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NHK『ためしてガッテン!』総集編 似非科学による洗脳放送 [環境問題を考える]
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投稿者 white 日時 2007 年 7 月 24 日 13:55:11: QYBiAyr6jr5Ac
 

□NHK『ためしてガッテン!』総集編 似非科学による洗脳放送 [環境問題を考える]

 http://env01.cool.ne.jp/frommanager/fm2007_4.htm#n278

(2007/06/19)
NHK『ためしてガッテン!』総集編 似非科学による洗脳放送

はじめに

 このコーナーにおいて、NHKの人気番組「ためしてガッテン!」6月6日放映の『常識逆転!地球温暖化ビックリ対策術』の中で行われた実験映像について検討してきた。今回はその総集編として、NHKから入手したデータを含めてこの番組がいかなるものであったのかを総括しておきたい。

 以下、番組の内容について検討していくことにする。

1.二酸化炭素温の選択的蓄積仮説について

 この種の番組の常套的な展開として、まず温暖化による恐怖映像から始まる。

 最近ではあまり主張されなくなった海面水位の上昇を煽る、おそらく南極の棚氷の先端が崩落する映像や、旱魃の被害映像が流れる。北極海の氷山や南極の棚氷が崩落・融解しても海水位の上昇に結びつかないことは明らかであり、当初数mの海面上昇などと言われていたが、最近では気象庁ですら十数cm程度の海面上昇としていることは周知の事実である。旱魃が果たしてどのようなメカニズムによって起こるかは、個別の条件によるものであり、二酸化炭素地球温暖化と直接結びつける根拠はない。

 現在の地球温暖化仮説の主要な理論的な根拠は二つである。まず一つは、産業革命以降の地球大気の二酸化炭素濃度の上昇の主要因は、人間社会の工業生産活動にともなう主に化石燃料の燃焼によるとする考えである。IPCCあるいは京都議定書などの標準的な二酸化炭素地球温暖化仮説では、人為的に大気に付加された二酸化炭素の半量程度が選択的に蓄積するという単なる数合わせの議論であり、まったく科学的な根拠がない。

 さて、この番組では、人間の呼気などに含まれる二酸化炭素(=生態系からの放出)は量的に問題ないが、工場など産業から排出される莫大な二酸化炭素が問題であると述べる。

 

 地球大気には炭素重量にして約700Gt程度の二酸化炭素が含まれ、そのうち年間210Gt程度が陸上生態系と海洋(生態系)との間で交換されているという。これに対して、産業活動から大気中に放出される二酸化炭素量は、炭素重量で年間わずか6Gt程度に過ぎず、生態系からの排出量とは比べ物にならないほど小さい(3%程度)のである。
 番組では、人間社会の生産活動から排出される二酸化炭素の半量程度が選択的に蓄積されるという非科学的な論拠に触れないために、何ら数値的な根拠を示さずに産業から排出される化石燃料起源の二酸化炭素排出量が極めて大きいのだという印象を与える意図が明白である。
 実際には、大気中に排出された二酸化炭素の平均的な滞留期間は700(Gt)/210(Gt/年)=3.33年なのである。人間の生産活動による年間6Gtの二酸化炭素排出の影響による大気中二酸化炭素の蓄積量の増加は、高々6(Gt/年)×3.33(年)=20Gtであり、全体の3%にも満たないのである。
 かつて、人間の生産活動によって排出される二酸化炭素の半量程度が選択的に大気に蓄積し続けるという非科学的な数合わせの議論が通説となっていたが、気象学会に投稿された槌田論文の査読過程において、気象学会も既にこの非科学的な理論を放棄したことが明らかになった。また、二酸化炭素の安定同位体分析によっても二酸化炭素の大気中の平均的な滞留時間は5年間程度であることが観測されており、定性的には観測結果からもこれが支持されているのである。

