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http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2007081202040555.html
2007年8月12日 朝刊
新潟県中越沖地震から三週間が過ぎた八日、東京電力柏崎刈羽原発の被害を調べる国の調査対策委員会のメンバー約十人が現地を訪れた。
委員長の班目春樹東京大教授は、手を腰に当てたまま黒こげになった3号機の巨大な変圧器を、じっと見上げた。
「大きな地震が来たらどうなるか。頭の中ではシミュレーションしていた。だが、火災への対応も必要だし、反省すべきこともある」
原子力工学の専門家として、地震に襲われた原発の姿を思い描くことも一度ではなかった。だが、現実はそれを超えた。
「一年で再開はありえない、とくらいしか今は言えない」。運転再開の見通しを問われた班目委員長は、そう答えるのがやっとだった。
答えに困るのは、おそらく班目委員長だけではない。原発の心臓部といえる原子炉圧力容器の中は、まだ誰も見ていないからだ。
地震で6号機のクレーンが破損するなどして、閉じられた圧力容器の鋼鉄のふたが開けられるめどはたっていない。
重さ九十トンのふたの下には、どんな光景が待っているのか。内部の状況によっては、今後の原発のあり方が大きく変わる可能性もある。
「制御棒が曲がっているかもしれない」
独立行政法人原子力安全基盤機構の蛯沢勝三・解析評価部長は話す。
原子炉に危険が迫ると、燃料と燃料の数センチのすき間に、板状の制御棒を一秒余りで挿入し、核反応を止める。原子炉のブレーキ役だ。
三年前、想定の約三倍の地震動を加えながら制御棒を挿入する実験が香川県の研究施設で行われた。挿入はできたものの、途中で燃料や枠にぶつかって、制御棒の表面がゆがんだ。
今回、1−5号機の地震計では、軒並み設計の二倍前後の揺れに襲われた。2号機の地下では最大で三倍を超えた。
制御棒は放射線を浴びて劣化するため一定期間で交換する。だが、今回もし曲がっていれば、燃料などへの影響を確認する必要もあり、単純に取り換えて終わることはできそうにない。
班目委員長が、変圧器を見上げているころ、東京では国の地震調査委員会が開かれていた。一線の研究者が集まり、四時間半もの議論を重ねたが、新潟県中越沖地震の断層が、震源から原発に向かって割れたのか、そうではなかったのか、基本的な部分で結論が出なかった。
難航の理由について委員長の阿部勝征東京大名誉教授は「ひずみが集中し、地下に隠れた断層がいくつもあると考えられる場所だから」と説明した。
端なくも明らかにされた足元のあやうさ。地震が起きた後でさえ正体の分からない断層を、原発の建設前に正確に見つけられるのか。
東電の原子力部門のトップ、武黒一郎副社長(原子力・立地本部長)は七月末から同原発に常駐し、点検や復旧作業を直接指揮するという異例の事態が続いている。
八日、柏崎市内での会合で班目委員長ら調査対策委員会のメンバーにゆっくりと切り出した。
「想定を大幅に上回る地震動と火災、ごくごく微量の放射能漏れがあり、地域にたいへんご心配をかけました」
いつまでたっても出口が見えない。言葉を選んだ慎重な話しぶりが、時がたつほどに深刻さを増す事態への戸惑いを示していた。
◇
新潟県中越沖地震は世界で初めて、原発が大きな被害を受けた地震だった。大規模な放射能漏れなどの惨事には至らなかったが、火災が二時間も続いた。被害の全容把握はほど遠く、国内五十五基の原発にどう影響するのか見えないままだ。原発を襲った衝撃を追った。
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