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Part2
http://www.youtube.com/watch?v=_TWV4sCqqSs
Part3
http://www.youtube.com/watch?v=YBrF29YvnWo
The Bentwaters UFO Incident
http://www.youtube.com/watch?v=DcmwZldrWGo
『UFO あなたは否定できるか』(ヘルムート・ラマー/オリヴァー・ジドラ著、畔上司訳、文藝春秋)第七章より。
一九八〇年一二月末、イギリス国内の二つのアメリカ軍基地(ウッドブリッジ基地とベントウォーターズ基地)にほど近いレンドルシャムの森で、センセーショナルな事件が発生した。軍関係者と民間人の証人が多数いるほかに、録音テープ一本と、目撃報告を記載した書類(情報公開法によって公表)がそろっている。以下では目撃者たちの証言とメモランダム、それにチャールズ・ホルト中佐が録音したテープを元に、事件の経緯を時間を追ってたどってみよう。
一二月二六日金曜日の午前零時、農業をやっているゴードン・レヴィットはイヌを連れて納屋に行こうとしたとき、異様に明るい光が上空にあって、自分と同じ方向に動いているのに気づく。その後物体が真上に来たとき彼は、それが楕円形の円盤であり、明るい白い蛍光に包まれているのだと分かった。彼はそれまでにずいぶんたくさん、ベントウォーターズ基地とウッドブリッジ基地を離陸して自宅の上を飛んでいく軍用機を見たことがあったが、その物体は初めて見るもので、飛行機でもヘリコプターでもないことは確かだった。窓も見えなかったし、ドアも推進装置もなかった。ほんの数秒で、物体は樹木の向こう、ウッドブリッジ方向に消えた。
午前一時、レーダー係員がスクリーン上で、ボーイング737型機くらいの大きさと思われるシグナルを北のノーフォーク州に発見した。進路のとり方が独特だった。レーダー係員はすぐさま、自然現象ではないと思った。いかにも固体の飛行物体みたいな動きをしていたのだ。その直後、二つの空軍基地から、そのシグナルをレーダー・スクリーンにとらえたという連絡が入る。物体はアメリカ軍のベントウォーターズ空軍基地付近の森に向かっていた。
午前二時、ウッドブリッジ空軍基地の警備兵二人(ジム・アーチャーとジョン・キャドバリー。ともに仮名)が、レンドルシャムの森の上空に明るい光を発見した。オーフォード岬の灯台の明かりではないと確認した二人は、ことによると飛行機が墜落するのではと考えた。その直後、墜落説もまちがいと分かった。光が今度は滞空していたのだ。二人は上官(軍曹)に連絡したが、この上官はその光体のことをすでに知っていた。
午前二時三〇分、上官は部下三人をジープ一台に乗せて、警備兵二人のいる現場に向かわせた。三人が合流すると、警備兵二人は基地の敷地外に出て、物体を徹底追跡することにした。二人は光体の方向へとジープを走らせ、レンドルシャムの森に入っていった。数分後、ジープを捨てて歩かざるをえなくなった。森のなかを少し歩いていくと、樹木のあいだに急に、赤と青の光があるのが目に入る。アーチャーは無線で基地に連絡をとろうとしたが、うまく作動しなかった。森のなかの狭い空き地に行くと、そこに宇宙カプセルを想起させるような物体が、三本の着陸脚で立っていた。青白赤の光に取り巻かれた物体は、地面に白い光を放っていた。二人が近づいていくと、物体は不意に地面から浮かび、二人から離れていった。二人は追跡したが、しばらくして物体は平原のほうに飛び去り、急に高速で急上昇した。近くの牧場にいたウシ何頭かが、あわてて逃げていった。基地ではその頃すでに、急上昇していった物体をレーダーで捕捉していた。交信が途絶えたあと、二人を見つけるべく森のなかに捜索隊が送り込まれていた。
