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http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20070215/119097/
性能、価格の両面で激しい競争が繰り広げられている薄型テレビなどのデジタル家電市場。そのあおりを受け、中核部品であるシステムLSI(大規模集積回路)を手がける半導体メーカーにかかる負荷も日増しに高まる。より高い性能の製品を多品種少量で生産することが求められているからだ。実際、LSI を主力とするNECエレクトロニクスやルネサステクノロジなどは、業績の低迷が続いている。
こうした負荷を低減する技術が、東北大学の未来科学技術共同研究センターによって開発された。大見忠弘教授の研究室と、東京エレクトロンやアドバンテストなどで構成する産学連携プロジェクト「顧客ニーズの瞬時製品化技術(DIIN)」が開発した「マイクロ波励起高密度プラズマラジカル反応」と呼ばれるLSIの製造技術である。
【家電の発熱を抑える】
「従来の(LSIの)製造技術は限界が見え始めている」と語る大見教授が指摘する課題は、大きく2点。1つ目は「LSIの動作速度の限界」だ。現在のMPU(超小型演算処理装置)やシステムLSIは、命令を実行する周期を示す動作周波数の引き上げが難しくなっているという。事実、米インテルのパソコン向けのMPUは、2年前に動作周波数が3.8ギガヘルツ(ギガは10億)の製品が出て以来、それを上回る製品が出ていない。これは、周波数を高くすると、消費電力や発熱が実用レベルを超えて大きくなってしまうからだ。
DIINプロジェクトの新技術を使うと、この高速化の壁を乗り越えられるという。「消費電力や発熱は従来の低いレベルのまま、100ギガヘルツで動作するLSIも製造できる」(大見教授)。
大見教授が指摘するもう1つの課題は「多品種少量生産への対応」。従来の製造技術はプロセスの切り替えに長い時間を要するため、1つの製造ラインで多品種の製品を作るのが難しい。DIINプロジェクトの新技術はこうした制約がなく、製造プロセスを切り替えても短時間の調整で高い歩留まりが実現するという。
新技術の実力には未知数の面もあるが、低迷が続くLSIメーカーの現状を打破する可能性を秘めているのは確か。にもかかわらず、「日本のLSI メーカーに呼びかけているが、導入の打診は今のところない」と大見教授は嘆く。LSIメーカーには今も、外部からの技術導入を嫌う「自前主義」が根強く残っているためと見られる。
【クリーンルームの教訓どこに】
そんな日本勢を尻目に、インテルがDIINプロジェクトの新技術の導入を検討していることが、本誌の取材で明らかになった。
インテルは「現時点では何も言えない」(日本法人)とコメントを控えているが、DIINプロジェクトの関係者によると、昨年12月上旬にインテル本社の幹部が来日、大見教授らに導入の方針を伝えた模様だ。決まれば、世界初の採用となる。
現在、業績が頭打ちの傾向にあるインテルだけに、新技術の導入をきっかけに成長路線に転じる狙いが読み取れる。というのも、今回と同じような状況が過去にもあったからだ。大見教授は1980年代後半、製造ラインの歩留まり低下が原因で経営危機にあったインテルを救った実績を持つ。
大見教授は当時、半導体の歩留まりを向上させる高性能クリーンルームの技術を研究していた。国内各社に導入を提案したが、「自前でできる」とする企業ばかりで、聞く耳を持つ人はほとんどいなかったという。そんな中、インテルが指導を求めてきた。
教授の提案を全面的に受け入れたことで、インテルの製造ラインの歩留まりは飛躍的に向上した。これをきっかけにMPU市場で主導権を握り、半導体業界トップの地位を築いた。
自前主義に固執する日本勢とは対照的に、再び「日本発の技術」で成長路線に転じようとするインテル。歴史はまた繰り返そうとしている。