 これらの事実を踏まえ、この番組の報道内容は科学的な事実を無視した虚偽報道と言ってよい。

2.二酸化炭素地球温暖化仮説について

 二酸化炭素地球温暖化仮説のもう一つの理論的な柱は、言うまでもなく、温室効果ガス(地球放射の内、特定波長の赤外線を吸収する)である二酸化炭素が増えることによって、それだけ多くの地球放射が捉えられ、地表を過熱するというものである。
 まず、二酸化炭素がその分子振動のパターンによって特定周波数の赤外線を吸収することは科学的な事実であり、今更議論の余地はない。地球放射に対して、二酸化炭素は主に波長15μm付近の赤外線を吸収する。
 標準的な二酸化炭素地球温暖化説では、波長15μm付近の地球放射の吸収に有効に働く二酸化炭素はまだ十分な濃度ではなく、大気中の二酸化炭素の増加によって更に捉えられる地球放射が増大するとし、これによって温暖化が進むとしている。

 ニンバスによるサハラ砂漠上空における地球放射の観測結果を示す。

 これを見ると、15μm付近の地球放射が落ち込んでいることがわかる。これが二酸化炭素による地球放射の吸収を示すと考えられる。15μm付近の地球放射はゼロではないので、更に吸収の可能性があるように見える。しかし、対流圏大気上層では宇宙空間に向かって平均温度255Kの低温赤外線放射が存在するため、ニンバスの観測結果にはこれが含まれていると考えられる。255Kの対流圏上層(図では240〜260Kの間になる)の赤外線放射を差し引くと、最早15μm付近の地球放射は吸収されつくしていると考えられる。

3.地球温暖化の瞬間映像

 番組では、『おそらく世界で初めて』という地球温暖化の瞬間(を捉えた)映像と称するものが公開された。しかし、地球温暖化現象は地球大気の物理化学的なあらゆる現象に関するものであり、これを室内実験で再現するなど無理である。彼等は非常に楽観的であるらしい。

 実験の概要については既に『第5報』で報告済みなので、参照していただきたい。簡単に説明すると、地表を模したヒーターの前面に大気を模した二つの透明容器を設置し、初期段階において両方の容器に空気を入れ、途中で一方の容器に二酸化炭素を充填することによって容器を透過した赤外線をフィルターを解して高感度赤外線カメラで撮影し、カラースケールで色分けした画像によって、容器を透過した赤外線の減衰の様子を映像化したと考えられる。

 上図は実験終了段階の映像である。二酸化炭素を充填した容器の方は赤外線サーモグラフィーの画像としてはカラースケールで低温であることを示しており、これはヒーターからの赤外線が二酸化炭素を通過する内に減衰(放送では赤外線を吸収したと言っている。誤りではないが、この映像からは赤外線のエネルギー密度が減衰したとしか言えないであろう。)したことを示している。
 あまりにも杜撰な実験であったことから、NHKに対して実験の詳細について照会した。以下、NHKから説明された内容の概略である。NHKからの説明の全文は添付資料をご参照いただきたい。



■赤外線カメラの特性について、撮影可能な赤外線波長は14μm以下であり、15μmの二酸化炭素による赤外線吸収帯は撮影できない。実験では主に4.3μm付近の吸収を映像化した。
■ヒーターの温度・放射特性は未回答。
■容器に充填してあった初期空気は23℃乾燥大気。
■途中で充填したのは加圧された100%二酸化炭素。長いチューブを通しているので減圧による温度低下はなく、温度は23℃程度である。
■赤外線サーモグラフィーはガス体の温度を測れないので、映像はヒーターの赤外線が二酸化炭素を通過することによる減衰を捉えている。
■最終的な容器内の二酸化炭素濃度は未回答。


 地表面の温度は平均して15℃、288K程度であるから、少なくとも『地球温暖化』の再現実験であるならば地表を模したヒーターの温度特性は放射の中心温度は288K程度でなければならない。使用したヒーターはかなり高温だと推定され(詳細は未回答)、この段階で既にこの実験は地球温暖化とは全く関わりのないものである。
 更に、撮影に用いた高感度カメラは二酸化炭素が吸収する地球放射の主要な波長である15μmの赤外線を捉えることが出来ない。
 その結果、地球放射より高温で、より短波長側にピークを持つヒーターの放射する、波長4.3μm付近の赤外線の吸収を映像化したのである。

