★阿修羅♪ > 国家破産50 > 113.html
 ★阿修羅♪
株主にも「役員報酬」や「取締役候補」について発言させるべきか = FINANCIAL TIMES
http://www.asyura2.com/07/hasan50/msg/113.html
投稿者 ダイナモ 日時 2007 年 4 月 11 日 13:54:07: mY9T/8MdR98ug
 

http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20070406/122293/

 それは米国の企業史にささやかながら新たな歴史を刻むはずだった。ヒューレット・パッカード(HP)の株主たちが米国で先陣を切って、株主に取締役候補を推薦する権利を与えるという目下話題の議案に票を投じようとしていたのだ。

 だが、米国産業界に変革の風が吹き荒れているとしても、HPが先月、年次株主総会を開いたカリフォルニア州サンタクララのホテル「ハイアットリージェンシー」では、風は穏やかだった。由緒ありげなカーペットの上を会場に向かって進む株主の頭にあるのは、ガバナンス(企業統治)の問題よりも無料で供されるクッキーやコーヒーの方らしかった。


闘いの最前線となったHP

 HPは取締役や報道関係者にスパイ行為を働いたことが露呈し、企業への発言力を高めたい州の年金基金や組合年金基金らとの闘いの最前線になっていた。しかし株主の1人、ロバート・スチュワート氏はそんな事には関心がない。ツイードのジャケットを羽織ったロッキードマーチンの元エンジニアは、HPの経営陣と敵対的な株主の丁々発止に胸を躍らせるより、会社の過ぎし日の思い出を語りたがっていた。

 「ある時、株主総会に出席したら、ビル・ヒューレット(HPの共同創業者)が振り返って、こっちを見たんですよ」。50年ほど前、350ドルで HP株10株を購入したスチュワート氏はこう言う。「彼は手を差し出して、『やあ、ボブ(ロバートの愛称)、相変わらずロッキードで働いてるのかい』と声をかけてきた。それまで一度も話したことがなかったのにね」。

 スチュワート氏をはじめとした個人株主の関心の乏しさを見れば、総会の帰結はほぼ予想がついた。取締役の選任過程に投資家を参加させようとする提案(取締役会の構成を牛耳る会社側の影響力を弱めるのが狙い)は否決された。HPのCEO(最高経営責任者)であるマーク・ハード氏が唱導する反対票が過半数をわずかに上回る票を集めたのだ。

 とはいえ、投票結果はハード氏の敵対勢力が実質的な勝利を宣言するのに十分な僅差だった。当該提案を支持した組合の1つ、米地方公務員組合(AFSCME)のリチャード・フェラート氏の言葉を借りれば、提案に反対した票が52%という数字は、モノ言う株主にとって「画期的とも言える成果」だ。


米国で繰り広げられているガバナンス論争

 HPの決議と関係者の反応は、今の米国で繰り広げられているガバナンス論争を象徴している。

 この数十年間、米国の株主は会社運営を巡る経営者側の優位を崩そうと努めてきたが、その試みはしばしば法的もしくは実務的な障害に阻まれてきた。米国では地方分権が進んでおり、株主投票などの企業の重要事項を定める州の法規に連邦政府が介入するのは難しい。これに法的手続きの複雑さが加わって、モノ言う株主にとって大きな障壁となっていた。

 事態をさらに難しくするのが、英国や欧州大陸よりはるかに多様な年金基金の存在だ。投資家の間でコンセンサスを取りまとめるのが困難になるからだ。また、米国の株式市場が享受してきた長期にわたる上昇相場のおかげで、株主、特に規模の大きい投資家や個人投資家は、自分たちに厚く報いてくれた体制を乱す気にならない。

 こうした歴史的な経緯や規制の障害が相まった結果、モノ言うファンドマネージャーらの期待はあまり膨らまず、HPの決議のような僅差での敗北でさえ、特筆すべき勝利と喧伝することになるわけだ。


果たして株主の影響力が強まることはいいこと?

 しかし、ここにきて役員報酬や取締役の選任・解任を巡って、取締役会に対する株主の力が強まる兆しが見える。だが、ここで問題なのは、株主の影響力が拡大するが果たして歓迎すべきことなのか、ということだ。

 株主の影響力が拡大することは、企業の不祥事や甘い内部統制、疑わしい会計手法が浮き彫りにした経営陣の“独裁”に対する遅すぎた矯正となるのか。あるいは、株主の影響力拡大は激変する市場についていこうとする企業努力を阻害し、会社をヘッジファンドや特定利益団体からの攻撃に弱くしてしまう恐れがあるのか――。

 2〜3週間後に本格化する今年の株主総会シーズンは、投資家の影響力拡大の程度と帰趨を占ううえで重要な役割を果たす。


退屈な総会から改革の場に?

