★阿修羅♪ > 国家破産49 > 584.html ★阿修羅♪ |
Tweet |
http://www.nikkeibp.co.jp/sj/column/o/73/
日本郵政公社、年金積立金管理運用独立行政法人(以下GPIF)といえば、郵便貯金、簡易保険の資金、あるいは年金積立金という形で、国民から金を預かっていることはどなたもご存じだろう。
ところが、その大切な金を、わずかの間に何十億円という単位でドブに捨ててしまったと聞いたらどうだろう。まさに、そのような出来事が起きたのだ。
2007年2月13日、日本郵政公社はライブドアに対して、総額10億4000万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こしたことを明らかにした。郵政公社が、かつて保有していたライブドア株は292万株。これが、株価下落によって9億4600万円の売却損が生じたというのである。これに訴訟費用をプラスしたのが請求額の10億4000万円だ。
原告は郵政公社が運用を委託した信託銀行となっているが、実質的な原告は郵政公社であることは言うまでもない。
GPIFもまた、2006年12月27日に同様の訴訟を起こしている。
GPIFの損失額はさらに大きく、40億円あまりに上る。GPIFは、ライブドア株を最盛期にはなんと1427万株も保有。63億 5582万円を投じて買った株式を、ライブドア強制捜査後に全株売却して、手元には19億8341万円しか残らなかったのだ。去年のあのライブドア騒ぎのどさくさにまぎれて、国民の大切な金が失われてしまったのである。
通常ならば、株価が下落したからといって損害賠償などできない相談である。だが、両者は、ライブドアが有価証券報告書に虚偽の記載をしたことを問題にしている。相手がウソをついていたから自分たちは買ってしまったというわけで、言い分はもっともである。確かに、ライブドアのやったことは犯罪ではある。だが、はたして郵政公社、GPIFに落ち度はなかったのだろうか。
プロは買わないライブドア株
以前ならば、郵便貯金や年金積立金の運用は、国債の購入や財政投融資で行なわれていた。政府の保護を受けて、低リスクで高配当という、ぬるま湯のような状況で運用を続けていたのである。
だが、郵便局は公社化され、年金資金運用基金は独立行政法人化されたことで、そうした資金は自主運用しなければならなくなった。そこで、信託銀行を通じて株式を売買するということを始めたのである。
株式を買うのはいい。だが、なぜライブドアなのか。なぜ、日立、東芝、ソニーなどの株ではなかったのか。その理由を考えてみると、彼らがあまりにも金融や株式について無知だったことが分かってくる。
金融の専門家である知人によれば、ライブドアの株主は大部分が個人投資家であり、投資のプロである機関投資家は2割以下であったという。なぜプロがライブドアの株を買わなかったのか。理由は簡単である。ちょっとした専門家ならば、財務諸表を見ただけで、あんな会社に高い株価が付くのはおかしいと分かるからだ。
IT企業の旗手などと言われていたが、結局のところ、圧倒的に金をかせいでいたのはライブドア証券などの金融部門であった。本業のITで利益を上げていなかったことも、財務諸表を見れば一目で分かる。無理やりつり上げた株価だということが分かったはずだ。
国民から預かった金で博打を打ってしまった
郵政公社やGPIFの担当者が、どれだけ素人だったかは、さまざまな状況証拠からはっきりと分かる。
GPIFは、さきほどの数字をもとにすれば、平均445円で購入。139円で売却した結果、1株当たり306円の損失を出している。郵政公社の平均購入単価は分からないが、損失は1株あたり323円という勘定になるので、やはり購入額、売却額とも似たりよったりだろう。
いずれにしても、両者が株を購入した時期は、ライブドア株が既にブームとなり高値になったころである。そして、強制捜査が入ったところで、大損切りで売っているのだ。結局、郵政公社、GPIFとも博打に失敗したといっていい。
わたしが不思議でならないのは、なぜ東証一部、二部の会社ではなく、東証マザーズに上場しているライブドアの株を買ったかということだ。東証一部上場会社だけで、1700社以上も存在するではないか。まともな会社は日本中にいくらでもあるのに、彼らはライブドアを選んでしまったのである。
東証マザーズは、企業の経営が安定していない新興企業やベンチャー企業のために、条件を緩めたうえで上場させる場である。もちろん、そこには優れた企業もあるが、そうでない企業もある。玉石混淆の市場なのだ。
それでも、博打を打つことを覚悟で投資するならばいい。しかし、郵便貯金や年金保険料といった国民から預かった大切な金を運用することを忘れてはならない。利益の高そうなところを目指すのは当然にしても、何よりもまず確実なところに投資をしなくてはいけないのだ。
そうしたリスクの高い市場に、安定運用が求められる資金を投じることは正しい判断だったとは思えない。しかも、ブームになったあとに国民の金をつぎ込むという神経が分からない。
さらに言えば、ライブドアには、わずか4年あまりで株式を3万分割をしていたという事実がある。株式分割の結果、ライブドアの発行済み株式数は10億株を超え、企業規模と比べて、異常な株式数になっていた。あの規模の企業で3万分割をすることに、不審を抱くのが通常の神経というものである。多少でも株をやろうというのなら、それが株価つり上げのための取引だと分からなくてはいけない。
自主運用するなら勉強しなさい
百歩譲って、そうした株式の知識に欠けていたとしても、ライブドアがM&Aで買収、売却を繰り返していたことを、きちんと認識していなかったとしたら大問題だ。なぜなら、それはライブドアが実業の裏付けのあるIT企業ではなく、投資ファンドであることを明確に示しているからである。
さらに千歩譲っても、ライブドアがニッポン放送に敵対的M&Aを仕掛けていたことは、どんなに金融や経済に疎い人でもニュースで知っていたはずだ。敵対的M&Aを仕掛ける会社というのは、金融資本系のキツいビジネスをしている会社だと素人でも見当がつく。
しかも、敵対的M&Aというのは、米国では1980年代にはもう行き詰まっていたやり方である。それをいまさらながらやっているのだから、かなり怪しい会社だと感じなければいけなかった。
もう一つ付け加えれば、ライブドアは配当の原資があるのに配当をしていなかった。国民の資産をつぎ込むのに、配当をしていない会社に投資するということは考えられない。
というのも、郵貯にしても年金にしても、10年、20年という長いスパンで預かっている金である。それなのに、株の売却益という目先の利益を求めて博打を打ってどうするのか。
超素人ならいざ知らず、郵政公社やGPIFといえば、日本最大級の金を集めている機関投資家である。こうした異常さに気づかずに、ライブドア株に投資をしていたのは尋常ではない。結局、彼らがホリエモンを支えたとも言えるのだ。
今回の賠償請求が認められるかどうかにかかわらず、郵政公社、GPIFとも猛省したうえで襟を正してもらいたいものである。
確かに、郵政公社を例にとれば、郵貯残高だけで200兆円程度。この損失で経営がガタつくことはないだろう。だが、資金の自主運用はこれからも続いていく。これからも同じような失敗を繰り返されてはたまらない。
ブームだからといってライブドアの株に飛びつくようなレベルで株を買っては困るのだ。投資するならば、それなりの勉強をきちんとしてほしいのである。