午前三時四五分、捜索隊は警備兵を発見したが、二人はトランス状態みたいに、木々のあいだをさまよっていた。二人はどうやって草原から森に戻ってきたのか、思い出せなくなっていた。キャドバリーのほうは取り乱していて、捜索隊といっしょに基地に戻るのをいやがった。事件が基地の外で発生したことから、当直司令官のテッド・コンラッド大佐は、イギリス警察に通報することにした。大佐は巡査二人と会って事態を説明した。だが警察は事を重大視せず、きっとオーフォード岬の灯台の明かりを見たのだろうと推測した。巡査二人は警察へ戻り、航空管制センター(ロンドンのウェスト・ドレイトン地区)に電話を入れた。このとき彼らはそのイングランド南部地方の、まったく航空路の通っていない上空で、本当にいくつかの光が目撃されていたことを知る。その間にさっきの警備兵二人は上官に向かって、「物体は森の地面に着陸脚を出して立っていたのだから、きっと地面に痕跡が残っているにちがいない」と話していた。
早朝になって、コンラッド大佐は憲兵(軍曹)など数人を着陸痕さがしに派遣した。彼らはほどなくして現場に着き、着陸脚の痕跡を発見した。痕跡はあまり深くはなかった。三点は正三角形を成していた。イギリスの領分で起こったことだから、ということで、大佐は再びイギリス警察を呼んだ。巡査はその跡を、動物の跡だろうと言った。大佐らはその意見に不賛成だった。正確に正三角形を成していたからだ。巡査は笑いながら「UFOなんていないよ」と言って、帰っていった。
同日の二二時三〇分頃、ウッドブリッジ空軍基地の警備兵四人が、基地の裏手をパトロール中に、奇妙な光がいくつか空にあるのを目撃する。どうも航空機らしくない。その直後、一人が樹木のあいだに光が一つあるのを発見。四人は上官にその旨を通報する。ブルース・エングランド少尉とベンソン軍曹(いずれも仮名)は、副司令官であるチャールズ・ホルト中佐に連絡して、詳しく調査したいから許可をいただきたいと申し出る。
ホルト中佐は前夜の出来事を知っていたので、エングランド少尉とベンソン軍曹を四人の警備兵といっしょに行動させることに決定。夜の零時頃、六人は森に入るが、すぐに歩いて進むことになる。ふと見ると、霧みたいに透けて見える光のヴェールがかかっている。ヴェールの向こうには、青白い光に包まれた物体が一つある。上端から赤い光を放っている。六人は近づこうとしたが、何度やっても逃げられる。一人が少し近づいてみると、物体の周囲の空気が静電気を帯びていた。
その後六人は、基地に戻ってホルト中佐に今後の指示をあおごうと決心する。ベンソン軍曹の報告では、森のなかで多数の動物たちがうろたえていた。ホルト中佐は、三〇名ほどの部下を引き連れて現場に向かうことにする。なかに空軍特別調査室(OSI)の面々もいた。ホルト中佐はベンソン軍曹に、キャドバリーとかベントウォーターズ基地の連中も連れて行けと命じる。キャドバリーは前夜にそうした物体と遭遇していたからだ。
ホルト中佐は光体捜索のため、その面々を引き連れて森のなかへ入ってゆく。中佐は捜索の模様を記録に残すため、携帯式のカセットレコーダーを持参する。数人の部下やキャドバリーといっしょに前夜の着陸痕をさがして、ガイガー管で放射能測定もするつもりだ。カメラなどの機器類も持参している。ほどなくして前夜の着地点に到達。ガイガー管で測定すると、着地点の放射能がほんのわずか上昇していた。放射能値が一番高かったのは、着陸痕の中心地点だ。物体が樹木に残した磨耗の跡も発見する。その跡は着地点の方向にあって、樹皮から妙な液体がしみ出していた。 その液体を検査用に少量採取し、小瓶に詰める。着陸痕と、損傷した樹木の写真も撮影。樹木の放射能測定をおこなった結果、磨耗跡の放射能値が上昇していた。樹木には熱の影響も見られたし、枝も何本か折れていた。
