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http://www.news.janjan.jp/living/0708/0708130705/1.php
2007/08/16
中越沖地震(柏崎刈羽震災)では、マグニチュード6.8の中規模地震が、柏崎刈羽原子力発電所に狙いを定めてキラーパルス(破壊的強震動)を発信した。これは実は「原子力行政キラーせよ」という、自然からの警告ではないでしょうか。
◆今回の地震は、柏崎刈羽原発を集中的に狙ったもの? という驚くべき報告
8月10日、原子力安全委員会の「耐震安全性に関する調査プロジェクトチーム」第3回会合が開かれました。(参考:耐震安全性に関する調査プロジェクトチーム 第3回会合 議事次第(原子力安全委員会))
会合で報告したのは、耐震指針検討分科会(新指針策定会議)の委員でもあった元京大教授入倉孝次郎氏。強震動の第一人者です。(関連サイト:入倉孝次郎地震動研究所)
このところ中越沖地震の震源断層のモデルが種々提案されています。余震の分布図などからほぼ推定されたといえますが、詳細構造になると諸説あり、とくに本震を起こした断層については、8日の地震調査委員会でも、北西傾斜(北西へ行くほど下がる)か南東傾斜か、決着がつかなかった、としています。10日は、地震調査委員会の報告や東京電力の報告に続いて、入倉氏らの研究が問題提起として報告されたのです。
・「2007年年新潟県中越沖地震の震源断層と強震動 −柏崎刈羽原子力発電所を襲った破壊的強震動−」(耐PT第3-2-3号)入倉孝次郎(愛知工業大学地域防災センター)・宮腰研(地域地盤環境研究所)・倉橋奨(愛知工業大学)
これまで私たちは「原発の揺れは周辺よりはるかに小さい」といつも聞かされてきました。ところが今回は「周辺の揺れは決して大きくないのに、原発で顕著に大であった」ということが、上記・入倉氏らの研究のみならず、さまざまな報告で明らかになってきています。
実際、各地の観測記録によれば、地表面において1000ガルを超えた地点は震央距離12.7kmの旧西山町(3成分合成で1018.9ガル)くらいのものです。その他の観測値は、時刻暦波形で見ても周期特性で見ても、顕著なものはほとんど見られないのです。
ところが、震央距離約16kmの東京電力柏崎刈羽原子力発電所5号で1567ガル、同1号で1259ガルだというのです(どちらも水平方向合成値)。サイト内の地表観測データとは、5号機及び1号機の地震観測小屋におけるもので、原子炉建屋等構築物の影響を受けないように、少し離れた地点に設置してあります。入倉氏の研究はこの「今回の地震は、柏崎刈羽原発を集中的に狙った」という謎に迫ったものです。
◆豆腐の上の原発 軟弱地盤
入倉氏は理由として2つ挙げました。1つは地盤が軟らかいというもので、これも原発に対する常識を覆すものです。
しかし、地元の反対派や一部の地質学者はすでに30年以上前から指摘していたことで、「豆腐の上の原発」という表現は有名です。それで東電では、原子炉建屋の場合は「岩盤に直接設置」するために深さ40mくらいの地下まで掘り下げたり、マンメイドロック(人工岩盤!)と称してコンクリートを厚く打設したりしています。
また、柏崎市に立地する1〜4号機と、刈羽村に立地する5〜7号機の間には、広い土盛りがありますが、東電が「土捨て場」と呼ぶその場所は、地元の人々は「蟻地獄」と呼んでいたと私は聞いています。
もちろん、軟弱地盤は原発サイトの外にも広がっていますから、これだけでは原発サイト内だけがねらわれたという説明はつきません。
◆南東落ちなら幸いだったが、北西落ちだった
なぜ原発サイトが集中的に大きな揺れになったかというと、入倉氏によれば、断層の傾きが北西落ちだったことが災いしたというのです。すなわち下方の破壊開始点から始まって次々と破壊が伝わっていくのですが、北西から南東に向かってほぼ45度くらいで斜め上方に傾いている断層面のその先に、ちょうど原発があったということです。
