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□パール判事 [池田信夫 blog]
・パール判事―東京裁判批判と絶対平和主義 (単行本)
中島 岳志 (著)
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4560031665%3ftag=asyuracom-22
http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/a9452d61398be79fe077be7c6bf0952b
パール判事
2007-08-15 / Books
8月15日というと東京裁判は季節ネタみたいなものだが、本書はその少数意見としてA級戦犯を全員無罪とする意見書を出したパール判事についての本だ。著者(中島岳志氏)は『中村屋のボース』でひとりの亡命インド人の運命を描いたが、今度のテーマはやや手に余ったようにみえる。本書の大部分は、パール意見書の紹介に費やされており、予備知識のある読者には退屈だろう。
パールが欧米諸国の多数意見に反対した背景には、母国インドで体験したイギリスの植民地支配の過酷さがある。これに対してガンジーのとなえた非暴力主義は、植民地支配に対しては何の力にもならなかったが、独立後のインド人の精神的な支柱となった。したがってパールは、むしろのちの憲法第9条に近い絶対平和主義や世界政府を望んでいたのである。
東京裁判については、これを民主主義の全体主義に対する正義の断罪とみる主流の歴史観がある一方、これを勝者による不公正な裁きとし、「大東亜戦争」を肯定する立場がある。パール意見書は、しばしば後者の立場を支持するものとして使われてきたが、以上からもわかるようにこれは誤りである。しかし著者は、これを憲法改正に反対する論拠とし、本書を「右派論壇」に突きつけているが、これはいかがなものか。
私の印象では、パール意見書の射程はもっと長いようにみえる。歴史上、戦争が正義や自衛の戦いであったことなどなく、「東半球内におけるいわゆる西洋諸国の権益は、おおむねこれらの西洋人たちが、過去において軍事的暴力を変じて商業的利潤となすことに成功したことのうえに築かれたものである」(本書p.130)と意見書はいう。欧米諸国の植民地争奪戦がいかに狂っていたかに無自覚なまま、それをまねようとして失敗した日本を断罪するのは欺瞞である。
その原因は、特定のイデオロギーで規定された「帝国主義」の問題でも、天皇制などの「封建制の残滓」でもなく、17世紀以来、欧米諸国が世界を「文明化」する動機となってきた自民族中心主義にあるのではないか。彼らがそれを自覚しない限り、ベトナムやイラクを見ればわかるように、地球上から戦争はなくならないだろう。
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