その地点から数百メートル離れたある農家の近くには、ウッドブリッジ基地の警備隊長が率いる別働隊が調査に赴いていた。午前一時四八分、樹木のあいだに赤い光があるのを発見し、すぐさまホルト中佐に連絡。今度は無線に異常はなかった。ホルト中佐の一団もその奇妙な光の捜索に向かう。
ではここで、ホルト中佐のテープ録音から少し抜粋してみよう。なおこの記録はまだ全部が公開されているわけではない。
「ただいま〇一時四八分。農家の家畜小屋で動物が妙な音をたてている。えらく動いて大騒ぎしている」
「あっ、色が」
「光を見たのか? どこだ? 待て、ゆっくり降ろして。どこだ?」
「右手です。ちょうど樹木のあいだで浮いてます。ほら、また現れた」
「私の信号灯の真上です。ほら、サー、あそこにいます」
「ああ、私にも見える。何だろう?」
「分かりません、サー」
「あっ、小さくて赤い光。奇妙です。肉眼ではまるで半マイル先にあるように見えます。光が消えた。ここから一二〇度のところにあったんですが」
「また現れた」
「ええ、サー」
「おい、みんな、信号灯を小さくしろ。さっきの空き地まで戻るぞ。あそこのほうがよく見えるだろう。望遠鏡を合わせられるか? 見てみろ」
各種の測定をした結果、星でないことが判明。
「はい、サー、星ではありません」
「星じゃない?」
「きっと地面から浮かんで移動できる物体でしょう。最初に見た光は一三五ないし一八〇メートル離れてました。シーンと静かです。まちがいなくあります、赤く輝く奇妙な光が前方にあります」
「ああ、でも黄色だぞ」
「ええ、黄色っぽいところも見えました。不気味です。こっちに動いてくるようです。前より明るくなりました。こっちへ来ます。いくつか小さなものが飛び出しました。まちがいなくあります。不気味です」
「光は二つです、一つは右側、一つは左側」
「オーケー、明かりを消せ。いまとても、とても奇妙なことが起こっている」
その後、再び各種の測定。そして不意に、
「小さいのがいくつか飛び出したぞ」
「いま、本体が右に移動してます」
「ああ、妙だ。森のきわへ行こう。明かりがなくても大丈夫か? 慎重に歩け。ほら、行くぞ。オーケー、あれを見るんだ。ここから二〜三〇〇メートル離れてる。まるで目くばせしているみたいだ。場所を次々に移動している。望遠鏡の照準を合わせると、あれの中心はからっぽみたいだ、まん中が暗くなっている。瞳でこっちを見つめているみたいだ。点滅してる。望遠鏡で見ると、まぶしすぎて目が痛い」
「われわれはいま農家の近くを通りすぎています。形の似た光が五つ見えます。いまはじっとしているようです。点滅もしませんし、赤くきらめきもしません。われわれはいま小川を渡っています。シグナルを三つ、はっきり受信しました。奇妙な光がいくつか浮いています」
「ただいま〇二時四四分。われわれはいま、農家から遠く離れたところに来た……。あの農家の、二つ目の畑だ。いま再び約一一〇度にあれが見える。今度は川の手前にいるみたいだ。地上すれすれをちょっとだけ動いて、ときどきパッと赤くきらめく。畑のまん中では何も感知できなかったが、いまは四つから五つ、かすかなシグナルが入っている」
「ただいま〇三時〇五分。奇妙な閃光が見える。あちこちに点在している。何かがあることはまちがいない」
「ただいま〇三時〇五分。さっきから奇妙な物体二つが、北約一〇度の地平線上に見えている。半月形で、揺れている。まわりにいろいろな色の光が見える。たぶんここから八〜一〇キロの地点だ。いま半月形から輪に変わった。楕円形に見える。一〜二分で変わった」
「ただいま〇三時一五分。物体一つを南の方角、地平線から一〇度上、距離一六キロの地点に発見。北に向かって動いている。離れていく。高速で離れていく」
「右側の一つも離れていきます」
「ええ、二つとも北へ向かっています。あっ、南からやってきます。まっすぐこっちへ向かってきます」
「クソ!」
「一本の光線が地面に向けて放たれているようです。とても現実とは思えません!」
