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http://www.news.janjan.jp/living/0801/0801030352/1.php
2008/01/04
2007年7月16日午前10時13分、マグニチュード6.8の大地震が中越沖に発生した。震源地に近い柏崎市を中心に被害は広がり、稼動中の柏崎刈羽原発の2、3、4、7号炉が緊急停止した(1、5、6号は点検中)。幸いにも大事故には至らなかったが、一歩間違えばチェルノブイリやスリーマイル島の事故の再来になるところであった。
今回の事故は、地震列島日本における原発の安全性についてさまざまな問題を提起した。事故発生後、数回にわたり調査に赴いた近藤正道議員にお話を伺った。
【近藤正道議員プロフィール】
1947年、新潟県出雲崎町生まれ。中央大学法学部卒。1977年、弁護士事務所を開業。新潟県議会議員を経て参議院議員に当選(新潟選挙区)。法務委員会、行政監視委員会、ODA調査特別委員会に所属。 ・公式サイト ・政治家情報(ザ・選挙)
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(本文は『マスコミ市民』(2007年11月号)に掲載された文章です:編集部)
不幸中の幸いの事故
─今回の地震による被害を時系列的に見ますと、7月16日の午前に原発から黒煙が上がっている様子が放映され、翌17日には放射性物質を含む水約1、2tが海に流出したことが判明し、19日には地震発生から2日間にわたってヨウ素が大気中に漏れ続けていたことが判明、さらに1号機の地下に放射能を帯びた水約1670tが溜まっていることが分かりました。
このような被害が出た今回の原発事故を、どのようにご覧になっていますか。
近藤 地震の当日、私は新潟市で参議院選挙の会議を開いていたのですが、突然強い揺れに襲われ、原発から出ている黒煙がテレビに映し出されました。私は、ただちに柏崎へ向かいました。
私は柏崎の隣町で生まれ育ち、柏崎の高校を卒業しました。そこには原発推進派も反対派もいましたが、私自身はずっと批判的な立場をとっていました。いま柏崎原発の1号炉を止める裁判が最高裁で継続していますが、その弁護団のメンバーでもあります。そういう意味では、柏崎刈羽原発の問題点を外へ向かって訴えてきた一人ですが、「くるべきものがきてしまった」という大変な衝撃を受けました。
現在、東電の発表だけでも、分かっている不具合が2700件くらい出ています。「止める、冷やす、閉じ込める」という最低限度のところは辛うじて維持されたようですが、6号機では微量とはいえ放射性物質を含んだ水が海中に流れ出ていますし、7号機では排気塔からセシウム、ヨウ素、コバルト60が大気中に出ています。また原発は完全に密閉式であり、放射性物質の管理区域と非管理区域が厳格に隔離され、相互に行き来ができないシステムになっているのですが、管理区域のものが外に漏れ外のものが管理区域の中に入ってしまい、密閉・閉鎖のシステムがいとも簡単に突破されてしまいました。
また原発の耐震性については、耐震想定がまったくでたらめであったことがはっきりしました。今回の地震は、国内で一年に2回くらいは必ず起きている中規模なものです。この程度の地震でこんなにも被害が出たのですから、もう少し原発に近いところに震源地があったならば、あるいは新潟地震規模のM7.5程度の地震がもし起こったならば、「止める・冷やす・閉じ込める」という機能が破壊されて大量の放射性物質が外に出たのだと思います。今回は、辛うじてこの程度の被害で収まって胸をなでおろしていますが、それでも格納容器、圧力容器などの最重要な機器が納まっている原発中心部の被害はすべてこれから調べるという有様です。まさに不幸中の幸いであったにもかかわらず、1〜2年後には再開するという話が責任ある立場の人たちから出ています。自然が警鐘を鳴らしてくれたときに徹底的に原因を調査して、今後柏崎原発を動かしていいのか、英知を結集して謙虚に見ていかねばならないと思っています。
─風評被害も、すさまじいものがありました。
近藤 新潟県全体でもたいへんな被害を受けましたが、海に放射性物質がもれたことで、柏崎の海水浴客は例年の100分の1くらいであったと思います。
東電の体質は何も変わっていない
─電力会社の情報を公開しない隠蔽体質も問題だと思います。地震発生直後、東電の社長は「システムは稼動していて問題ない」と発言しましたし、18日には新潟県知事に「基本的な対処はきちんとできた。いい体験として今後に生かしていきたい」と言っています。