 株主総会シーズンは長らく退屈なものだった。大人しく会場に座っている株主の懸念は、力ある経営陣にあっさりと退けられてきた。しかし今、企業統治を推進する活動家は、改革をもたらし得る要素があると指摘する。彼ら曰く、企業統治を後押しする要素は3つ。つまり、スキャンダルと政治、そして外国の株主だ。

 エンロン時代の企業犯罪が人々の記憶にまだ新しい中、HPのスパイ事件やオプション付与日操作(数百社の企業の幹部が自らの報酬を人為的に膨らましたと非難されている)を巡る騒動など、新たなスキャンダルが次々と明るみに出て、米国企業は過去の過ちから何一つ学んでいないという意識が広がった。これが次にワシントンの新しい主人、つまり昨年11月に議会の過半を取り戻した米民主党に、米国の企業統治の弱点とされる問題に取り組むことが政治的な重要課題であるとの認識を芽生えさせた。

 さらに、ホームデポのロバート・ナルデリ氏やファイザーのハンク・マッキンネル氏のような解任された経営者の巨額報酬がメディアで大々的に取り上げられたことも、変革を促す圧力となった。最後に、英国のハーミーズ、オランダのABPなど米国で巨額資産を運用している外国の年金基金が最近、企業統治問題で規制当局に働きかけることを決めたことが、こうした流れに拍車をかけた。

 1600以上のファンドマネージャーに助言サービスを提供しているインスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)のパトリック・マクガーン氏は、「企業の取締役会は今、圧力を受けて積極的に株主の要求に対応し始めている」と言う。

 こうした動きが特に顕著なのは、役員報酬及びその業績連動性に対して発言力を強めようとする株主の努力だ。ほんの数カ月の間に、米国資本主義の副産物としておおむね許容されていたCEO報酬は、企業の行きすぎを表す象徴となった。


政治問題に発展

 ナルデリ氏やマッキンネル氏が身につけたゴールデンパラシュート(解任時に受け取る巨額の退職手当)が開くのを見て、株主らは役員報酬に関する拘束力のない勧告投票を要求し始めた。英国で2002年に導入された制度に似たもので、ここ数カ月の間に60社以上の米企業が「報酬に対する発言権」を株主から要求された。

 政治家も関心を示し始めた。ジョージ・ブッシュ大統領は先にこの問題に触れ、現代米国における所得格差の表れだと述べた。下院金融サービス委員会議長を務める民主党のバーニー・フランク議員はさらに一歩踏み込み、上記の勧告投票の法制化を訴え、先月大々的な公聴会を開いた。

 一連の動きが落ち着く前に、保険大手アフラックは米企業として初めて、2009年から役員報酬に関して株主投票を認めることに合意した。また、当初標的となった60社強の企業のうち少なくとも10社がモノ言う株主の要求に屈し、役員報酬に対する株主投票権の導入の是非を問う議決を行うことにした。

 製薬大手ファイザーや保険大手AIGなどの一部企業は株主の反乱を食い止めようとして、AFSCMEや2200億ドルの運用資産を誇るカリフォルニア州職員退職年金基金(カルパース)と交渉し、勧告投票を導入する見込みとなった。あるモノ言う株主は誇らしげに言う。「我々の砲撃が止んでみれば、報酬を巡る勧告投票は、導入するか否かの問題ではなく、時間の問題となった」。


不安を覚える経営陣

 一方、経営陣の方は、「報酬に対する発言権」運動の成功とその広がりの速さに不安を覚えている。経営陣からしてみれば、役員報酬を巡る争いと、それが取締役の選任や企業が長年秘密にしてきた政治献金などの問題にも発展する恐れは、これまで株主と米国経済に厚く報いてきた現行制度に対する攻撃なのだ。

 現行制度を擁護する向きは、企業戦略の策定と実行には経営陣と取締役会に十分な裁量の余地が与えられなければならないと主張する。不満のある株主はいつでも自分の意思を明らかにする、すなわち株を売り払う権利があると彼らは指摘する。

 米国の一部大企業のロビー団体ビジネスラウンドテーブルの代表を務めるジョン・カステラーニ氏は、「そもそも企業の意思決定というものは民主的なプロセスではない」と言う。「もし我々が株主投票制度に移行したら、取締役やCEOは戦略策定や製品開発、社内統制に時間を割くより、支持派の人間やロビイストと会うことに時間をかけるようになるだろう」。

 懸念材料は時間の浪費だけではない。既存の秩序を崩すと、企業乗っ取り屋やヘッジファンドのゲリラ戦法に隙を与えることになり、連中は透明性の高まった制度を利用し、自分たちの短期的な狙いを実現させようとすると経営幹部らは警告する。「それは企業に起こり得る最悪の事態だ」と語るのは法律事務所ジョーンズ・デイのマナン・シャー氏。「開拓時代の西部みたいなもので、ヘッジファンドが会社のためを思って行動する株主にただ乗りし、自分の狙いを押し付けようとする」。