「ただいま〇三時三〇分。物体がまだいくつか浮いている。南にいるヤツは落ちてきそうに見える。これから基地に引き返す。あれが、南のヤツがまだ光線を地面に放っている」
「ただいま〇四時〇〇分。一つの物体がまだウッドブリッジ基地の上空に浮かんでいる。地平線から約五〜六度だ。あいかわらず信じがたい動きをしている。前と似た光を下方に放っている」
ホルト中佐のテープにききとれる感情の起伏は残念ながら文章では表現しにくいが、ともあれ、彼と部下たちがしばしショックを受けていることは分かる。軍はこのセンセーショナルなUFO事件のもみ消しを図ったが、幸運にもそれは成功しなかった。UFO研究家ブレンダ・バトラーとドット・ストリートの二人は、事件の数日後に警備兵の一人から連絡を受け、一九八一年一月に彼から詳細な情報をききだした。またイギリスのUFO研究家ジェニー・ランドルスは、あるレーダー係員からこの事件をきいた。その係員はランドルスにこう言った。
「アメリカ空軍基地の職員たちは、レーダー記録を調べていました。私は彼らから事件をきいたのです」
そしてランドルスは、バトラーとストリートが警備兵から連絡を受けたと知った。三人は事件を共同で解明する決心をする。ほどなくして民間人の目撃者数人から連絡があった。うち一人はタクシー運転手で、「パニック状態のウシをひきそうになった」と語った。ある農家の人はそのUFOが同日、明るい光を帯びて空に消えていったとき、隣人の助けを借りてウシをつかまえて、なだめる羽目になった。だがその人は後日、「そんな事件なんてぜんぜん知らないし、何も見なかった」と言い、その直後に、数百キロ離れたところに新たな農場を買い求めて引っ越していった。研究家数人が一九八四年に訪問したところ、彼が当時、口止め料をもらったことが判明した。
一九八一年二月、バトラーとストリートはベントウォーターズ空軍基地にドナルド・モアランド少佐を訪問した。少佐は二人に「自分は大臣の許可がなければあの事件については話せない」と言った。その後バトラーとストリートは事件をさらに究明すべく、イギリスの大臣数人に電話をしたが、いつも決まって「そんな事件など知らない」と言われた。その後二人は国防大臣宛に質問状を送る。回答はこうだった。
「今回のご質問につきましては、今後とも助力を惜しみません」
つまりは暖簾に腕押し。アメリカとちがってイギリスに情報公開法はない。イギリス国防省からの助力は期待できないと判断した二人はその後、関係者の軍人たちから徐々に情報を得ていく。 一九八三年二月、二人はアメリカで情報公開法に基づく申請をおこない、アメリカ空軍のホルト中佐が書いた注目すべきメモランダムを閲覧する。そのメモランダムの内容はこうだった(なお他の証言と多少の相違がある)。
「一 八〇年一二月二七日早朝(午前三時頃)、アメリカ空軍の警備兵二人がウッドブリッジ空軍基地の裏門の外に、異常な光をいくつか目撃した。航空機の墜落か不時着と思った二人は、調査のため裏門を出る許可を求めた。当直の司令官は、三名の警備兵に徒歩で偵察に向かうことを許した。彼らは、森のなかで奇妙な光体を一つ見たと報告してきた。表面は金属のようで、形は三角形、直径は二〜三メートル、高さは約二メートル。森全体を白い光線で照らしていた。上端は赤く、下端は青く光っていた。その物体は浮かんだり、着陸脚で立っていたりした。接近してみると、物体は樹木のあいだを進路変更して姿を消した。同時刻に近くの農家の家畜が何頭も狂乱状態になった。物体は約一時間後に裏門近くで目撃された。
二 物体が着陸しているのが目撃された地点で、翌日、三つの圧迫痕が発見された。いずれも深さ七インチ、直径一・五インチだった。その夜(八〇年一二月二九日)、その一帯で放射線測定が実施された。三角形をした圧迫痕の各々とその中心で、最高〇・一ミリレントゲンのベータ/ガンマ線が測定された。近くにあった一本の木は、圧迫痕に向いた面で中程度の値(〇・〇五〜〇・〇七)が検出された。
