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「利益優先」が裏目に出た 名門企業IHIのお粗末
2008年01月06日12時00分
土光敏夫氏ら実力者を輩出してきたIHI(旧石川島播磨重工業)が巨額損失と決算訂正で揺れている。事態を重視した東京証券取引所はIHI株を監理ポストに割り当て、名門企業への信頼は大きくぐらついている。
過大受注で想定外の多額のコストが発生
IHIは主力のエネルギー・プラント事業で大幅な損失を出し、2007年3月期連結決算を訂正。302億円の損失を新たに計上し、営業損益は当初発表した246億円の黒字から56億円の赤字に転落した。
IHIの社内調査委員会は「利益優先を背景とした過大受注が原因」との報告書をまとめた。「06年末から07年にかけて工事が集中し、一部で発生したトラブルがほかの工事にも波及。工程の混乱を招き、想定外の多額のコストが発生した」と指摘した。
弁護士らで構成する社外調査委員会も「リスクに応じて受注が選別されていれば、業績悪化は回避可能だった」と指摘し、お粗末な社内管理が浮き彫りになった。その背景にあるのは「資産頼み」の甘い体質だ。
IHIは2008年3月期決算も150億円の営業赤字を計上するが、当期損益は260億円の黒字を確保する見通し。東京都江東区豊洲のIHI本社に隣接する遊休地約1.6ヘクタールを約776億円で第一生命保険に売却することを決め、その売却益で営業赤字を穴埋めできるからだ。
豊洲地区は情報関連企業が相次いで進出するなど再開発が進み、地価が上昇している。「棚からぼた餅」のような優良資産を持っているため、「経営に危機感が乏しかった」(業界関係者)との見方が広がっている。
決算訂正を受けて、IHIは社内処分を発表した。07年3月まで社長を務めた伊藤源嗣会長が12月末で辞任し、釜和明社長は6カ月間無報酬、エネルギー・プラント事業の担当だった長崎正裕取締役も辞任する。釜社長は「未曽有の危機である今回の事態で多大な迷惑をかけた」と陳謝した。
上場廃止されなくても、通常銘柄には戻れない?
一方、決算訂正については、社外調査委員会が「意図的な損失隠しや先送りをうかがわせるものはなかった」との認識を示した。釜社長も「再発防止が使命」と続投する。
しかし、訂正された07年3月期決算の直前の07年1、2月、IHIは公募増資と第三者割当増資を実施し、総額611億円を調達した。当時は巨額損失が明らかになっておらず、釜社長は財務担当役員だった。
釜社長は「損失がこれほど大きくなるとは想定していなかった」と釈明するが、投資家の不信感は容易に消えそうにない。東証はIHI株が上場廃止にあたるかを審査しているが、廃止されなくても、通常銘柄には戻れず、日興コーディアルグループの利益水増し問題後に設けられた「特設注意市場」に区分される可能性がある。
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