 株主の要求に対して米国企業が抱く懸念は、ヘッジファンドが仕掛ける買収にとどまらない。エンロン事件後の厳しい法規制やプライベートエクイティ(未上場株)投資会社の台頭と相まって、株主の権力拡大は上場企業の起業家精神を損ね、米国経済の競争力をそぎかねないと懸念されているのだ。


で、投資家の発言権を強めるべきなのか

 メディア界の大物バリー・ディラー氏も巨額報酬で激しい非難を浴びた1人だが、同氏が言うには、現在の環境は取締役を怯えさせ、CEOを神経過敏にし、結果的に彼らの多くを買収ファンドに向かわせる可能性がある。「人はそんな社会を本当に望むのか?もしそんな社会になったら、誓ってもいいが、米国の競争力はおしまいだ」。メディア・インターネット複合企業IACを率いるディラー氏はフィナンシャル・タイムズにこう語った。

 こうした懸念は規制当局や企業統治の専門家も共有している。取締役会の構成に対する投資家の発言力を強めるべきか否かを巡って、米証券取引委員会(SEC)の内部で意見が割れているのは周知の事実。5人の委員の間で意見が割れた主因は、ヘッジファンドが借りた株で議決権を行使することが可能なため、不当に突出した影響力を発揮できるという認識である。

 株主に助言サービスを提供するプロクシーガバナンスも先月、同様の懸念を表明した。「報酬に対する発言権」を求める仲間と袂を分かち、全企業一律に発言権付与を要求する意思がないことを明らかにしたのだ。「我々が懸念するのは、勧告投票が単に株主の抗議票に成り下がることだ」と同社代表のジム・メリカン氏は言う。

 企業統治改革の提唱者の中にさえ、政治家の後押しを受けたモノ言う株主による企業攻撃は逆効果を招く恐れがあると見る人がいる。

 「政治色の強いカルパースやAFSCMEなどは、すべての会社が取り組むべき問題を指摘したという点で大いに敬意を払われて然るべきだ」。こう話すのは、企業と投資家を招いて企業統治フォーラムを運営している投資銀行家のゲイリー・リュタン氏。「しかし、これらの問題は政治的解決よりも市場による解決が必要だ」。

 こうした見方に反論する者もいる。海外のファンドマネージャーなどがその筆頭だ。海外の投資家に言わせると、株主の影響力拡大に反対する人は、米国の投資家が報酬を巡る投票や取締役選任の投票の権利など、他国では当たり前の権利を奪われているという事実を都合良く忘れている。


「米国産業界は企業を支配する者が誰なのかを認めようとしない」

 「米国産業界は企業を支配する者が誰なのかを認めようとしない」。ハーミーズで株主に対するサービス業務の長を務めるポール・マン氏はこう言う。「本来、企業と株主の間に対立があってはならないはず。我々は皆同じ目標を目指している。より価値のある会社という目標だ」。

 そうした考え方自体が米国企業や投資家にとって呑み込み難いものかもしれない。米国の企業と投資家の関係は、長年にわたる対立によって形作られたからだ。だが、もしも企業が株主に発言力を与えることに利点を見出し、株主側が新たな力を慎重に用いたならば、米国産業はスチュワート氏のような株主にカリスマ経営者の50年に一度の握手よりもっといい思い出を与えられるだろう。

 次へ  前へ


  拍手はせず、拍手一覧を見る

▲このページのTOPへ      HOME > 国家破産50掲示板

フォローアップ:

このページに返信するときは、このボタンを押してください。投稿フォームが開きます。

 

  拍手はせず、拍手一覧を見る


★登録無しでコメント可能。今すぐ反映 通常 |動画・ツイッター等 |htmltag可(熟練者向)
タグCheck |タグに'だけを使っている場合のcheck |checkしない)(各説明

←ペンネーム新規登録ならチェック)
↓ペンネーム(2023/11/26から必須)

↓パスワード(ペンネームに必須)

(ペンネームとパスワードは初回使用で記録、次回以降にチェック。パスワードはメモすべし。)
↓画像認証
( 上画像文字を入力)
ルール確認&失敗対策
画像の URL (任意):
投稿コメント全ログ  コメント即時配信  スレ建て依頼  削除コメント確認方法
★阿修羅♪ http://www.asyura2.com/  since 1995
 題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
掲示板,MLを含むこのサイトすべての
一切の引用、転載、リンクを許可いたします。確認メールは不要です。
引用元リンクを表示してください。