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無駄な公共事業で破産する自治体
外資に自治体再建を丸投げする安倍政権
構造改革の矛盾が次々と明らかとなるなか、安倍内閣に対する国民の不満が高まっている。
朝日新聞社が1月20日、21日に実施した全国世論調査によれば、安倍内閣の支持率は昨年9月発足直後の63%から39%に下落した。
政策に関しては45%の人々が格差是正を求め、経済成長を優先すべきとする30%を上回っている。
今こそ自民党政治を抜本的に変革すべき時だ。
第2、第3の夕張市が生まれる
昨年北海道夕張市は財政破綻し、財政再建団体に転落した。夕張市は360億円にも膨らんだ借金を、今後20年かけて返済する。
そのため下水道使用料や市民税は値上げされ、軽自動車税も1・5倍となる。図書館や美術館は廃止され、市の職員数は半分以下に、給与も一般職員で30%削減される。
とりわけ深刻なのは、約46億円の赤字を抱えた市立総合病院が診療所へ格下げされることだ。これにより現在のベッド数は171床から19床に激減し、これまで行われてきた人工透析も中止される。夕張市民は、生命・健康に関わる最低限のサービスすら充分に受けられなくなる。
こうした公立病院の経営破綻は、夕張市だけの問題ではない。大都市でも、公立病院の縮小や閉鎖が相次いでいる。毎日新聞の調査によると、東京都と大阪府内の計54の公立病院のうち、半数近い26の病院で計46の診療科が休止・縮小に追い込まれている。
主な原因は医師不足だ。公立病院では過酷な労働環境に比して給与水準が低いため、医療訴訟にさらされるリスクを負ってまで診療に携わる医師が減少しているのだ。医療大国日本の地域医療は、崩壊の危機に晒されている。
公立病院の経営に限らず、全国のほとんどの地方自治体は、夕張市の財政破綻をまえに「明日はわが身」と危機感を募らせている。現在日本の地方自治体は、総額で200兆円以上の債務を抱えている。1992年にGDP(国内総生産)の12%ほどだった債務は、2005年には約40%にまで拡大した。
国と地方を合わせれば、今や日本の借金総額は1000兆円を超える。これを解消するために三位一体改革が行われてきた。しかしこの数年間で10兆円近い地方交付税が削減されたにも関わらず、地方自治体に税源移譲されたのは3兆円だけだ。これでは、ただでさえ苦しい地方自治体の財政が破綻するのは避けられない。
これまで自治体の「自助努力」を強調してきた安倍政権は、最近になって夕張市に金融支援する方針を明らかにした。マスコミが連日のように夕張市民の窮状を伝える中、このまま夕張を切り捨てたら参院選に勝てないと判断したからだ。
しかし、本音は別のところにある。安倍政権は、外資による地方自治体債務のリストラを切り札にしようとしているのだ。 既にその機会を虎視眈々と狙っていたフランス系外資、デクシア・クレディ・ローカル銀行が動き出している。昨年12月に東京支店を開設したデクシアは、瞬く間に総額数百億円の地方自治体融資を契約した。
デクシアは、財政破綻したアメリカ・カリフォルニア州の自治体オレンジ・カウンティを再建した「実績」を持っている。既に日本の各自治体の財務内容を徹底的に調査し、「どこが第2の夕張市になるか、また、オレンジ・カウンティのように無謀な投機で破綻のリスクがあるかがおおよそ把握できた」と豪語している。
構造改革の名の下で推し進められてきた「官から民へ」「規制緩和」の流れは、ついに地方自治体の財政再建を外資に委ねるところにまで行き着いた。資本の論理による財政再建では、債務削減と効率が最優先される。この先公的資産の処分や売却、地方公務員の給与や人員の大幅削減が容赦なく行われるだろう。医療や教育、福祉などの住民サービスはますます削られていく。
安倍政権がいくら「愛国心」を強調しても、国民の生活基盤である自治体運営を外資に委ねるようでは何の説得力もない。
政官財の癒着が財政危機の元凶だ