原発からみれば、破壊により惹き起こされる地震動は破壊の伝播方向に強められることになり、これをディレクティビリティー(指向性)と称して、阪神淡路大震災の際に震災の帯をもたらした現象でもあると説明されました。
もし断層が反対に南東落ちであれば、破壊は南東から北西に駆け上がって行くので、原発から遠ざかることになり、到達する地震動は弱まるというわけです(この現象によりたしかに最大加速度は大きくなるのですが、そのからくりについては稿を改めます)。
◆原発前面直下に「アスペリティー」
先に述べたように本震の地震断層がどちらに傾斜しているかについては、これまでに諸説賑わっています。入倉氏は、国土地理院の提案する2枚の北西落ちモデル(図1)のうち南側断層面に、さらに3つのアスペリティーを想定しました(図2)。
(図の出典はいずれも、「2007年年新潟県中越沖地震の震源断層と強震動 −柏崎刈羽原子力発電所を襲った破壊的強震動−」(耐PT第3-2-3号)入倉孝次郎(愛知工業大学地域防災センター)・宮腰研(地域地盤環境研究所)・倉橋奨(愛知工業大学))
図1:平成19年新潟県中越沖地震 震源断層モデルの概念図
(原図:国土地理院)
図2:3つのアスペリティーを想定した入倉氏
(図の中央「KSWAPP」とあるのが柏崎刈羽原発です)
アスペリティーというのは、地震の際に破壊する断層面の中でもとくに強い地震波を発する領域のことで、地震が起きてみないとどこにどのようなアスペリティーがあるかはまずわからないといわれています。しかしアスペリティー部分の破壊による振動が到達すると、観測波形の中に大きなピークとして痕跡を残しますから、その解析によってアスペリティーの位置や大きさなどが推定できるわけです。
そのピーク(パルス波)は、時として1本の跳び抜けたひげとして現れたりするからでしょうか、キラーパルスなどと呼ばれています。強力な一撃というわけで、阪神・淡路大震災で頑強な構造物を破壊した原因として怖れられています。
アスペリティーを3つとしたのは、中越沖地震で観測された時刻暦波形に3つの顕著なピークが見られることに対応するもので、3段階に分けて破壊が進行したことが推測されるからです。
入倉氏はこのような断層モデルを仮定した上で、強震動予測という手法を用いて、柏崎刈羽原発1号機の原子炉建屋地下最下階(基礎版上)に設置した地震計に観測された速度波形を再現できたとしました。
◆複数のアスペリティーからの揺れが干渉してさらに強まる
アスペリティーについては、京大原子炉実験所・釜江克宏研究室からも問題提起されています(2007年新潟県中越沖地震(Mj6.8)の震源モデル(Ver.2))。
関連サイト
・京都大学原子炉実験所 釜江研究室
・福井県原子力安全専門委員会
・「平成19年新潟県中越沖地震の強震動の特徴」
・県原子力安全委:地震対策など議論 釜江・京大教授「地形的強震」軽視を警告/福井(MSN毎日)
・アスペリティ⇒中越沖地震で被害を蒙った刈羽原発もその存在を反映することが重要だった?(明日への道しるべ@ジネット別館)
ですが、入倉氏のモデルは釜江氏のモデルとは少し違って、3つ目のアスペリティーを最も大きくかつ浅くしました。3つ目の位置は国土地理院の北西落ちの断層のいちばん南寄りで、防災科研観測点の柏崎(NIG018)の直下となります。原発は第2と第3のアスペリティーの中間あたりにくるとのことです(図3)。
図3:3つ目のアスペリティーが、最も大きくかつ浅い
すると第2のアスペリティーと第3のアスペリティーからの振動が互いに干渉しあって、より強まったり弱まったりします。到達地点によって、微妙な差が出てくることでしょう。
干渉によって変位や速度が強められた地点に、固有周期が一致する構築物などがあれば、とりわけ大きな被害をもたらすことになります。
原子炉建屋の基礎版(最下階、深さおよそ32.5m)で見ると、震源からはいちばん遠い1号炉が加速度最大となり、ほぼ北へ行くに従って小さくなっています。これは3番目のアスペリティーが1号炉よりさらに南寄りの柏崎直下にあって、さいごに破壊したとするとたしかに納得がいきます。