 今回撮影された映像は、地球放射ではほとんど無視できるほどにエネルギーの小さい4.3μm付近の赤外線が、二酸化炭素を充填した容器を通過することによって二酸化炭素に吸収され、その減衰した赤外線を画像化した実験に過ぎないのである。

 既に述べた通り、二酸化炭素が特定波長の赤外線を吸収することは科学的な事実であり、今更映像化したところでいったいどんな意味があるのか?『地球温暖化の再現実験』としてこのような愚かな実験を行ったのは、おそらく『世界初』であろう。
 しかしながら、実際には地球温暖化とは関わりないこのショッキングな映像を見た視聴者は、空気との比較でこれほど著しい赤外線の吸収に差があるのかと思い、二酸化炭素による地球温暖化を実感したはずである。まさに似非科学による洗脳実験であったのである。

4.再実験の提案

 さて、勿論室内実験において地球温暖化を再現するなど不可能なことであるが、もう少し意味のある実験は可能である。今回の実験の意図からすれば、現在大気が例えば大気中の二酸化炭素濃度が倍増した場合に、地球放射をどれだけ余分に吸収するか、あるいは変わらないのかを視覚化する実験である。
 そのためには、実際の大気の二酸化炭素に関する光学的な厚さをモデル化することになる。例えば大気の厚さとして、地球の宇宙空間への255Kの低温赤外線放射の平均高度である高度約6000mまでの大気をモデル化することを考える。
 2004年版理科年表によると地表での気圧はH0=1013.3(hPa)、同じく高度6000mにおける気圧はH6000=472.2(hPa)である。高度0m〜6000mの大気による気圧はΔH=H0−H6000=541.1(hPa)=552.1(g重/cm2)である。
 大気中の二酸化炭素濃度を380ppmとすると、二酸化炭素の分子量を44、大気の分子量を29とすると、大気の内、二酸化炭素の重量の割合は、(44×380×10-6)/29=1/1734となる。高度6000mまでの大気の中に含まれる二酸化炭素の重量は、552.1/1734=0.318(g重/cm2)となる。
 標準状態(1気圧0℃)では、気体1molは22400(cm3)なので、二酸化炭素1(cm3)の重量は、44(g重)/22400(cm3)=1.96×10-3(g重/cm3)になる。0.318(g重/cm2)の重さでは、断面1(cm2)の気体柱の高さは、0.318(g重/cm2)/1.96×10-3(g重/cm3)=162cmになる。
 つまり、現在の大気における二酸化炭素の光学的な厚さをモデル化すると、1気圧100%の二酸化炭素を長さ162cmの容器に充填し、この容器を透過した赤外線を観測することになる。倍増実験では324cmになる。

 表面温度15℃程度の壁の前に、この1気圧100%の二酸化炭素を充填した長さ162cmと324cmの容器を置いて、波長15μmの赤外線を撮影可能なカメラで撮影し、その差を比較する実験を行えばよい。
 今回行われた実験では、容器の奥行きは20cm程度に見える。それでも最も赤外線透過率の低い部分は既に黒く写っている。光学的な厚さを8倍、16倍にすれば、おそらくどちらの場合も全面が黒くなり、差異は現れないのではないか?つまり、現状で既に地球放射の吸収に有効に働く二酸化炭素濃度は飽和しており、これ以上幾ら二酸化炭素濃度が上昇しても、大気に捉えられる波長15μmの赤外線量は変化しないのではないか?

5.無意味な二酸化炭素排出削減対策

 番組の後半部分では、二酸化炭素排出量削減対策についての提案があった。特徴的に現れているのは、二酸化炭素排出量削減の主要な対象として消費者個人と発電システムの変更が挙げられたことと、工業生産を減らさずに二酸化炭素排出量が削減できるような幻想の刷り込みであった。

 まず、二酸化炭素排出量の動向を示す表が示された。

 国立環境研究所の江守正多は、この表を示し、家庭からの排出削減が重要だとする。愚かなことを言ってはいけない。二酸化炭素排出量が温暖化の原因ではないが、少なくとも二酸化炭素排出量を削減しようというのであれば、工業生産規模の縮小以外にない。

