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膨張するオイルマネー、戒律踏まえた経済進出を(asahi.com)
http://www.asyura2.com/07/hasan49/msg/130.html
投稿者 まさちゃん 日時 2007 年 1 月 28 日 13:34:00: Sn9PPGX/.xYlo
 

(回答先: 国際協力銀がイスラム金融でマレーシア中央銀と覚書締結(asahi.com) 投稿者 まさちゃん 日時 2007 年 1 月 28 日 13:28:27)

膨張するオイルマネー、戒律踏まえた経済進出を
http://www.asahi.com/strategy/0110a.html

 中東やアジア、アフリカに広がるイスラム諸国は人口の増加が続き、将来「世界の4人に1人がイスラム教徒」という時代になる。米同時多発テロ後、米欧との対立の構図が強まる中、金融や経済でもイスラムの教えを意識する傾向が出ている。油価高騰で膨張するオイルマネーの投資や運用、さらに消費市場でもイスラムの戒律が顔をだす。日本はイスラムがかかわる新しい経済枠組みへの対応を迫られている。(編集委員・竹内幸史、社会グループ・築島稔)


■イスラム金融──利息を禁じ分け合う「収益」、対応遅れる邦銀

米国の銀行などが進出しているバーレーンの金融街。後方は建設中の国際金融センター=マナマで竹内写す

 中東の大規模プロジェクトの資金を「イスラム金融」から調達する動きが急速に広がっている。イスラム教の規則に基づく独自の金融制度だ。その枠組みがない邦銀の間では懸念が出ている。「邦銀はいずれ中東の事業から締め出されるのではないか」というのだ。

 日本では聞き慣れないイスラム金融の最大の特徴は、コーランの教えに基づいて利息を禁じている点だ。銀行は融資で利息を稼ぐ代わりに、投資家と共同で事業に資金を投資して「収益」を分け合う。事業が戒律に合うか、点検するイスラム法学者の関与も不可欠だ。

 バーレーンの首都マナマの海岸で、超高層のビル群の建設が進む。湾岸6カ国による3年後の通貨統合もにらんだ国際金融センターだ。この総工費13億ドル(約1500億円)は、全額イスラム金融で調達された。

 他の国々でも事業の資金繰りにイスラム金融を使う例が急増した。カタール〜アラブ首長国連邦のパイプライン敷設に10億ドル、サウジアラビアの石油化学工場に8億ドル……。06年前半だけで中東の発電、海水の淡水化設備など14件に総額55億ドルがイスラム金融で調達されたとの情報もある。

 米格付け機関ムーディーズによると、イスラム金融の資産残高は年率15%前後で増え、4500億ドルに達するという。決済に時間がかかるので短期取引に不向きとされ、世界の金融資産に占める比重もまだ小さい。しかし、原油高騰に伴うオイルマネーの膨張で勢いづいている。

 オイルマネーは従来、主に米証券市場などへの投資や預金で運用された=グラフ。しかし、「9.11」やイラク戦争などで米欧とイスラムの価値観の対立が深まるなか、中東への還流や分散化が進み、イスラム金融に流れ込んだとみられる。

 バーレーンにあるイスラム銀行評議会のエゼディン・ホジャ事務局長は、この現象を「金融のイスラム化」と呼ぶ。「金融の西洋モデルに支配されるだけでいいのか、という思いやイスラム型モデルを発展させるべきだとの機運が強まっている」

 「テロ資金に回らないか」という懸念に対しては、国際通貨基金(IMF)などの助言で、取引の透明性や経営の健全性向上に国際基準づくりが進む。

 オイルマネーは東アジアにも流れ込む。マレーシアのクアラルンプールでも高層ビルの建設ラッシュだ。クウェートなどアラブ系の不動産投資が目立つ。

 資金流入を追い風に、マレーシアは「アジアのイスラム金融センター」を目指す。中東などの資金調達も狙って発行される「イスラム債券」では世界最大の市場になった。同国中央銀行は「3年後には国内金融資産の2割をイスラム金融にする」目標を掲げる。シンガポールやインドネシアも、イスラム金融の市場整備を急いでいる。

 イスラム金融は、60年代に登場したエジプトの貯蓄銀行やマレーシアの巡礼資金の貯蓄公社が先駆けとされる。今グローバル化を加速させているのは、世界の大銀行だ。欧州系のHSBC、ドイツ銀行やBNPパリバ、米シティバンクが相次ぎイスラム専門部門を設立。中東などの事業に参入する通行手形のように考えている面もある。

 先進国では英政府の積極姿勢が目立つ。国内に200万人近くいるイスラム教徒のニーズもあり、イスラム専門銀行2行を認可。ブラウン財務相は「ロンドンをイスラム金融のゲートウェイにする」と宣言した。

 対照的に邦銀は動きが鈍い。もともと国際部門は得意でないし、国内にイスラム教徒が少なく、切実感が薄い。大手銀行の中東担当者は「協調融資への参入など、仕事が難しくなるかも知れないが、今は(利息をとる)通常業務だけで忙しい」。

 これに対し、金融に詳しいクウェートのガッサン・ザワウィ駐日大使は「不良債権に悩まされて余裕がなかった日本の銀行も、海外の新しい市場に目を向けるべきだ」。

 日本でも動き出したのは、国際協力銀行(JBIC)だ。今春にもマレーシアで3億ドル前後のイスラム債券を発行し、同国内での事業の財源にあてる方針。「中東の資金をアジアに還流する支援をする」(前田匡史審議役)考えだ。

