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原発の『ごみ』処分場に揺れる高知・東洋町[東京新聞]
『勉強したら45億円』
http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20070201/mng_____tokuho__000.shtml
高知県の東の県境に東洋町という町がある。人口約3500人。海と山に囲まれ、サーフィンのメッカとして知られるのどかな町だ。この町が先月末、高レベル放射性廃棄物最終処分場の受け入れに手を挙げた。「交付金で町の再生を」という町長の一存で決まった応募だっただけに、町議会、町民は猛反発。橋本大二郎県知事も「住民の合意を得られていない」と批判に回った。町を二分する騒動は、なぜ起きたのか。 (片山夏子、山川剛史)
「なんで他の県は一つも手を挙げないのに東洋町じゃなくちゃいけないの」「町議会も町民の理解も得んと町民無視。怒っちょんですよ」
東洋町の甲浦地区。朝の散歩に出てきた住民は、口々に田嶋裕起町長への不満を口にした。
戒井秀さん(71)は「私らだけの問題ではない。子どもや孫や未来永劫(えいごう)続く問題。みんな事後報告みたいにして。なんでやの」。「高度な政治的判断ってなんや名誉のようなこというけれど、町長の判断だけでできるのはおかしい。放射能は目に見えないからね。安全って言ったって(何か事故が起きたら)取り返しがつかない」と女性(80)も声を荒らげる。
■町長『再生に交付金必要』
町長が処分場誘致の応募書類を提出したのは一月二十五日のことだった。記者会見を開いた町長は「国のエネルギー政策に貢献できる可能性と、交付金を活用し町の浮揚を図る絶好の機会と考える」と説明した。
しかし、これは町議会にも町民にも寝耳に水の話。とたんに上へ下への騒ぎとなった。もともと町長は応募に意欲を見せていた。昨年三月には一度、応募用紙を提出したが、この時は「住民の理解が得られていない」として引き揚げた。
地元のプロサーファー谷口絵里奈さんらは危機感を持ち、昨年秋に「東洋町を考える会」を立ち上げて反対署名を開始。今年一月十五日までに、住民60%を超える二千百七十九人と町外の約二千八百人の署名を集め、町議会に提出した。
再応募は、この直後のことだった。
■調査してから住民投票
なぜ、町長は突然動いたのか。東洋町商工会の西岡尚宏会長(49)は「原発やから怖いという反対派の気持ちも分かる。だけど、町の財政は来年度の予算は組めるが次は分からないというぐらい逼迫(ひっぱく)している。やり方がこすいかもしれないけれど、精密調査まで勉強して、その間に出る補助金で町を立て直しながら、最終的には住民投票で決めればいい」と代弁する。
つまり、こんなからくりだ。国は候補地に手を挙げた市町村に対し、「原子力発電環境整備機構」(NUMO)を通じて交付金を出す。当初六年間の文献・概要調査の段階では年約二億一千万円の金額。最近、この額が新年度から十億円に跳ね上がった。大まかな計算で約六十億円。周辺自治体に一定額を振り分けるとして、総額で約四十五億円が町の懐に入ることになる。
予算規模約二十億円。財政破たん寸前の町に、この金額は大きい。しかも、この時点で住民投票を行い、もしも否決されれば誘致は中止。交付金はもらい得になるという判断だ。
しかし交付金も本をただせば税金。そんな馬鹿な使い方が許されるものなのか。
武山裕一町議は「住民が否定するならば、途中でやめられるというのは大臣の約束。信じるしかないじゃないですか」という。
野根漁業協同組合の桜井淳一組合長(60)も昨年三月、田嶋町長と町の将来の話をする中で、NPO「世界エネルギー開発機構」の関係者から一緒に話を聞いたという。「『まずは勉強したら』といわれたね。それで町長は、応募したらすぐに金が出ると思ったようだ。安全性は勉強しなければならない。電気を使っているつけを日本列島のどこかが引き受けなくちゃならないんだから。科学者は安全だといっているんだからね。だから漁協組合員も現段階では賛成とも反対とも言わない。『勉強して危ないならやめたらいい』と話している」
