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□「環境問題」を食いものにする人々・・・。恐怖を煽る本が出版される背景とは? [PJ]
http://news.livedoor.com/article/detail/3255722/
「環境問題」を食いものにする人々・・・。恐怖を煽る本が出版される背景とは?
2007年08月03日07時33分
【PJ 2007年08月03日】ー以下はわが国の出版界の一面を示すとても興味深い文である。
『Amazonのページを使い、過去およそ二十年間に発行されて「ダイオキシン」を主題か副題に含む日・英・独・仏語の本を数えてみた(2002年9月)。ひところ「ダイオキシン本」が書店に山と積まれた情景が目にちらつき、海外でもずいぶん出ているのかと思いきや意外に少なくて、品切れ(絶版)を除けば和書を合わせて130冊しかない。
内訳を見たところ、130冊のうちなんと105冊、率で8割以上を和書が占めている。しかもその大半は「こわさ」を語り、「身を守る方法」を教える一般向けの本だった。そのほか、題名に「ダイオキシン」を使っていないがダイオキシンを準主役にした和書も10冊どころではない。また、105冊の六割にあたる62冊は1998・1999年の2年間に出ていた。なお、わずか25冊の洋書のうち、題名や解説から一般向けとおもえるものはほとんどなく、英語2冊、フランス語3冊の計5冊だけだった』
これは「ダイオキシンー神話の終焉」(渡辺正、林俊郎共著 日本評論者)からの引用である。世界で発行されるダイオキシン本の8割以上を日本が占めているのだ。この話はわが国の出版やマスメディアの事情を知る上で実に示唆に富んでいる。
日本の出版社が世界に先駆けてダイオキシンの危険性に気づき、競って発行したと考える人は余程おめでたい人である。「売れる」と判断したから発行したまでである。そして「売れる」という状況を作り上げたのはいつもながらの集中報道の付和雷同メディアなのだ。
メディアは科学的な評価能力を欠き、ダイオキシンを史上最強の毒物と喧伝し、恐怖を売り物にすることによって視聴率を稼いだ。英語圏、仏語圏のメディアに比べわが国のマスメディアは次のような特異性を備えていると推論してもよのではないだろうか。
科学分野の評価能力が大変低い→危険性を過大視する
メディアに個性が少なく、一斉に同じ方を向く→異なる見解の情報が伝わらない
視聴率を稼ぐための大衆迎合が徹底している→集中報道となり一層過大に伝わる
ダイオキシンが「国民的な恐怖」となるためにはこの3つの条件が必要だったろう。そしてこれはダイオキシンだけに限らない。程度の差はあるが、理不尽な恐怖は環境ホルモン、電磁波、食品添加物、遺伝子組み換え食品にも及ぶ。ここにそれぞれの分野での出版のチャンスが訪れるのだ。
私は電磁波の恐怖を説いた一般書を数冊読んでみたが、一冊を除き、すべて著者は科学者ではなく文系の方であった。そしてその著者らは他に食品の危険性、合成洗剤の危険性、遺伝子組み換え食品の危険性、新型肺炎の怖さ、狂牛病の汚染、果ては特定の健康食品の推奨本まで書いている。
つまり売れるとなれば、どの分野でも出かけていく、専門知識がなくとも平気な方々なのだ。ただひとりの例外として理学博士の著者がいるが、その著書を読むと、基礎をちゃんと勉強したのかと首を傾げたくなる箇所があった。
これらの著者、出版社は事実上、環境問題の恐怖を売り物にして商売しているのだ。厄介なことに恐怖を喧伝する本は一見科学的で、センセーショナルで、かつ、わかりやすいのに対し、誠実に書かれた本は面白くないうえに理解するのに努力が必要だ。教科書が面白くないのと同じである。大量に売れるのは前者である。またこれらは電磁波防止グッズや健康食品の売り上げにも貢献している。
彼らのつけ込む分野には共通点がある。完全に白とは証明されず、僅かに未知のリスクが残る分野である。これを針小棒大に煽るのだ。そして水俣の有機水銀汚染などの例に出し、彼らだけが危険性に気づいているという立場をとる。安全だとする政府側の見解を否定することも多い。そのため、反体制側の運動体と協調することもある。いや利用されていると言うべきか。
本来、環境問題を正しく評価するには十分な科学知識が必要だ。にもかかわらず、大半の本はその知識が備わっていない人によって書かれている。マスメディアの記事や報道も同じだ。知識のない人が百万人かかっても正しい評価はできない。環境問題では濃度という要素がとても重要だが、ナノグラム、ピコグラム、ppm、ppbなどの単位とて理解している人は少ないのではないか。検出されれば危険、されなければ安全という二元論の世界ではなく、その境界は通常、安全率をみた濃度で決められなければならない。
現在、ダイオキシンや環境ホルモンの文字が新聞に出ることはほとんどない。ダイオキシンも騒がれていたほどの影響はなかった。結局、メディアに押された環境庁が規制を強め、環境機器メーカーに数千億円の特需が舞い込んだ結果となった。
2004年6月、環境省は環境ホルモンとして指定していた67種の物質の指定をすべて廃止した。98年の指定以来調べてきたが、哺乳類にはその影響が認められなかったという理由による。かつて大騒ぎした新聞はこの事実を無視するか、目立たない小さな記事にしただけであった。だからほとんどの人は廃止の事実を知らない。数年前、環境ホルモンで大騒ぎした後始末の態度として、無責任の感を否めない。
アスベスト被害については、長期にわたる被曝が重大な危険を招くことはずっと以前から指摘されていたのだから、政府の対策は遅きに失した思われる。一人の死者も出ていないダイオキシンや環境ホルモンで大騒ぎしながら、アスベストに対して甘い対策しか取れなかったわけだ。むろん政府の責任が大きいが、政府を動かす力を獲得したメディアの見識もまた問われなければならない。
気になるのはこのような本の出版が社会にもたらす負の影響、つまり害である。「○○の恐怖」という本を買い、それを信じた人は不合理な恐怖を味わいながら生きていかなくてはならない。恐らくそういった本の主張の多くは誇張や誤りであろうと思われる。世の中には何事も気にしない人もいるが、反対に神経質な「気にする人」もいる。このような本の購入者の多くは「気にする人」だと思われるから、余計被害が大きい。恐怖商法の犠牲者なのだ。被害は本の代金と時間を失うよりも深刻である。【了】
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※この記事は、PJ個人の文責によるもので、法人としてのライブドアの見解・意向を示すものではありません。また、PJはライブドアのニュース部門、ライブドア・ニュースとは無関係です。
パブリック・ジャーナリスト 岡田 克敏【 京都府 】
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