員を兼任。元、外為市場委員会委員、東京フォレックスクラブ理事