そもそも国や自治体の借金がこれほどまでに膨らんだ最大の原因は、無駄な公共事業に金をばら撒いて利益誘導してきた自民党政治にある。その構造は、未だに何も変わっていない。
財政危機が叫ばれながら、「平成の大合併」では合併特例債の大盤振る舞いが行われている。群馬県伊勢崎市は、合併記念事業として約10億円の大観覧車を建設しようとしており、市民から猛烈な反対運動が起きている。今年度予算で13億5千万円もの赤字を抱える東京都あきる野市も、合併特例債で総事業費24億9千万円の温泉を建設中で、多くの市民があきれ返っている。
税金を採算性のない箱物や公共事業に湯水のように使い、一部土建業界の利権を誘導して自民党は政権にしがみついてきた。
小泉前首相はこうした旧来の自民党政治を打破すると宣言したが、郵政民営化に反対した郵政族議員も自民党に復党した。多くの国民は、自民党の利権政治は何も変わっていないことに気付いている。
1月21日に行われた宮崎県知事選では、当初泡沫候補と揶揄されていた元お笑いタレントそのまんま東(本名 東国原英夫)氏が圧勝した。今回の選挙では、自民・公明両党、民主党もそれぞれ官僚OB候補を推薦したが、予想を超える大差で東氏に敗退した。東氏の勝利を、単なるポピュリズムと評するのは間違っている。
宮崎県は衆参両院5議席のうち、自民党が4議席を占める保守王国だ。ほぼ半世紀にわたり県庁や官僚出身者による長期政権が続いたが、前知事まで逮捕される官製談合事件が起きた。
財政赤字を抱え地方経済は破綻寸前の状態にも関わらず、政治家や官僚、一部企業は既得権益を貪っている。これに対する県民の不満と怒りは頂点に達していた。だからこそ「県政は一部の政治家や官僚、特権的な階級に私物化されてきた」という東氏の批判が説得力を持ったのだ。
東氏の掲げた約80項目のマニフェスト作成を支えたのは、20代の若者を中心としたチームそのまんま≠セ。このチームは、自治体や官公庁への政策提言を行っているNPO法人
「政策過程研究機構」(PPI)のメンバーが有志で結成した。
PPIはホームページで、「世の中には、いわゆる『圧力・利益団体』と呼ばれる組織が多数存在し、票や資金を背景に現実の政策形成過程の中で自らの権益を築いています」、「(多くの市民は)自らの主張を代弁する団体を持たず、自らの主張を有効に政策形成過程に届ける方法を持たず、自らの納めた税金が無駄に使われる様を無力感に包まれながら傍観する状況にあるのではないでしょうか?」と問いかけている。その上で自らのミッションを、「市民が設立した、市民による、市民のための、非営利の政策シンクタンク」と規定している。
東氏は早くから政治家への転進を目指し、早稲田大学で地方自治を学んだ。そこで知り合ったPPIのメンバーと共に、今回の知事選へ向けたマニフェストを練り上げた。マニフェストでは、「宮崎県の財政規模は平成18年度一般会計予算(当初予算)で約5900億円です。平成13年度から6年連続マイナス編成で、平成18年度の県債残高は1兆円になろうとしています。我国は、もう右肩上がりの成長は終わりました。今後、もっともっと減少するかもしれないこの有限な県の財政資源を効率的に活用する事を提案します」と謳っている。
こうした東氏の訴えは有権者の関心を高め、投票率を前回より5%上昇させ、20代から40代の若い男女の過半数の支持をかちとった。
官僚OBでなく、政財界に何のパイプもない東氏は、国から補助金や公共事業を引き出す力量はない。宮崎県民はそれを百も承知で投票した。これ以上問題を先延ばしにすれば、夕張市のように自治体が破産してしまうからだ。
安倍政権と対決し、政権交代を目指すべき民主党は今回の知事選でも冴えない。二世、三世議員が多数を占める民主党には、国民の多くが感じている切実な危機感が伝わらないようだ。
企業や自治体が外資に乗っ取られてしまう前に、自民党政治に変わる新しい政治のうねりを創り出していくことが求められている。
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http://www.bund.org/editorial/20070205-1.htm