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http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20070411/122550/
上海でも甘くない緑茶や麦茶が買えるようになった
中国南部に住む日本人ビジネスマンはひと頃、現地で買えるボトル入りのお茶はどれも砂糖が入っていて、自分たちの洗練された味覚には甘すぎるとぼやいていた。しかし今は、なべて世はこともなし。昨年来、彼らはペットボトル入りの無糖の緑茶や麦茶を買えるようになった。キリンやアサヒといった日本企業が上海から出荷するからだ。
状況が変わったのはそれだけではない。広東省の省都、広州では、日本人家庭は子供を日本人学校に通わせられるし、日系スーパーで買物もできる。高級な日本料理店で食事もでき、中には東京から刺身を毎日航空便で取り寄せている店もある。ホステスを置くバーでさえ日本人の好みに合わせ、歓楽の夜を過ごす日本人サラリーマンが好む開放的なラウンジとチップ不要の流儀を導入している。
反日デモが起きても、対中投資は減らなかった
広東社会における日本の勢力拡大を見て驚く人もいるかもしれない。2005年4月に中国全土で広がった反日デモが記憶に新しいからだ。当時、中国各地で日本人経営の工場や領事館、料理店などが投石デモの標的となる中で、日本の投資家がベトナムなどの低コスト生産拠点に逃げてしまうのではないかという懸念が沸き起こった。
それから2年、日本の対中国投資はほとんど息継ぎさえしなかったことが分かる。もっとも各種調査によると、低コスト型の日本メーカーの中には、(反日デモの影響というより)珠江デルタ一帯の賃金上昇を嫌って、生産拠点をベトナムに移した例はある。
にもかかわらず、日本企業の対中投資額は2005年、前年より20%以上多い60億ドル超に達し、2006年上半期の数字からもおおむね堅調な投資動向がうかがえる。経済産業省によると、中国で事業展開している日系企業の現地雇用者数は2006年、推定140万人(前年比18%増)に上った。それに対してインドでの雇用者数は5万5000人に過ぎない。
2007年 日本の最大貿易相手は中国に
温家宝・中国首相の訪日の背景には、こうした経済的結びつきの深まりがあった。日中間の貿易額は昨年初めて2000億ドルの大台を突破。2007年には、香港を除く中国本土が米国を抜いて日本の最大貿易相手国になると見られている。
温家宝首相の思惑は、昨年10月の安倍晋三首相による北京訪問の意義を強化することだった。双方はその際、政治的・歴史的相違は脇に置き、「戦略的互恵関係」の構築を目指すことで合意している。
2010年 広州にあるホンダ、日産、トヨタの工場で100万台生産
日本の自動車メーカーが大挙して押し寄せている広州では、そうした「戦略的互恵関係」が既に具体的な形を取り始めている。中国進出に遅れを取ったトヨタ自動車は昨年5月、広州汽車集団との合弁で、中国国内で最も先端的と言える自動車工場を南沙に建設した。
南沙はかつてバナナとエビを主要産物とする湿地帯だったが、現在は広州の重工業育成戦略の中枢を担う土地である。ロボットが立ち並ぶ同工場では、今年15万台の「カムリ」が生産される予定だ(大半は中国共産党高官の好む黒塗り)。
2010年までに、ホンダ、日産自動車、トヨタが有する広州の4工場の年間生産台数は合計100万台に達する見通しで、その大半は中国国内向けに販売される。中国は昨年、日本を抜いて世界第2位の自動車市場となった。
上海から再び広東へ
日本の自動車メーカーが向かうところ、日本の部品メーカーや関連サービス会社も集結する。日本第2位の鉄鋼メーカーであるJFEスチールでさえ、一貫製鉄所の建設という遠大な計画は断念したものの、自動車用鋼板の製造を中国企業との合弁で2006年4月に開始している。
日本貿易振興機構(ジェトロ)広州事務所の塚田裕之所長によれば、広東省で事業を行っている日本企業の数は現在3000〜4000社にのぼる。日本の投資が集中しているもう1つの地域、上海近郊とほぼ肩を並べる数字である。
塚田氏の話では、日本企業は1990年代前半に電機工場や組立工場を深セン、東莞などに建設し始めた。10年後、日本企業の関心は上海に移ったが、最近また広東に戻って来ているという。自動車産業のおかげで、自動車関連のエレクトロニクスから法律業務に至るまで、あらゆる需要が爆発的に増えているからだ。
「魅力は政治リスクを超える」「賃金の高騰はほとんど問題ない」
珠江デルタの沿岸部には町並みが整備された経済特区の珠海市がある。同市に拠点を置くキヤノン珠海の董事長を務める穐山和博氏は、真新しい工場に向かって石が投げつけられた2005年当時の反日デモを振り返る。しかし、彼はデモの規模はメディアによって大袈裟に伝えられたと言い、いずれにせよ、中国の魅力は政治的リスクをはるかに上回ると指摘する。
、穐山氏はさらに、賃金の高騰(中国南部の一部都市では過去3年間で賃金が50%も上昇した)もほとんど問題ではないと言う。デジタルカメラのような製品では、最終組立コストのうち人件費の占める割合はわずか5%に過ぎないからだ。
「中国からベトナム、インド、さらにはアフリカへと(より低い賃金コストを求めて)転々と場所を移すこともできる。だが、それは焼畑のようなやり方だ。現実はそんな風にはいかない」(穐山氏)
ジェトロの塚田氏も、市場及び生産拠点としての中国の魅力は、賃金の高騰や停電、戦争から尾を引く日本に対する悪感情などの問題を凌駕しているという見方に同意する。「いくつか問題はあるとしても、日本企業にとって中国は依然抗し難い魅力を備えている」(塚田氏)。