◆柏崎刈羽原発は震源断層沿いに建設してしまった
震源は柏崎刈羽原発から約16kmとはいうものの、じつは震源断層は、海岸線にほぼ平行して原発の目の前を通り、柏崎市街までおよそ30kmに亘って延びていたわけです。ほとんど震源域に建ててしまった、といっていいでしょう(震源域とは、地震を起こした震源断層の地表投影地域のことです)。
東電は活断層調査と称していったいどこを調べていたのでしょう。また原発の設置を許可した国は何を審査したのでしょう。国の審査のやり方というのは、事業者が提出した申請書にあることだけを妥当か否か審査するようなものですから、申請書にない断層を指摘などできるわけがありません。
一事が万事、こうして日本の原子力発電所は建設されてきたのです。地下は見えないし、歪がどれだけ溜まり、すでに臨月を迎えているのか否か、などまるで判りません。いつだって地震は突然襲ってくるのです。
そんな中で「活断層調査は十分行った」「十分な耐震性を考慮して建設した」「原発震災などありえない」……そう繰り返してきた電力会社、建設会社、許可してきた政府、審査に関わった専門家等々を、これからもまだ信じますか。
もしも、今回の震源断層がもう10km長かったら……それだけでも、破滅的事態を惹き起こしていた可能性は否定できないのです。
◆観測データの公開と分析で、公正な研究を
柏崎刈羽原発では各号機に相当数の地震計を設置しており、総数97台にのぼるとのことです。ただし観測波形がとれているのはそれらのうち33台のみで、残りは旧式でメモリー不足のため本震のデータは失われてしまったとのことです。ICメモリーわずか40MBとか、測定可能範囲が1000ガルとか、信じられないような話です。
それでも同じ地点にこのように多数の地震観測計が置かれているケースは非常に稀である上、その直近で地震が起きたのですから、非常に貴重な記録です。震源域のデータといっていいでしょう。
東京電力では7月30日ようやく一部公開し、33台の本震記録も、有償とはいえCD−ROMにより8月6日からデータ提供しています。
入倉氏の報告が、原発に不利な解析として葬られることのないよう、これらのデータを取得して解析し、フリーな立場で議論をたたかわせ、真相に迫ってほしいと願います。
関連サイト
・柏崎刈羽原子力発電所における平成19年新潟県中越沖地震時に取得された地震観測データの分析に係る報告(第一報)について(東京電力)
・東京電力(株)柏崎刈羽原子力発電所における平成19年新潟県中越沖地震の観測記録等の提供について(財団法人 震災予防協会)
ところでHPに公開されている方の東電のデータは、きわめて不十分なものです。すべてのデータが加速度のみで、速度及び変位はまったくなし、本震波形の残されている33台の新型地震計についても、東西・南北・上下3方向の加速度時刻暦波形のみで、周期特性については各原子炉建屋基礎版上の東西・南北2方向の加速度応答スペクトルを示す7×2枚だけで、これも速度は消しています。
これでは入倉氏の提起した問題についても、満足な検証はできません。東京電力が公正な公開を速やかに実施するよう、付記しておきます。
関連サイト
・平成19年(2007年)新潟県中越沖地震の評価(地震調査研究推進本部 地震調査委員会)
・「平成19年(2007年)新潟県中越沖地震」関連(国土地理院)
(東井怜)
◇ ◇ ◇
【おもな関連サイト】
・原子力資料情報室
・柏崎刈羽原発の耐震安全性は破綻(美浜の会)
・プルサーマルを考える柏崎刈羽市民ネットワーク
・「原発耐震偽装」(福島老朽原発を考える会)
・東京電力・プレスリリース一覧
特集:原発を考える
特集:知って備える防災
【おもな関連記事】
・不安つのる現地から:柏崎刈羽原発事故・中越沖地震(桑山史子)2007/08/13
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