 現在の社会構造は工業生産・流通システム・エネルギー供給システムによって大枠が規定されているのであり、その中で経済成長政策を展開することによって工業生産規模が拡大していることが本質的な問題である。企業は個人消費を煽り、エネルギー需要を増大させているのである。重要なのは工業生産であり、消費段階の対応で本質的な変革はなしえない。分野ごとの二酸化炭素排出量の比率の変化とは、単にその社会システム全体としての特性の変化の問題に過ぎない。家庭からの二酸化炭素排出量の増加は、企業が個人消費をあおり、不必要な家電製品や自動車を販売した結果に過ぎない。
 また、江守は二酸化炭素排出量を少なくとも現在の半分以下にしなければならないと主張する一方で、今日的な工業的な快適さと二酸化炭素排出量削減が両立すると言う。エネルギーここでは電力供給システムについての言及であったが、自然エネルギー発電など石油火力発電に比較して極めて非効率的な電力供給システムの導入によって二酸化炭素排出量を減らすことは不可能である。

 上図は国別のGDP当たりの一次エネルギー消費量である。日本は極めて省エネルギー的な生産システムを既に実現していることがわかる。自然エネルギー発電の利用が進んでいるというドイツに比べても圧倒的に省エネルギー的なのである。このような状況で、石油利用効率の低い風力発電などの非効率的な発電システムを導入すれば、この値は悪化することはあっても改善されることは絶望的である。
 工業生産規模全体を縮小せずに二酸化炭素排出量を削減するという主張は、今日の日本の工業生産システムの構造に対する無理解でしかない。
 例えば番組の中で取り上げられていたレジ袋の削減について考えてみる。石油関連工業は徹底的に廃物利用してきた産業分野である。原油を分溜してそれぞれのエネルギー、産業分野によって余すことなく利用されている。このような現状において、石油製品の中で例えば灯油消費だけを削減するとか、レジ袋だけを削減することなどは現実的に不可能なのである。仮にレジ袋の消費を削減しても、他の産業分野の消費が減らなければ、単にレジ袋用の原料の余剰を生むだけである。原料の余剰は企業経営を悪化させるため、企業は速やかにレジ袋以外の用途を開発するだけである。
 更に、家電製品のいわゆるエコ製品への買い替えや住居の断熱化のリフォームに対する国庫補助政策は、十分に使えるものを廃棄させ、企業のエコ商品という高価な商品への買換え需要という不要不急の需要を生み出すこと以外の何物でもない。しかもこうした新技術によるエコ商品は不断に新規商品を供給し続け、商品寿命を短縮するので企業にとっては格好の商品となる反面、肝心の石油あるいは原料資源消費量は拡大する一方となる。

6.まとめ

 今回放映された「ためしてガッテン!常識逆転!地球温暖化ビックリ対策術」という番組は、二酸化炭素地球温暖化の理論構造から、二酸化炭素排出量削減対策まで、すべてが似非科学による何の根拠もない虚偽報道と言ってよい。
 この番組は、『衝撃的な映像』で二酸化炭素地球温暖化が事実であり、その影響が人間生活に破滅的な影響を与えることを印象付け、個人に対して行動を起こすことを要求し、その対策として、電力供給を自然エネルギー発電にし、個人の努力による省エネや省エネ対策商品の購入を促すと言うものである。
 ここで示された方針は、IPCC報告を受けドイツで開催されたサミットの決定を踏襲する政府と企業の国家・経済戦略を、消費者の中核である主婦層に刷り込むことが目的であったと考えられる。
 二酸化炭素地球温暖化による地球環境の悪化という恐怖宣伝を行うことによって洗脳し、主に主婦層を二酸化炭素温暖化対策という新たな消費行動に誘導する極めて悪質な謀略放送である。

 この番組で紹介された内容は、首尾一貫して非科学的なものであり、科学を装った似非科学によって国民を誤った方向に導くものである。特にこれに協力した独立行政法人国立環境研究所の研究官僚の公務員あるいは研究者としての倫理観を喪失した行動は許されないものと考える。

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