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1500兆円を活かす市場(大機小機)2006/04/01, 日本経済新聞 朝刊, 19ページ, , 908文字
個人金融資産が千五百兆円を超えた。この大いなる資産を活(い)かすことが喫緊の課題だ。
人口減少を迎えた日本は、生産活動において世界に劣後する。日本とは逆に、世界の人口は増加の一途だからだ。労働力が経済成長の要であることは経済の常識である。付加価値率さえ高めれば人口減少の心配は無用、日本経済の躍進が続くとの強気もあるが、それは情緒的すぎる。
とはいえ、日本企業を見捨ててはいけない。国際化し、世界をリードする企業が日本から生まれている。それだけの技術を企業は蓄積してきた。だが、世界で活躍する企業が日本に多くの富をもたらすとはかぎらない。生産をはじめとする活動拠点が国内に限定されないからだ。
日本国民の豊かさが、今後とも着実に増すのかどうか。この答えは、過去に蓄積された千五百兆円もの個人金融資産が未来に向けて有効活用され、富を生み出すかどうかに依存する。では、何が有効活用のための鍵なのか。
一つは企業経営の刷新だろう。
企業業績と株価が回復したため、自信を取り戻した経営者が多い。他方、買収の脅威から身を護るため、保守的な経営の選択も目立つ。二十年前に逆戻りしたような、株式持ち合いの再構築さえ模索されている。
防衛体制を固めることも経営の基本ではあるが、そんな技法はとうの昔に培われている。不足していたのは、事業展開に関し、数値的裏づけを有した意思決定である。この経営的弱点を克服できてこそ、日本企業全体の未来がある。個人からすれば、日本企業の情報は得やすい。その企業が頼もしいのなら、金融資産を託して大満足である。
もう一つは健全で自由闊達(かったつ)な金融市場の成立だ。
日本の金融市場は規制に慣れすぎである。最低限のルールを除き、政府が金融に注文をつければ、ろくな結果はない。現実はといえば、量的緩和の解除に対する政府の無数の口出しが記憶に新しい。金融とは、口を出せば操作可能だと誤解しているようだ。
金融は変化自在、足が速い。日本国民は比較的従順だが、企業が頼りなく、政府が小うるさいと知れば、やがては資金を海外逃避させよう。そうならないため、企業経営と金融市場のたゆまぬ改善が求められる。(癸亥)