しかし、反対する住民の一人、高畠俊彦さん(55)は「何十億も掛けて調査した後やめられるなんていう保証はどこにもないでしょう」と不安を募らせる。
町民有志は三十一日、町への放射性廃棄物の持ち込みや施設建設を拒否する条例を作るための直接請求運動を開始した。一戸一戸を訪ねて、住民に説明をしながら署名を集め始めた。
高畠さんが署名用紙を見せると「反対の署名なら、もうしたよ」との声に「今度は違うんや。条例を作るんやから、また頼むよ」と説明する。
「東洋町を考える会」代表の西田裕一さん(42)は「一度進むと止められない。勉強する、勉強すると言いながら進んでいく。子や孫になんであんとき止めてくれなかったと言われるようになりたくない」と話す。
■貧しくてもこの自然
海岸を散歩していた男性(74)は、「ここにもってきてほしいもんなんているもんか。自然が汚染され人間がのうなってどうする。貧しくともこれまで暮らしてこれた。いかに貧乏でもこの自然が一番」と声に怒りを込めた。
小さな町は真っ二つに割れている。
■国はカネで押しつける
今回の騒動は、原発につきものの放射性廃棄物の問題を放置したまま、全国で五十五基もの原発を推進してきた日本の原子力行政のひずみをあらためて問題提起したともいえる。
「財政難に苦しむ自治体の弱みにつけ込み、カネの力で処分場を押しつけるからおかしなことになる。四国と九州の十数自治体が関心を示しているようだが、本当に処分場を誘致するつもりはなく、事前調査に伴う交付金が目当て。いずれにしても正常な形で処分場ができることはない」
こう断言するのは、市民の情報センター「原子力資料情報室」の共同代表で、「原発を考える50話」などの著書がある西尾漠氏。
NUMOは処分場について「ガラスで固めた放射性廃棄物は二十秒で致死量の高レベルだが、これを鉄、粘土、岩盤と幾重ものバリアーでおおい、地震などの影響を受けにくい地下三百メートル以上の施設で処分する。万一、放射能が漏れても、地上に達するのは八十万年後で、その量も自然界での被ばく量より少ない」と安全性を強調する。
建設地についても、「隆起の可能性や断層などを詳細に調べ、ダメとなったら断る。多くの候補地から選ぶため、今後も公募は続ける」と説明する。
ただ仮に処分場ができても、約四十年でいっぱいになり、その後は「白紙」(NUMO)なのだという。逆に処分場ができなければ、青森県六ケ所村の貯蔵管理センターに高レベルの廃棄物がたまり続けることになる。
前出の西尾氏は言う。
「カネで釣る国のやり方も問題だが、国民の大部分が原発が動く限り増える廃棄物の問題を知らないことが問題だ。国は安全に処分できると宣伝するから、だれも考えなくなる。現実には原発を止めることは難しいが、なぜ危険な廃棄物が出て、処分場が必要なのか、もっと広く議論をしないと放射性廃棄物の問題は解決しない」
<メモ>高レベル放射性廃棄物最終処分施設 使用済み核燃料を再処理してウランとプルトニウムを抽出した後に残る放射性の強い廃液。この液をガラス原料と混ぜてステンレス製容器に入れ、青森県六ケ所村の中間貯蔵施設などで30−50年間冷却貯蔵する。さらに、地下300メートルより深い場所に埋めて最終処分する。2033−37年の処分開始を目標に原子力発電環境整備機構(NUMO)が4年前から処分場の候補地を公募していたが、応募したのは東洋町が初。
<デスクメモ> 高レベル放射性廃棄物最終処分場の誘致話は、モグラのように、ある日ひょっこり顔を出す。昨年八月には鹿児島県奄美大島で、一昨年一月には同宇治群島で表面化した。いずれもとん挫したが、何年も潜航していた例もある。今も日本中で水面下の「検討」が続いているのだろう。そう、あなたの町かも…。 (充)
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