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http://www.uekusa-tri.co.jp/column/index.html
内外市場で株価が下落した。中国、米国、日本市場が連動している。日経平均株価は2月26日終値18,215円から3月2日終値17,217円まで、4日間で998円、5.5%の下落を示した。私は1月10日付コラムで本年の金融市場の焦点として、米国経済、日銀の金融政策、円安進展をもたらしている「キャリートレード」の巻き戻しによる円高を提示した。1月21日付コラムでは、中国人民元切上げの可能性とそれに連動する円高進行の可能性を指摘した。
三つの懸念が重なっている。第一は米国経済の減速が予想以上に強まる可能性が生じ始めたことである。住宅価格の下落が米国の住宅投資、個人消費を大きく減速させる可能性がある。第二は中国経済調整始動のリスクである。中国株価の下落、中国人民元の上昇が重なれば、中国経済の減速が顕在化する可能性がある。第三は日本経済の調整始動の可能性である。
米国の2006年第4四半期実質GDP前期比年率成長率は、速報値の3.5%から2.2%へと大幅に下方修正された。民間住宅投資が年率で19%も減少したことに加えて、民間設備投資も減少に転じている。米国経済が緩やかな景気調整局面に向かう可能性が表面化し始めている。
中国経済では人民元上昇が景気調整の引き金を引く可能性がある。株価下落、人民元上昇のもとで中国経済の減速が強まれば、日本経済など世界経済に与える影響も軽微ではない。
日本経済は緩やかな改善が続いてきたが、2004年から2006年にかけての米国での短期金利大幅引上げ、2005年12月以降のEUの金利引上げを背景に、日銀による短期金利引上げは不可避の状況にあった。2月21日に日銀が無担保コール翌日物金利の誘導目標を0.25%から0.5%に引き上げたのは順当な対応であった。
だが、一方で財政政策が非常に強い緊縮の方向にあるため、2007年後半に向けて日本経済が調整局面に移行する可能性が存在する。緊縮色の強い2007年度一般会計予算は3月2日に衆議院予算委員会で与党の賛成多数で可決された。
1990年年初以降の株価下落局面と類似した部分がある。日本銀行は金利引上げを始動させた。株価が下落に転じ、個人消費が減退し、景気後退が始まった。日本銀行は2006年7月にゼロ金利政策を解除し、今回2度目の利上げに踏み切った。株価は下落に転じている。
ただし、株価の水準に割高感は存在しない。1990年以降のような株価の暴落は予想されず、株価が下落する局面では押し目買いが入る可能性が高い。しかし、財政政策運営が強度の緊縮を示しており、日本経済の改善が頓挫するリスクは排除できない。
株価下落、円高進行、景気悪化が表面化すれば、4月統一地方選挙、7月参院選に影響が生じると考えられる。安倍政権の内閣支持率は下落傾向を示しており、2007年を境界に政治状況が大きく転換してゆくことも予想される。
2007年3月2日
スリーネーションズリサーチ株式会社
植草 一秀