三 その夜遅く、太陽に似た赤い光が一つ、樹木のあいだで目撃された。動き回って、点滅していた。あるとき、輝く小片が飛び出したように見えた。そして五つの白い物体に分裂して消えた。その直後、星状の物体が三つ、空に目撃された。うち二つは北の方角、一つは南だった。いずれも地平線から上約一〇度にいた。三つは高速で鋭角的に動き、赤緑青の光を放っていた。北の二つは、八〜一二倍の双眼鏡で見ると楕円形に見えた。その後三つともまん丸になった。北の二つは、一時間かそれ以上滞空していた。南の一つは二〜三時間見えていて、ときどき光線を放っていた。私を含めて大勢の人が、以上の二、三に記した動きを目撃した。
チャールズ・ホルト米空軍中佐。空軍基地副司令官」
以上のホルト中佐のメモランダムは、事件から一七日後にイギリス国防省に送付されたものだが、同国防省の担当官はこの文書が公開される時点まで、事件についての資料とか書類はいっさい所有していないと言い張っていたのだ。このメモランダムの公表後、UFO研究機関クエスト・インターナショナルのマーク・バーゾルは、ベントウォーターズ基地とウッドブリッジ基地の広報を担当するヴィクター・L・ウォージンスキー大尉宛に、事件についてほかに情報はないか、もしあればそれを入手できないかと問い合わせてみたが、同大尉からの返事は以下のとおりだった。
「拝啓 バーゾル様。私は、そのUFO目撃とやらを証明あるいは反論する立場にないのではないかと存じます。公式調査はいっさいありませんでしたので、参考資料もございません。アメリカ空軍は今後もいっさいUFO目撃を調査しませんし、過去何年間もまったく調査していません。つまり、何が起こったかもしれないにせよ、われわれにはそれに関して何ら公務上の関心がありませんし、その光体が基地外部で目撃されたとなればなおさらです。これ以上あなたにお知らせできるような情報は存在しません」
ホルト中佐のメモランダムを読むと、現場一帯で放射能が検出されたこと、そして地面の痕跡が詳しく調査されたことが分かる。となれば、この事件に関する書類がこのメモランダムだけのはずはなかろう。「アメリカ空軍などの政府機関はブルーブック計画終了後、もういっさいUFO調査には関与していない」とは、よくきかされるセリフだが、これは事実に即していない。なぜなら、ブルーブック計画終了後に発生したUFO事件に関する書類がいくつか、情報公開法に基づいて公表されているからである。
さて、この事件はアメリカの管轄外で発生したものだったので、イギリス国防省にも何回か問い合わせがなされた。回答の一つはこうだった。
「国防省はその事件にはまったく関心がない」
もし本当に英国防省が無関心だとするなら、テロリストとか敵のスパイは心置きなく(スタジアムで使うような)人工照明を使って軍事施設を脅かせることになる。また別な回答にはこうあった。
「ホルト中佐のメモランダム以外には何も所持していない。だからそれ以外のことは知らない」
だが興味深いことに、これを回答したまさにその同じ部署が、中佐のメモランダム公表以前の約三年間は、そのメモランダム報告書の存在すら否定していたのだ。
中佐のメモランダムが公表されると、英米の新聞に反応が現れた。大半の記事は、その間に広まった噂、つまり「軍関係者はレンドルシャムの森で、小柄でグレイの地球外生命体とコンタクトしていた」とする噂を掲載していた。
一九九五年八月、イギリスUFO研究協会(BUFORA)の第八回国際会議がシェフィールドで開かれて、その席上、UFO研究家のピーター・ロビンズが軍側の証人ラリー・ウォーレンを紹介した。その場でウォーレンは、自分をはじめとして兵隊たちが森のなかへ入っていった模様を報告した。要約するとこうなる。