近藤 地震当日、私が急いで柏崎へ飛んでいったとき、いまから安倍総理(当時)がヘリコプターで柏崎へ来る、という情報がはいりました。自民党の人たちもみんな待っていて、夕方4時半過ぎに総理が到着してわれわれと一緒に原発の敷地の中に入りました。柏崎刈羽原発の当時の所長は、変圧器の火災現場を高台から見ながら3つのことを言いました。
1つ目は、火災は原子炉の建屋ではなく外で起こったこと。2つ目は、安全装置は特段故障してはなく、みな正常に作動していること。そして3つ目には、放射性物質は漏れておりませんといったのです。安倍総理は「ならば安心ですね」と言って、この間3分くらいでしたが次の避難所の視察にいかれました。
おそらく、全国あるいは全世界に黒煙があがったテレビ放映があったので、総理としては選挙の応援をやめてまずここへ来て、マスコミの前で「安心・安全」だと言う必要があったのでしょう。ところが、その日の夜から東電がボロボロといろんな事実を話し出したのです。海水に放射性物質が漏れていたとか、大気中に漏れた話もありますし、使用済み燃料プールが揺れたことにより放射性物質を含んだ水が管理区域の外に出たと発表しました。
そのあと、1号機の圧力容器の放射性物質を含んだ水も漏れてかなりの労働者が被害を受けたという話など、10日以上経って記者会見で突然言いました。この人たちは、いまから5年前にものすごいデータ偽装をやって、原発がいったん全部とまったのです。今年の初めに、それ以前にもいろんなことが起きていたことを明らかにしたのですが、今度もまたこの態度です。そのたびに「企業風土を変えます」と詫びても、体質は何も変わっていません。
─そうした電力会社の閉鎖的な体質は、国策に安住しているところから出てくるのか、あるいは技術者としてのプライドからくるのでしょうか。
近藤 両方あると思います。国策の上に胡坐をかいているということもあるでしょうが、原発の技術屋は「どうせ素人に言ってもわからん」という独特の意識をもっていると思います。すべてを明らかにして、普通の人の判断に委ねるという姿勢が全然ありません。
原発がもつ潜在的な危険性
─先進諸外国では、原発依存を低めて徐々にクリーンエネルギーに転換していくことは、共通の認識だと思うのですが。
近藤 いま地球温暖化対策の一環で、アメリカでも30年ぶりに原発建設の話が出てきたとか、ヨーロッパの一部でも原発へ向かう方向性が少し出てきたという話はあります。しかし大きな流れとしては、持続可能な自然エネルギーにシフトしているのは間違いのない世界的な潮流です。
─先ほど、原発に対しては批判的なお立場であったというお話がありましたが、それは地震があるなしにかかわらず、ソフトエネルギーに転換していくべきだという思いがあるのでしょうか。
近藤 原発がもつ、強い潜在的な危険性を考えなくてはなりません。原発のなかには猛烈な有害物があるわけで、それがいったん外に出たらなかなか消えません。日本はそれをエネルギーの中心に据えようという動きで核燃料サイクルをつくっているわけです。私は、基本的にこういうものを持ち込むべきではないという思いが一貫してありました。廃棄物の問題を含めて、制御ができないでしょう。
─先般の地震で、廃棄物を貯蔵しているタンクも破損しましたね。
近藤 貯蔵施設には、放射性廃棄物をいっぱいに詰めたドラム缶が何百本も貯蔵されています。それがひっくり返って、10数本のドラム缶の蓋が開いてしまい放射性物質を帯びた汚水が外へ出てしまいました。これについても、東電はかなり経ってから明らかにしました。彼らはドラム缶が倒れている写真を公開しているのですが、私が地震後に4〜5回施設内に入ったときには、そこは見せてもらえませんでした。
─それは放射能の危険性からですか、あるいは彼らが隠しているのですか。
近藤 両方あるのでしょうが、私たちにはそこは見せてくれないのです。
敷地の中に入ると分かるのですが、今回の地震で地面がものすごく波を打っているのです。路面が異常に隆起しているところ、陥没しているところ、沈下しているところ、それを見ると建屋だけが大丈夫なはずがないことなど一目瞭然です。
彼らは、原発の建物は最重要なところとそうでないところと分けて、最重要なところは岩盤の上に直接建てているといいますが、最重要なところ以外の付属物といっても、それがないと原発が稼動しないものがたくさんあるのです。たとえば原発に故障があったときに電気を外から送り込む自家発電、そのための変圧装置などは軒並みやられているのです。最重要な部分についてはこれから調べるのですが、そこに問題がないということなどありえないと思います。
今回、柏崎市長は緊急使用停止命令を出しましたが、市長は原発に関する権限は何も持っていないのです。その権限は国にあり、市長が持っているのは消防法に基づく危険物の貯蔵施設に対する管理権限です。彼は、変圧器が燃えたことにより下に埋設されている油のタンクなどが地震による地盤沈下で破損されていると考え、「そんな危険なものを使わせるわけにはいかない」ということで、消防法に基づいて停止命令をかけたのです。結果的に、この施設なくして原発は動かないわけですから、全部止まることになりました。