 JBICは昨年、大手邦銀と共同でイスラム金融の研究会を発足させた。今後、日本がイスラム金融にどう取り組むのか。財務省や証券会社なども交えた検討が必要な時が来ている。

■日本にも成功例──「相互扶助」型保険、米欧も追随

 イスラム諸国の特異な市場に挑戦し、成果を上げ始めた日本企業もある。東京海上日動火災保険を傘下に持つミレアホールディングスは、世界の大手保険会社で初めてイスラム教に基づく保険「タカフル」(アラビア語で「相互扶助」の意味)を発売。米欧のライバル企業が追随した。

 普通の商業保険は、「少額の保険料で多額の保険金を得る行為はイスラムが禁ずるギャンブルにあたる」などと疎まれ、普及が遅れている。これに対し、タカフルはコミュニティーの相互扶助を目的に拠出金を払い、災難に遭った人はそこから寄付金をもらう形をとる。「共済保険」に似た仕組みだ。

 一般に途上国では1人当たりGDP(国内総生産)が1000ドルを超えるころから自動車保有などが加速し、保険加入の需要が高まるとされる。

 バーレーンのユニコーン投資銀行で保険事業のコンサルタントをする米国人、オマール・フィッシャーさんは言う。「イスラム教徒は世界人口の約2割を占めるのに、世界の保険市場でタカフルの普及は1%未満。開拓の余地がある大きな市場だ」

 潜在需要を読んだミレアグループはタカフルの生損保を商品化し、01年のサウジアラビアを皮切りにインドネシア、マレーシアで発売した。

 事業化の仕掛け人は同グループのマレーシア駐在、綾部敦彦さん(41)。サウジ駐在時代に取引先のアラブ人の助言などを参考に発案した。当初、社内には「特定の宗教にくみしていいのか」などと慎重論も出た。しかし、「カネがあるのに保険を嫌う人々に、安心して加入できる商品を提供するのが務めだ」と働きかけた。

 契約高は06年の20億円から5年後に60億円以上を見込む。異文化を敬遠せず、市場開拓を進めた先例になるかも知れない。

■「ハラル」の尊重──ブタ肉・アルコール、タブーの理解不可欠

「100円ショップ」の大創産業が展開しているバーレーンの日用品店。アラブ首長国連邦などイスラム諸国6カ国に進出しているが、戒律に関係する食品の取り扱いには慎重だ=マナマで竹内写す

 イスラム諸国では食品などの消費市場も拡大している。所得向上や生活様式の都市化で伸びる即席めん市場は、好例だ。

 インドネシア=124億食、中東湾岸6カ国=計6億食、ナイジェリア=7億食……。世界ラーメン協会(東京)による即席めんの市場統計(05年)だ。01年と比べ、統計のあるイスラム諸国だけでも、日本市場(54億食)の75%分拡大した。

 食品分野には、化粧品や薬、歯磨き粉などとともにイスラム特有の「ハラル」の問題が深く関係する。アラビア語で「神に許されたもの」の意味で、ブタ肉やアルコールが禁じられている。企業もこれに対応した市場戦略が必要だ。

 世界最多のイスラム教徒が住むインドネシアで現地生産している日清食品の即席めんのスープは、トリがベース。日本で使われるブタの原料は使っていない。94年の進出から生産は年3億食に拡大した。笹原研・取締役国際部長は「確実に成長するイスラム市場の入り口にして本格的な展開をしたい」と、同国での増産と輸出を検討中だ。

 その先駆けはインドネシアの華人系資本、インドフードだ。同国で圧倒的シェアを持ち、90年代にサウジアラビア、ナイジェリアでも現地生産を始めた。

 インドネシアは厳しいハラル認証で知られる。技術の発達やグローバル化で加工食品が増え、原材料や製法が分かりにくくなり、各国の宗教機関などからの認証取得が重要になっているのだ。同社のウェリラン副社長は「インドネシアで態勢固めしたのが、順調な進出につながった」と振り返る。

 インドネシアに69年に進出した味の素には苦い経験がある。01年、調味料の生産に豚由来の酵素が使われていたとして、同国政府から製品回収を命じられた。生産に必要な発酵菌を保存するために使われた酵素で、製品には一切入っていなかった。

 「ハラルの重要性は分かっていたが、認証業務は現地職員に任せていた」。当時の現地駐在員は振り返る。植物由来の酵素に替えて認証を再取得し、ハラルに関する委員会を設置。イスラム団体と協力して試食会を開き、信頼回復に努めた。

 こんな教訓は生かされているのか。「イスラムとのかかわりは増えたのに、日本企業の理解はあまり進んでいない」。拓殖大学イスラーム研究センターの武藤英臣客員教授は語る。

 02年に発足した同センターは、日本初の本格的なハラル認証調査機関だ。武藤教授らイスラム法の専門家が工場の現地調査や科学的な解析試験をするほか、イスラム教の基本的な考え方も企業関係者に教えている。

 企業の依頼が多く手が回りきらない一方、「経営陣がハラルの重要性を分かってくれない」という担当者の声も耳にするという。日本では、生活に根ざしたイスラム文化はなじみが薄い。巨大市場で後れをとらないためにも、早急に文化理解を深めて態勢づくりをすべきだ。

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