「われわれは一つの球体が爆発しているのを見た。またそれとは別に、一つの円盤が森のなかの空き地の上空に浮かんでいて、周囲を軍人たちが取り巻いていた。私は気絶した。意識が回復してみると、私は汚れたブーツを履いて、板張り寝台に横になっていた」
ウォーレンはそののち逆行催眠を受けて、こう述べた。
「その円盤から出ている一本の光線を伝って、小柄でグレイの生命体が何人も出てきて、基地司令官ウィリアムズ将軍に近づいていった。将軍もコンタクトを希望していたのだ」
ひどく不気味なこの第三種UFO近距離遭遇の噂は、すぐさまUFO否定論者たちの耳に入り、分析が始まった。イギリスのUFO否定論者で宇宙ジャーナリストのイアン・リドパースはテレビ・ドキュメンタリー番組のなかでこう主張した。
「兵士たちはオーフォード岬の灯台の明かりをUFOと見まちがえたのだ。地面の圧迫痕はウサギがつけたのだろう。そして放射能値は、ふだんでもその一帯は数値が高いのだろう。樹木の傷は木こりの目印だろう。また、その後何日か続いた光の現象は隕石だろう」
だがリドパースは、森のなかに表面が金属的な物体があったとするホルト中佐のメモランダムには詳しく触れなかった。
タイムズ紙などの新聞は、このリドパースの説明に満足の意を表明した。一方、アメリカのUFO否定論者フィリップ・クラスは、こう主張した。
「兵士たちが目撃したのは、一九八〇年一二月二六日にイギリス上空で燃えながら墜落していったソ連の衛星、コスモス746号の破片だ」
またほかにもF−117ステルス戦闘機が緊急着陸したとか、無人の原子力推進の試験機が墜落したとか、空軍がUFO目 撃をでっち上げて、それまでの飛行機関連の失敗をもみ消そうとしたとかいう説も浮上した。だがこうした解釈はどれもこれも、ホルト中佐のメモランダムに記載の事実を十分解明してはくれない。UFO事件の場合には往々にして、「ありえないことは、あってはならない。したがってそれは自然現象でなければならない!」という結論になりがちだ。
事件調査はまだ終了したとは言えない。一九八四年一月、UFO研究家ランドルスはドナルド・モアランド少佐の口から「ホルト中佐のその録音テープは一九八一年以降、存在していた」ときいたが、イギリス国防省はもちろん、そうした録音テープの存在を否定した。
しかし一九八四年七月、ベントウォーターズ基地の元司令官サム・モーガン大佐が、アメリカ国内の基地に転任になり、みずからテープ所持を肯定しただけでなく、そのテープをダビングしてランドルスとストリートに送付してきたのである。同テープに録音されていた時間はトータルで約一八分だったが、録音開始から終了までに三時間以上が経過していた。テープの三分の二は着陸痕の調査、残り三分の一は兵士たちの証言だったが、目撃者の何人かは「あの夜間捜索ではもっと長い間録音がおこなわれた」と言っている。
UFO研究センター(CUFOS)からの依頼でテープ分析をおこなった無線技師のロバート・H・コディントンは、「最後の三分の一の録音は、前のほうと質的に差がある。ダビングの際に何らかの操作がなされたのかもしれない」と言った。いずれにせよ、そのダビングテープが当夜の目撃全体をカバーしてはいないことは確かである。
事件に関与した兵士のうち何人かは、UFO撮影はムービービデオと写真カメラでおこなわれたと主張しているし、ホルト中佐もその双方でなされたと言っている。だがそうした重要な証拠は、もし存在しているとしても、アメリカ政府からまだ存在を確認されていない。証人の大半は、フィルム一本が撮影されたことを否定していないが、真相究明に多大な貢献をするにちがいないそのフィルムが、いまどこにあるのか、そしてなぜ隠されているのかは疑問のままである。
4 ホルト中佐の爆弾証言