─今回に限っては、行政の側もいままでよりは厳しく対処したと見てよいのでしょうか。
近藤 消防法に基づく停止命令は、「もんじゅ」に続いて2度目であり、商業原発では初めてでした。火事が起きたときのために、本来東電は自前の化学消防体制を持っていなければならないのですが、彼らにそういうものはありません。地震によって水も出なかったのです。市長は、かねてから忌々しく思っていたのでしょう。相当勇気が必要であったと思いますが、停止命令を出しました。私は、市長の危機管理はよかったのではないかと思います。
厳格な客観的調査を
─今回、マスコミはもっと丁寧な説明と報道をする責任があったと思います。たとえば、この地域の人たちは1974年以来危険な地域であることを訴えていましたが、そういう報道や解説は見られませんでした。
近藤 もう33年くらいになるでしょうか、もともと地元の人たちは素人なりにも地盤がおかしいと思っていたのです。ひとつは、炉心の位置が3回くらい変わっているのですが、なぜ変わるのか疑問に思っていました。
もうひとつは、柏崎は明治以降日石の本社があった石油の発祥地ですので、石油を掘るためのたくさんの調査データが残っているのです。そういうデータを見るなかで、この地域は地盤が劣悪で活断層も多く、原発の立地としては不適当なところではないかとの疑念をもっていました。
ところが東京電力は、十分に地盤を調べてから用地買収をするのではなく、ある程度の書面審査で土地を選定して買収し、漁業補償もするのです。莫大な金をつぎ込んで土地を取得した後に本格的な地質調査を始めるので、引き返すことができないのです。
住民は、原子炉の敷地のすぐ下に活断層があるのではないかという指摘をずっとしてきました。にもかかわらず用地買収や原発の設置許可を強行されたので、スリーマイルの事故が起きたあとに裁判を提訴しました。その裁判は一審も二審も負けましたが、裁判の最大の論点は地盤問題です。住民は、「断層が直下に走っている。大規模の断層が周辺にある」と言い続けてきましたが、東京電力は「断層はあるがそれは古い断層で最近の活断層ではない。そんなに大規模なものでもない」といって、存在や規模について住民の意見を聞き入れなかったのです。
そのうえ柏崎刈羽原発の耐震設計は、“通常は起こらないけども万々一起こってもこのくらいには耐えられる”という数値を450ガルに定めて設計されています。しかし今回の地震は、その数値を2倍以上の揺れ(993ガル)がきたのです。それにもかかわらず、いまのところ設置許可が誤ったという認識は一切示されていないのです。
─最後に、今回の事故を教訓としてどうすべきかについてのお考えをお聞かせください。
近藤 私は、柏崎刈羽原発を再開させるべきではないと思います。当初の設計基準と現実の揺れとの間にこれだけの乖離があるのですから、すでに大前提が崩れています。これから調査に入る格納容器・圧力容器内部の重要機器についても、相当のひずみや亀裂が出ていると思われます。専門家は「塑性変形の域に達している」などといいますが、これは目視では測れませんし、非破壊検査でも充分に調べられるものではありません。
いま、国は審査会を作って“再開できるかどうかも含めて議論している”と言っていますが、実際は再開前提の議論がどんどん進んでいます。良心的な学者の話を聞いても、もう再開すべきではないというのが、私たちの結論です。
もう一つは、全国の原発についてです。先般、耐震の指針が変わりましたが、あれも含めてもう一度抜本的に見直すべきでしょう。全国の原発が地震に耐えられるのか、厳格な客観的調査をすべきです。日本は世界一の地震国ですから、そもそも原発に適しているかを基本的に疑ってかかりながら、柏崎刈羽原発が示した教訓を謙虚に受け止めて、耐震安全性を抜本的に見直すべきだと思います。
いま浜岡では裁判をやっており、10月末には判決が出ます。浜岡原発の耐震基準は1000ガルですから、この数値は今回の柏崎の地震とほぼ同じです。繰り返しますが、今回の中越沖地震は普通の地震の規模です。私は、以前から1000ガルでは到底耐えきれないと主張してきましたが、浜岡原発について裁判所は科学的な目で見て「これはおかしい」という判断をしてもらいたいと思います。そうすることで、この国の原発政策が大きく変わっていくのではないかと思っています。
国際的な流れに逆らって、日本はこれまで原子力エネルギーばかりに比重を置いてきました。そろそろ自然エネルギーの分野にシフトしていけるよう、真剣に議論をすべきだと思います。
(近藤正道)
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