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米国住宅市場: 「大宴会」の後、世界で二日酔いが始まる=英『エコノミスト』誌
http://www.asyura2.com/07/hasan49/msg/701.html
投稿者 ダイナモ 日時 2007 年 3 月 28 日 08:49:12: mY9T/8MdR98ug
 

http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20070327/121826/

 6月は米国で、「全国住宅所有者月間」である。「全国差し押さえ月間」とした方がふさわしいかもしれない。住宅ローン市場の一角、特に信用度の低い人向けの「サブプライム」ローン市場は、ひどい焦げ付きに見舞われている。サブプライムローンの借り手の8人に1人が返済遅延に陥っており、さらに多くのローンで返済初期だけの低金利が期限を迎え、毎月の返済額が借り手の月収を上回るようになるにつれ、何十万もの人が街頭に放り出される運命にある。

 ほんの数週間前まで、米住宅市場の落ち込みは最悪期を脱したとの声がちらほら聞かれた。今はなかなか聞くことができない。経済全体について悲観的になるのは早すぎるにしても、不動産鑑定士なら誰もが、信用引き締めと住宅の供給過剰を見て取るだろう。経済の基盤もさして良くない。住宅価格の下落は、経済を押し上げてきた個人消費を冷やす。

 他国もまた、心配そうに米国を見ているかもしれない。実際、遅すぎたくらいだ。今のところアジアと欧州の経済が自力で健闘しているものの、米国の景気後退は到底歓迎できない。だが懸念の真因は、米国の住宅ブームが低金利を呷る世界的な大宴会の一部だったように、その破綻もまた世界的な物語の一部かもしれない、という点にある。


長い長い宴の後で

 世界各地で耳を澄ますと、住宅価格の急落はまだ始まっていないにせよ、米国の苦境のこだまが聞こえてくる。まず、サブプライムローンの借り手から話を始めよう。米国では、この人たちは当然ながら、住宅融資をより低利かつ固定金利で受けられる人たちよりも貧しい(そして白人でないケースの方が多い)。彼らの多くは住宅市場の大パーティーに、既に価格が高騰したころになって遅れてやってきた。

 多くの人が、顧客の返済能力よりも自分たちの手数料を気にする仲介業者に勧められて住宅融資を受けたようだ。そして、融資した貸し手――そのうち数十社が店じまいを強いられた――は、債務不履行の比率を甘く見積もった。寛大に見れば、これはサブプライム市場が比較的未成熟だったことに帰すことができる。厳しく見れば、貸し手側の動機として「証券化」効果を指摘できるだろう。つまり、融資は一まとめにして売却し、さらにそれを小分けにしてパッケージし直し、再販売できると知っていることが甘い判断を生んだわけだ。

 英国人にとっては、不安を抱かせるほど馴染みのある話に聞こえるだろう。借り手、特に最初の家の購入を望む若者や不動産が年金の役割を果たすと考える家主たちが予算を無理に拡大するために、「自己証明」による住宅ローン(米国人向けに翻訳するなら、「証明書類なし」あるいは「嘘つき」のローン)及び一定期間は返済が金利のみのインタレスト・オンリー・ローンが以前より一般的になった。

 スペインでは、貸し手が若い移民集団を勧誘している。大抵、信用履歴が短いか不完全で、しばしば彼ら自身が建設現場で働いているような人々である。

 米国のもう1つのテーマは、住宅購入者とローンの貸し手が金融緩和政策の報いを受けているということだ。ITバブルの崩壊後、米連邦準備理事会(FRB)が金利を引き下げた時、FRBは別のバブルを住宅市場で膨らませた。欧州でも同様の筋書きが見られる。単一通貨はユーロ圏の経済成長の旗手スペインとアイルランドに、その好況に見合わない低金利を提供し、過去10年間で、スペインで180%、アイルランドで250%という住宅価格高騰をもたらした。

 今や両国とも住宅に依存し過ぎているように見える。住宅価格のインフレが緩和して――緩和して――9%程度になったスペインでは、住宅投資がGDP(国内総生産)の7.5%を占めている。もしこの比率が例えば6%に下がったら――それでもユーロ圏の平均よりも高い――、住宅建設部門の雇用喪失が年間の雇用の伸び率を1%押し下げるだろう。

 アイルランドはもっと危ういように見える。驚異的なことにアイルランドでは住宅建設が直接、国民所得の15%、雇用の12%を占めている。住宅価格は高騰したのに賃貸料はここ数年、低迷しており、ダブリンの4%という賃貸利回りは借り入れコストさえカバーできない。今では住宅価格も落ち着き始めている。ダブリンにあるユニバーシティ・カレッジのモーガン・ケリー氏によると、住宅価格と賃貸料の比率を2000年前後の水準に戻すには、今後8~9年で実質価格が40~60%下がる必要があるという。


次に何が起きるのか?

 米国やその他諸国の人々は、英国とオーストラリアの軟着陸らしき様子に安心感を見いだしたいところだろうが、それは間違いだ。確かに、英国の住宅市場は 2005年の想定外の利下げ以来、息を吹き返した。しかし、それ以降の利上げの影響はまだ表れていないようである。そしてオーストラリアの住宅価格は地域によって大きなバラつきがある。シドニーのアパートを買って貸す投資家は、物件価格が値下がりしており、着陸はかなり荒っぽいと感じるかもしれない。

 当然、米国人たちは、政策立案者に何ができるのかと問うだろう。数年前の金融政策を元に戻すのは、もはや手遅れだ。今利下げをすれば、間違いをさらに大きくする恐れがある。FRBの主な懸念はインフレであり、それは正しい。特にサブプライム市場を中心とした融資基準の緩さを考えると、ノンバンク住宅金融会社への監督を、それも州レベルよりも連邦レベルで引き締めるべきだという主張もある。

 また混乱の多くを証券化のせいにしたくもなるだろう。だが、証券化はあらゆる融資市場の流動性を高めることで、総じて恩恵をもたらしてきた。そして、返済遅延や差し押さえはあっても、サブプライムローンはアラン・グリーンスパン氏がかつて融資の民主化と呼んだものの一部だ。おかげで、より多くの米国人が融資を受けて住宅を買えるようになった。そして大部分の米国人は何とかやっている。

 それでも経済的な悪影響は大きいものとなりかねない。政治的な悪影響も同様だ。米国の最近の経済的成功の大半は、上層部、特に金融業界の人たちによって吸い上げられてきた。下層の多くの人たちは今、返済できない債務と家の喪失に直面している。

 大衆迎合型の政治家は「ハンプトンの別荘*」と「持ち家なし」を対比して大騒ぎするだろうが、それより彼らはむしろ、持ち家への執着を作り出すのをやめるべきなのだ。人々が望むのであれば、融資を受けて自分の家を買う自由があるのは結構なことだ。政治家が、所有自体が目的の持ち家を奨励するのはよろしくない。米国のように、政治家が税控除でそれを助長するのは、愚の骨頂だ。


*=ハンプトンはニューヨーク近郊の高級リゾート地で、金持ちの別荘が多い

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