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http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20070322/121554/
三洋電機会長の野中ともよが3月19日に辞任した。辞任劇の裏には三洋電機が抱える深い闇が広がっている。辞任に至った経緯を検証してみよう。
3月7日水曜日。不正会計問題に揺れる三洋電機は臨時経営会議を招集した。決算訂正を巡り金融庁や証券取引等監視委員会と続けてきた折衝が一段落し、この日は副社長の前田孝一が経緯を報告するだけの予定だった。
ところが、ここで野中は突然、“爆弾動議”を炸裂させた。
「市場の信頼を取り戻すために、第三者委員会を設置したいと思います」
あっけに取られた経営陣は反対もできず、議案は翌週の臨時取締役会に上程された。野中は第三者委員会に、日興コーディアルグループの不正会計事件で特別調査チームを率いた弁護士の国広正を担ぎ出す算段までしていた。
「免責」を狙って自爆?
3月12日の週に開いた臨時取締役会では、体制を立て直した金融3社が反対に回ったため、野中提案は決議に持ち込むことすらできず却下された。
それでも諦めのつかない野中は3月19日月曜日の朝に再び臨時取締役会を招集した。
だが土、日で議論を尽くした金融3社は野中を切る腹を固めていた。
19日朝に開かれた臨時取締役会は既に大勢が決しており、ただ1人、野中と歩調を合わせてきた社長の井植敏雅も賛成はしなかった。
「19日の動議は限りなく“自爆”に近い」
三洋電機の関係者は野中の行動をこう分析する。ほんの一時期とはいえ、野中はCEO(最高経営責任者)兼会長を務めた人物である。2005年3月までは日興フィナンシャル・インテリジェンスの理事長を務めたこともあり、財務の知識は持っている。
「三洋電機の不正会計は今進んでいる訂正作業で修正し切れるほど甘くない。この闇を見逃して後で自分も“同罪”になることを恐れた野中は『私は正義を貫いた』という痕跡を残すため、辞任覚悟で声を上げたのではないか」と関係者は推測する。
「火中の栗」たらい回し
このシナリオを裏づける動きがある。三洋電機は4月上旬をメドに4期分の決算訂正報告書を出す線で作業を進めているが、現時点で報告書を承認する監査法人が決まっていない。
問題が発覚した当初、三洋電機はあずさ監査法人に監査を依頼した。しかし、あずさは「会計士不足」を理由に断わり、今度はみすず監査法人に駆け込んだ。だが、みすずにその余裕があるはずもなく、あらた監査法人に最後の望みを託したが、あらたも火中の栗を拾うつもりはなく、振り出しに戻って今はあずさと交渉している。
今回、訂正する決算以外にも、2005年9月期の中間配当など、かねて本誌が指摘してきたように疑わしい会計処理はいくつもある。
すべての膿を出し切った時、果たして三洋電機は上場企業として存続できるのか。そこに確信が持てないから、日本を代表する3大監査法人が爆弾の押しつけ合いを演じているのだ。
歴代、監査役を送ってきた三井住友銀行にとって、創業家と主力銀行のでたらめな関係が白日の下にさらされるのは耐えられない事態だろう。米ゴールドマン・サックス(GS)も、上場廃止で出資金が紙くずになってしまうのは困る。キャスティング・ボートを握っている金融3社にとって、野中の提案は「バカも休み休み言え」という内容だった。
当面の焦点は野中の動向だ。当然、会社と守秘義務契約を結んでいるはずだが、その内容が社会正義に反しているのであれば、口を閉ざす必要はない。真実を知る野中は、どこまで本当のことを話すのか。金融3社は戦々恐々としているに違いない。 =敬称略
日経ビジネス 2007年3月26日号8ページより