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□サッカー批評「川淵三郎インタビュー」を読んで [武藤文雄のサッカー講釈]
http://hsyf610muto.seesaa.net/article/44662690.html
2007年06月12日
サッカー批評「川淵三郎インタビュー」を読んで
先般発売されたサッカー批評35号の冒頭に、宇都宮徹壱氏による「川淵三郎インタビュー」が掲載されている。昨年のワールドカップ後に、ジーコの監督是非問題や、川淵会長自身の失言問題などが相次ぎ、川淵解任デモが行なわれるなどの大騒動があった(私もデモには参加させていただいた)のは記憶に新しいが、早くも1年近い時が経った訳だ。当時、週刊文春や日本経済新聞に、川淵会長のインタビューが掲載されたが、サッカーの専門誌あるいは商業誌に、これだけまとまったインタビューが載るは、(私が知る限りでは)これが初めてだろうか。
冒頭に正直に述べておくが、私は宇都宮氏とは面識があり、この川淵会長インタビューが行なわれる前に氏とメールベースで議論する機会があった。そのような意味では、私は客観的に宇都宮氏のインタビューを公正に評価できる立場かどうかは、やや微妙ではある。
また、上記したように、私は川淵会長解任デモに参加したように、ワールドカップ以降の川淵会長の振る舞いを、全く評価していない。したがい、現状の私は典型的「川淵否定論者」である。そのような人間から見た本インタビュー評である事もおことわりしておきたい。
しかし、そのような立場を踏まえてもなお、このインタビューは日本サッカー界にとって、非常に重要なものだと、高く評価したい。
まず第1に、このインタビューにより、川淵会長が完全に日本協会内で「裸の王様」状態になっている事がよく理解できる。このインタビューを読んで最初に類似性を感じたのは、新興宗教のパンフレット。教祖様が立派な事を述べ、信者たちがありがたく拝読する、アレだ。具体的には、「後継者に求められる素質は」と言う問いに対し、「志が高いと言う事だね」、「代表経験もあり、経営能力もあり、公私混同のない、世のため人のため...」、「そうそう、無私。それが一番。」と言った一連の回答。川淵会長ご自身が、自分はそのような人間だと、自画自賛している訳だ。正に新興宗教のパンフレットそのものではないか。
インタビュー終盤の
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僕があと2年間、頑張ろうと思ったのは、協会の幹部から『辞めないでください。川淵さんがいなくなったら、日本のサッカー界はおかしくなります』って言われたから。そういう部長クラスが、実は一番、僕に厳しくやられていてね。本当は、僕が辞めたら喜ぶ連中なんだよ(笑)。それが『辞めないでくれ』って言ってくれたことが、最も僕を突き動かしたね
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は、笑いを通り越して脱力ものだ。こんな低レベルのお世辞で上司が喜んでくれたら、我々サラリーマンも楽なのだけれどもね(笑)。
新興宗教のパンフレットの読者は皆信者だから、そのような自画自賛をありがたく拝読する。しかし、サッカー批評の読者は、別に川淵会長の信者ではないから、川淵会長が相当アレな事をよく理解できる。
のみならず、このような教祖的な表現が、事前に日本協会の検閲を通ってしまう事も興味深い。協会の広報部門が投げやりになっているのか、広報部門に広告代理店が優秀な人材を出向させてくれなくなっているのか、理由はいずれかだろうが。
第2に昨年の代表監督就任騒動の顛末も、よくヒアリングされている。
川淵会長が「オシム氏が急速な若返りを行なう事が必要なほど、ジーコがアテネ世代に着目しなかった事を問題視している事」を引き出しながら、一方で川淵会長が「中国アジアカップで苦戦しながらも感動的に優勝したジーコ」の事に言及しないのが面白い。川淵会長は「ジーコの問題点」はよく覚えているが、「ジーコの実績」はすぐに思い出せない状態なのではないか。ジーコが監督していた時代、最後のワールドカップは残念だったし、就任期間中に酷い試合も多かったし、不調の選手に拘泥し優秀な若手選手の起用が遅れたのは確かだ。しかし、「アジアカップの奇跡的優勝」を筆頭に、「ワールドカップ予選の慎重かつ確実な勝ち抜け」、「コンフェデブラジル戦の大健闘」など、見事な実績もあったのだ。ところが、あのドイツでの屈辱的な敗戦から1年も経った今でも、川淵会長はその「ジーコのよかった面」を思い出せずにいるようだ。よほど、ワールドカップの失敗がショックで、「ジーコ選考は失敗だった」と考えているから、と考えるのが妥当だろう。
第3にオシム失言問題。当時、本件は「わざとか、本当に失言だったのか」と言う議論に、問題が矮小化されてしまった。本件について、宇都宮氏は強烈に突っ込む事で、
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人間の過ちを絶対に認めないと言うのであれば別だけど...でも、取り返しのつかないことだとも思わないな
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と、ホンネを見事に引き出している。さらにジェフのサポータに対しては
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サボータに対しては、こちらから説明するんじゃなくて、ジェフ側が説明する話だよ、それに『Jリーグ軽視』とかね、僕のやっていることを理解したら、そんなことを言われる筋合いは毛頭ないね
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だそうです。
毎週末、自クラブを応援する事をタノシミにしているサポータへの冒涜の意識がないところが、また味わい深いではないか。
そして第4番目。インタビューの最後に「チェアマン時代、協会会長時代を含め、やり直せることがあるとすれば、それは何か?」と言う質問。それに対する川淵会長の回答がいささかショッキング。
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それはないね、不思議と。もちろん、常に正しかったとは思ってないよ。でも、フリューゲルスとマリノスの合併問題にしたって『じゃあ、合併しなかったらどうなっていたか分かっていますか?』という背景があって、あのような決断をしたんだからね。(以下略)
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突然にフリューゲルス消滅問題が登場した。
本件については、当時述べたが、あれは完全にサッカー側が勝てる交渉事だったと今でも思う。そして、あの悲劇はどう考えても、日本サッカー史上に残る人災である。その人災の責任者が川淵会長だった訳だ。宇都宮氏が聞いてもいない問題を自ら持ち出すあたり、よほど本人も気にしているのだろう。
改めて、この悲劇の責任が川淵会長にある事を再確認できた。氏が何を取り繕おうが、氏自身がそれを認めているのだから。
さらに全く異なる視点から、もう1つ。
このインタビュー冒頭に宇都宮氏自身が「尊敬して止まない同業者・木村元彦氏も、再三にわたりインタビュー取材を申し込んできたものの、いまだ実現していない。「自分でいいのだろうか」というのが、率直な気持ちであった。」と述べている。ところが、当の木村氏が同誌上の「『日本サッカー協会のコンプライアンスへの取り組み』を読んで」と言うタイトルで、木村氏自身が川淵氏へのインタビュー申請を行い却下された顛末を述べている。日本協会広報部門が、相当な問題を抱えている事がよくわかる文章になっている。
このまま行くと、川淵会長は日本サッカー史において「東京五輪アルゼンチン戦で同点弾を決めたFWだったのが」と言う表現で記録されていく事だろう。
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