ホルト中佐は一九九二年六月、退役した。彼は軍務に二八年間ついたが、化学、経済学、経営学を修めた人物でもあり、航空軍団幹部大学校、国防工科大学校、そして飛行隊士官学校を卒業している。東南アジアでの従軍で何度か軍表彰を受けているし、ベトナムからアメリカ人捕虜を連れ戻す任務にも従事したことがある。一九八〇年、米空軍司令部から、イギリスのベントウォーターズ基地に副司令官として転任し、一九八四年には同基地の司令官に昇進した。その後は、朝鮮半島とベルギーに赴任。退役前は、アメリカ国防総省の監査理事会長を務め、軍の大部分を俯瞰できる立場にあった。
一九九四年七月三一日、彼はイギリスへ帰り、ロンドンで『ウィークエンド・テレビジョン』に出演し、リーズの町ではUFO研究機関クエスト・インターナショナルの依頼を受けて、事件について知っていることを発表した。彼はこう説明した。
「一九八〇年当時、ウッドブリッジ基地は戦略上重要なNATO基地だった。ウッドブリッジには事件当時、米軍が駐留していた。事件は一九八〇年一二月二五〜二七日に起こった。警備兵のバローズとパーカー(これは本名)は滑走路の端に、赤青白の光があるのを目撃した。公式記録はいっさい作成されなかったが、ロンドン・ヒースロー空港のレーダー係員は二つのレーダー目標をスクリーン上にしっかり捕捉していた。三名からなるパトロール隊が偵察のため森に入ったが、無線が支障をきたした。三名(ペニストン、バローズ、カヴァナサック)は、『製造されたことは明白だが正体不明の物体』を目撃した。
ペニストンとバローズはその物体に接近した。二人の証言によれば、物体はピラミッド型で高さ約三メートル、そして上端が赤、下端が青く光っていた。森のなかを漂いながら動いていたが、三本の着陸脚があった。三名は物体を追跡して森のなかを一時間半ほど動き回った。その追跡のあいだに、軍の捜索隊と合流した。捜索隊は地面に三つの痕跡を発見した。それは約三メートルずつ離れていた。周囲の樹木は高さ七・五メートルのところが一様に傷ついていた。その後、兵士たちは基地に戻った。
二日後、エングランド少尉からUFO再出現の連絡があり、前述の出来事(テープ録音されている出来事)が起こった。注目すべきは、エングランド少尉の証言だ。
『あの物体は太陽のように明るかったが、中心は暗く、全体に楕円形をしていた。われわれは物体を二分間ほど見ていた。それは五つの光に割れたあと消えた』
ある宇宙物理学者は農家の近くで、通常の二五倍の放射能を検出している。フィルムは二本製作されたが、残念ながらそこには重要なものは映っていなかった。光が消えたあと、楕円形の物体が二つ目撃された。その物体は猛スピードで動き、地面に光を放っていた。何秒後かに、一つの物体が私の部下の方向へ飛んできた。
私はこの出来事を自分の個人カメラで写していた。翌日、私は事件の詳細を上官に報告した。司令部はこの一件をイギリス側の担当案件と判断した。イギリス国防省も私との会見を望まなかった。私が例のメモランダムを書いたのは、モアランド少佐の勧めがあったからだ。メモランダムはイギリス政府宛に送付されたが、興味深いことにイギリス政府は関心を示さなかった。公式製作されたフィルムも、その頃行方不明になった。
事件の数時間後に、登録標識のないC141大型輸送機が一機、ウッドブリッジ基地に到着した。私はその飛行機の目的を知らなかった。機には特殊部隊が乗っていて、部隊は森のなかに消えた。米軍の特殊部隊が通常は登録標識のない飛行機で移送されることは、軍の資料から分かっている。その一隊が極秘の任務に就いていたことからすれば、公式機関がどこもこの事件に関心をもっていないなど、私には思いも寄らないことだ。クラスやリドパース、スチュアート・キャンプベルらの灯台説は明白に否定する。私や兵士たちはバカではないから、何メートルも離れていないところにいる飛行物体と、灯台の明かりや火球(流星)、衛星墜落の残骸の区別くらいはできる」
英文詳細情報
http://en.wikipedia.org/wiki/Rendlesham_UFO_incident